2004.04.01

【連載:がんの治療成績を読む】その19 大阪府のがん生存率開示(2) 進行度別分析でも大きな施設格差、がんワースト地域の危機感が前向き開示生む

 引き続き、大阪府の地域がん診療拠点病院の5年相対生存率(年齢調整済み)開示状況を見ていく。

 五つのがんに関して「限局(原発臓器に限局)」「領域(所属リンパ節または隣接臓器・組織に浸潤)」「遠隔(遠隔臓器・組織に転移)」の三つの進行度に分けて生存率が表示されているが、同じ進行度でも大きな格差がある。

 <図1>と<表1>は胃がんの施設別・進行度別生存率である。

 「領域」において、東大阪市立総合病院の生存率24.5%が最も低い数字となっている。

 <図2>と<表2>は大腸がんの施設別・進行度別生存率である。

 「領域」では、最高の大阪府立成人病センター(以下、成人病センター)が80.0%の生存率であるのに対して、最低の高槻赤十字病院では42.8%と、ほぼ半分の成績である。また、「遠隔」では、成人病センターと大阪赤十字病院の間に12.7ポイントの差がある。

 <図3>と<表3>は肝臓がんの施設別・進行度別生存率である。

 「限局」において成人病センターが51.7%の生存率を上げているのに対し、東大阪市立総合病院は5.6%の生存率に過ぎない。全体でも、成人病センターの38.9%に比して、東大阪市立総合病院は2.5%である。  

 <図4>と<表4>は肺がんの施設別・進行度別生存率である。

 「限局」では、成人病センターの89.8%が最高で、星ヶ丘厚生年金病院の65.7%が最低である。「領域」では、高槻赤十字病院の29.4%が比較的優れており、星ヶ丘厚生年金病院が17.4%で比較的劣っている。

 <図5>と<表5>は乳がんの施設別・進行度別生存率である。

 乳がんでは、他の成績が劣っている東大阪市立総合病院が全体で93.3%と最高の成績を示しており、高槻赤十字病院の82.3%と11.0ポイントの開きがある。

 これらの生存率は進行度別のもので、施設の医療技術の実力をかなり反映していると思われる。

 大阪府の試みは、1.行政が音頭をとって府内のがん拠点病院すべてが同様の開示を行った、2.地域がん登録ベースの信頼性の高いデータに基づいている、3.府民が広く参照できるように専用ホームページを設けた−−が特徴だ。ただし、病期分類が一般的な1、2、3、4期分類でないのは、今後の課題である。

 大阪府地域保険福祉室健康栄養グループ参事の大松正宏氏は、こうした開示を行った趣旨を次のように語る。

 「今後、全国的に生存率開示が進行していくだろうが、大阪府は率先してやって行こうと考えた。地域がん登録のデータを使っているので、各施設の成績が同じ条件で出ている。府民が病院を選ぶために一定の参考になるだろう。他の施設と比べられることで、病院に切磋琢磨が生まれ、府民が質の高い医療を広く受けられることにつながる」。

 大阪府は全国でがんによる死亡率が最も高く、その危機感が地方行政の強い指導力を生んだ。地域がん登録の仕組みが比較的整っていた地域でもある。がん拠点病院も早くから10カ所を指定していた。大阪府の前向きな試みに、他の都道府県が追随するか注目される。
(埴岡健一、日経メディカル

*随時、掲載します。

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