2004.03.30

【日本循環器学会速報】 後期高齢者の血行再建率を積極的に向上し、院内死亡率を削減

 地域では高度医療が可能な拠点病院が限られるうえに交通事情も悪く、都市部にはない困難がある。高知県では、急性心筋梗塞患者の早期治療を目指した医療連携ネットワークを構築し、75歳以上の後期高齢者においても、搬送時間の短縮などに努めて血行再建療法を積極的に実施したところ、90年代前半に20%を超えていた院内死亡率をほぼ半減させることができたという。29日のプレナリーセッション「高齢者の循環器疾患−何をどこまで治療するか」で高知大学医学部老年病科・循環器科の北岡裕章氏が報告した。

 北岡氏らの研究グループは、24施設(現在は32施設)の医療機関が連携する高知急性心筋梗塞ネットワーク(KAMI)を構築し、急性心筋梗塞の診断、搬送の迅速化を目指してきた。

 1992年から2003年にかけてKAMIに登録された2431人(男性1657人、女性774人)の急性心筋梗塞患者を発症年代別に3期に分け、64歳以下、65〜74歳、75歳以上の3群について検討を行った。

 その結果、1992〜1995年には74歳以下の院内死亡率は7〜11%程度だったのに対して、75歳以上では20%以上と高かった。反対に血行再建治療の実施率は、74歳以下では60%前後だったのに対して75歳以上では30%強と少なかった。この状況は1996〜1998年にもほとんど改善されていなかった。

 しかし、1999〜2003年になると、75歳以上に対する血行再建治療の実施率は約60%と大きく伸びた。これに対応するように院内死亡率は大きく減少した。1992〜1995年と比較した場合、75歳以上では20%強から10%強へとほぼ半減した。

 成績向上の理由としては、ステント導入など治療技術の進展のほか、KAMIネットワークによる迅速な診断や、交通事情の改善による搬送時間短縮の効果が高いようだ。治療侵襲の軽減などによって、後期高齢者に対して医師が積極的な血行再建をためらわなくなったことが背景にあると見られる。北岡氏は、1992〜1996年には後期高齢者に対して血行再建治療を実施しない理由として、「高齢」「治療開始が遅い」がそれぞれ4〜5割を占めていたが、1997〜2003年には、いずれも半減したという。

 高知大学病院で1991年〜2003年に治療を行った75歳以上の安定型冠動脈疾患患者288例についても同様な傾向が見られという。1991〜1995年には再灌流療法適用は27%に過ぎなかったが、2001〜2003年には55%に増えた。近年では後期高齢者に対してステントやオフポンプCABGが実施されるようになり、優れた成績が得られているという。

 一方で北岡氏は、侵襲的な治療がかならずしも長期的予後の改善にはつながらないとする研究もあり、後期高齢者には、生命予後の改善よりもQOL改善を目標とすべきであり、侵襲的治療を選ぶのが適切かどうか、QOLの改善を考慮して、個々の患者に適した治療法を選択すべきだとしていた。(中沢真也)

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