2004.03.30

会長講演:急性心筋梗塞治療の進歩−いかに早く血行を再開させるかが重要

 「心筋梗塞の治療では、結局、いかに早く再灌流させるかが最も重要だ」。今期学会長で日本大学内科学講座内科2部門教授の上松瀬勝男氏は、こう強調する。27日に行われた会長講演では、心筋梗塞時の血栓溶解療法を日本に普及させた上松瀬氏が血栓溶解療法の初期から最新の薬剤溶出ステント療法までの心筋梗塞治療の歴史を概観した。

 上松瀬氏1970年代後半に米California大学Los Angels校Cedars-Sinai医療センターのPeter Ganz氏らに師事した際に、急性心筋梗塞時の血栓溶解治療の開発に携わり、1979年に帰国後、日本大学で血栓溶解療法の臨床応用を始めた。

 当時、日本では心筋梗塞患者に対し、ウロキナーゼを1日当たり1万単位から、多いところで30万単位投与するのが「習わし」だった。上松瀬氏らの研究グループは、冠動脈に銅線を挿入することで梗塞モデル動物を作り、ウロキナーゼを冠動脈内に投与したところ、体重当たり1分間当たり100単位で20分間投与しても血栓に変化は見られなかったが、これを1分間当たり500単位に増量したところ、ほぼ全数で血栓溶解が見られた。「この実験から、臨床ではプロキロ1万単位程度の投与が必要と分かり、教授の許可を得て臨床応用を実施したところ、心筋梗塞による初期死亡率が、18.1%から8.3%へと激減した」(上松瀬氏)という。

 その後、1993年に大規模臨床試験GUSTOの結果が明らかになり、組織型プラスミノーゲンアクチベーター(t-PA)の投与の有効性が確立した。ただし、メタ解析の結果からも血栓溶解療法はおおむね12時間以内に実施しなければ効果がないことが明らかになっている。発症後1時間以内の実施では死亡率が50%減少するが、2〜10時間後では20%台、12時間後以降は10%以下に低下するという。

 「こうした研究結果を踏まえて日本大学駿河台病院における急性心筋梗塞の治療戦略も時代とともに変化した」(上松瀬氏)という。1980年代には冠状動脈造影後、血栓溶解療法を実施したいたが、1991年からは冠状動脈造影後、血栓溶解療法を行い、その後、経皮的冠状動脈形成術を実施するようになり、1997年以降は冠状動脈造影や冠状動脈インターベンションに先立って血栓溶解療法を実施するようになった。同病院で実施されているFAST(fibrinolysis and subsequent transluminal)治療では、急性心筋梗塞で救急外来到着後、30分以内にmutant t-PAを投与し、さらに必要なら60分以内にレスキューPTCAを実施することでTIMI3の良好な血行再開を得ているという。

 会長講演では、最新の薬剤溶出ステントなどにも言及していたが、上松瀬氏のUCLA留学時のエピソードが興味深い。同氏はGanz氏らの研究グループで冠動脈血栓の動物モデルを構築した際、試行錯誤の末、冠動脈に銅線を挿入することで迅速に血栓を形成できたという。その際、使用する銅線は裸銅線でないとだめで、(銅線に絶縁体を被覆した)エナメル線では血栓はほとんど形成されなかったという。「今思えば薬剤溶出ステントを連想させる出来事で面白かった」としていた。(中沢真也)

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