2004.03.29

【再掲】コントロバーシー:心血管系リスクは「モーニングサージ」か「早朝高血圧」か

 3月28日のコントロバーシーセッション「Mornign Surgeは心血管系疾患のリスクか?」において、リスクであるとする自治医科大学循環器内科学の苅尾七臣氏と、それを否定する東北大学大学院薬学研究科薬学・医学系(併)研究科・臨床薬学分野教授の今井潤氏が、激しいディベートを行った。

 苅尾氏が「モーニングサージ」を心血管系リスクであるとする根拠の一つは、Circulation誌(2003; 107: 1401 PubMed:)に掲載された自治医科大学ABPM研究だ。50歳以上で心血管系疾患既往がなく、降圧薬非服用の高血圧519例で24時間血圧を測定後、41カ月間追跡したところ、「モーニングサージ」群では無症候性脳梗塞発症が、非サージ群に比べ有意に多かった。

 今井氏は、この検討における「モーニングサージ」の定義に疑義を呈する。つまり、苅尾氏の場合、覚醒後血圧値を、「睡眠時最低値(+前後1時間の血圧値)の平均」と比較しており(日内サージ)、いわゆる「覚醒後2時間の平均血圧が、覚醒前2時間の平均血圧よりも一定以上高い状態」という一般的な「モーニングサージ」とは別物だと言うのだ。

 苅尾氏は日内サージ上昇10分位の最高位のみを「サージ」群としているが、今井氏が大迫研究のデータで日内サージ5分位数で5群に分け心血管系予後との相関を見たところ、脳出血発症以外「サージ群」で有意に増加したイベントはなかった。

 その今井氏が心血管系リスクであると主張するのは、「早朝高血圧(起床直後のみ高血圧を呈し、その他の時間帯の血圧は正常)」だ。

 というのも、大迫研究において、24時間血圧収縮期血圧≧135mmHgで降圧薬非服用869例を解析すると、早朝血圧(覚醒2時間後血圧−昼間血圧)が上昇していたのはInverted dipperだけであり、就寝中過度の降圧を示す(=起床後急激に血圧が上昇する)extream dipperでは早朝血圧の上昇は認められなかった。今井氏らはinverted dipperが心血管系リスクであり、extream dipperはリスクでないとの知見を大迫研究より得ているため、inverted dipperとリスクをリンクするのは早朝高血圧となる。一方、extream dipperはモーニングサージを示すが心血管系リスクは高くないため、モーニングサージはリスクとは認められない。

 一方、苅尾氏らはextream dipperが脳血管障害のリスクだと報告しているが、高齢者高血圧を対象としており、一般住民を対象とした大迫研究と対象が異なるため結果が異なっていると今井氏は考えている。

 ただし苅尾氏も、早朝高血圧がリスクである点を否定しているわけではない。

 先述の自治医科大学ABPM研究において、24時間収縮期血圧などで補正後、脳卒中リスクをCox回帰分析で求めると、「モーニングサージ」とともに「早朝血圧レベル」も有意なリスクだった。またこれら2つを同時に変数に含めるといずれも有意なリスクではなくなったため、「どちらも重要なリスク」だと考えられるという。

 早朝血圧値が有意なリスクとなる理由を苅尾氏は、「24時間平均血圧レベルの情報を含む」ためと考えている。つまり同氏は血圧による心血管系リスクを、「24時間平均値」を基軸に「変動性」を加えて評価すべきだという立場である。今回のディベートでも、問題とすべきは「ある一定度を超えた『過剰な』サージ」(変動性)だと明言している。

 先述のとおり、大迫研究データを日内サージに基づき5群にわけた検討では、脳出血以外「サージ」との相関が見られなかったが、苅尾氏らのように「過剰なサージ」を検出すべく、10分位数で分けなかったことが原因である可能性も否定できないのではないだろうか。

 今回は、苅尾氏、今井氏とも自らのデータに基づき論を展開したため、ここでは紹介できなかったが、ディベート時には、あたかも双方のデータを批判しあうような形になる場面もあり、座長である東京都老人医療センター循環器科の桑島巌氏が「もう少し離れて座ってください」と冗談をいうシーンも見られた。

 非常に緊迫感のあるディベートだった。(宇津貴史、医学レポーター)

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