2004.03.31

【日本循環器学会速報】 大規模臨床試験めぐる討論、現状嘆くばかりでない多彩な工夫を紹介

 コスト高、財源不足、医師のマインド、プライバシー問題など、大きな障壁を乗り越えて本邦のエビデンスを構築するための高品質な臨床試験を実施する試みが進んでいる。27日に開かれたラウンドテーブルセッション「日本における大規模臨床試験の現状とその問題点」では、5つの異なるアプローチを取り上げた。

 「The Data Management Method of MEGA Study Data Center」では、プラバスタチンによる虚血性心疾患の一次予防についての大規模臨床試験「MEGA Study」のデータセンター管理について、データセンターを統括するイービーエス臨床研究推進部門の広崎真史氏が報告した。試験自体も登録者数8214人、治験協力医師数3000人超という大規模なものだが、データセンターは70〜80人がMEGA Study専任で勤務しているという。いわば臨床研究のロールスロイスとでも言うべき本格的な体制を報告した。

 「Large-Scale Clinical Trials in Japan The Experience in Japan Clinical Research Assist Center(JCRAC)」では、「MEGA Studyの100分の1から1000分の1」という徹底した低コストで医師主導治験などを支援する公設データセンターの運営について、東京大学クリニカルバイオインフォマティクス研究ユニットの山崎力氏が報告した。人件費込みの年間予算9000万円で11本の臨床試験のデータセンター業務を受託しているという体制と低コストの運営のノウハウを紹介する一方で、低賃金をものともしない若いスタッフの心意気に頼る苦しさも披露した。

 「Organization, Conduct, and Outcomes of Multicenter, Collaborative, Clinical Trials at Our University and Its Affiliated Hospitals」では、大学と関連病院による心疾患の多施設臨床試験の実施と品質の維持を、成果の共有と監査体制の確立によって実現する運営体制について、東京女子医科大学日本心臓血圧研究所循環器内科学の笠貫宏氏が報告した。

 高血圧の薬物療法についての多施設共同臨床試験であるCOPEの運営について報告した「Efficiency for Promotion of Large Scale Clinical Trial on Prevention of Hypertension by Local Clinical Networks from the COPE Trial」では、大学・基幹病院を核として周辺の診療所をネットワーク化し、個々のネットワークを連携させる「ネットワークのネットワーク化」によって数多くの症例を効率よく運営する方式などについて、山口大学循環病態内科学の松崎益徳氏が発表した。COPE試験は今年秋からの2700人の本登録を前に2003年4月から300人のパイロット試験を実施している。

 「Current Status and Future Perspective of Randomized Controlled Study in Cardiac Surgery: From the Experience of JaSWAT Study Group」は、日本では初の心臓外科領域におけるプラセボ対照無作為化試験であるJaSWATについて、運営体制、試験コーディネーターの育成から賠償保険に関する情報までを、国立循環器病センター心臓血管外科の坂東興氏が紹介した。JaSWATでは機械弁による僧帽弁置換術を行った後、手術後心房細動が発生した患者400例を登録し、低容量アスピリン併用の効果を評価するもの。2003年5月から登録を開始している。

 ラウンドテーブルの座長を務めた慶応義塾大学呼吸循環器内科の小川聡氏は、「治験についてはある程度インフラが整備されてきており、臨床試験に対するモチベーションも上がりつつある。しかし、臨床試験審査委員会(IRB)の力不足やデータセンターの未整備、そして最大の問題である資金については未解決」という。また、得られたデータがどれだけ日常臨床に役立つか、患者のメリットについての検証も必要と指摘していた。(中沢真也)



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