2004.03.29

【日本循環器学会速報】 こどものための「卒煙外来」から見えてくるもの 「はじめて吸ったのはいつか」に幼稚園との回答も



 私が小児科医になったころは、小児がたばこを吸うことなど考えられなかった。しかし今は、喫煙の主役になってしまっている−−。28日夕刻から開催された第3回禁煙推進セミナーで、最初に登壇した静岡県立こども病院の加治正行氏は、喫煙の低年齢化の実態を示し、対策の緊急性を訴えた。

 加治氏はまず中高の喫煙率が上昇していることを紹介。1994年の研究報告(日本医師会雑誌、111;913,1994)と2000年の結果(2000年度厚生科学研究費補助金健康科学総合研究事業研究報告書、2001)を比較し、中高の毎日喫煙率が男女ともに上昇している事実を指摘した。たとえば高校3年男子では、1994年には20%だったものが2000年には25%を超えていた。気になるのは女子で、同じ高校3年では1994年に3%程度だったものが、2000年には8%近くまで急増していた。

 会場をどよめかせたのは、加治氏が地元の公立中学校全校生徒へのアンケート調査の結果をスライドで提示したときだ。「はじめて吸ったのは、いつですか?」と尋ねたものだが、そこには幼稚園との回答が一人、小学校1年が3人、小学校2年が二人、という具合に、低年齢化が進んでいる実態が示されていた(図1)。

 対策が急務と判断した加治氏らは、すぐさま行動に出た。2002年10月、静岡県立こども病院内に「卒煙外来」を開設。こどもの禁煙外来を手がけるものだ。

 開設当初は「どんな子が来るのだろうか」と多少身構えもしたという加治氏。現実には、受診するのは「ごく普通の子」ばかりだったという。「かつてのように、たばこを吸う子は特別な問題児や非行少年ではなくて、本当に普通の子が気軽に吸っている」(加治氏)のが実際なのだ。

 「卒煙外来」は、毎週金曜日午後で、初診時には医師の紹介状と予約が必要。受診対象は、こども病院であるため15歳以下の小児。保険適応はなく全額自己負担。初診料は6500円、再診料は650円。ニコチンパッチを処方する場合は、院外処方せん料プラス薬剤費(1枚約400円で通常14枚処方)。

 「卒煙外来」の一端はこうだ。ほとんどのこどもが保護者とともに来院するが、一緒に簡単に挨拶した後は保護者には診察室の外へ出てもらい、こどもと一対一で話すのを基本としている。


 ここで「君から聞いたことは、ご両親や学校の先生には話さない」と約束し、喫煙の動機、現在の喫煙状況を尋ねる。家庭や学校での悩み、問題点を聞いた後で、喫煙・受動喫煙の害や、妊婦の喫煙が胎児に及ぼす害について写真やスライド(たとえば図2のようなスライド)で説明する。ここでは「たとえ(君が)禁煙できなくても、こどもや妊婦さんのそばでは絶対吸わないように」と指導しているという。

 その後、たばこのパッケージに記載してある注意書きについて説明。わが国で販売されているたばこは「あなたの健康のため、吸いすぎに注意しましょう」と書かれているが、同じたばこが海外で販売されるときには「喫煙が癌や心臓病の原因になることや周囲の人にも害を及ぼすことなど」の注意書き(警告表示)が記載されている点に注目する(写真、シンガポールで販売されている日本製タバコ、撮影;薗潤、さよならタバコ卒煙ハンドブック、2002)。


 この写真を見てもらいながら、こどもに英文を翻訳してもらい「SMOKING KILLS」の表現がどういう意味かを考えてもらうようにしている。海外で警告表示があるのに日本ではないことを指摘して、たとえば「製薬企業が副作用を隠して売っていることと同じじゃあないかな?」(加治氏)などと話すと皆がうなずいてくれるのだという。

 診察では、ニコチン依存が起こる仕組みも説明する。「君が禁煙できないのは意志が弱いからではなく、ニコチン依存という病気になっているからだ。病気だから治療が必要だし、治療すれば治ってたばこを止められるよ」と話すようにしている。

 その後、ニコチンパッチの使い方を説明し、希望すれば2週間分の処方(14枚)をする。ここまで1時間半程度の時間をかけているという。

 発表で加治氏は、実際の症例についても紹介。「卒煙外来では、特別なことをやっているわけではない。こどもを(たばこの害から)救いたい熱意があればできる。とてもやりがいのある仕事だ。なにも小児科だからできるというのではない。内科の先生にも参加していただきたい」と話し、最後にこう締めくくった。「大勢のこどもたちを救ってほしい」。
(三和護)


 

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