2004.03.28

【日本循環器学会速報】 コントロバーシー:低リスク一枝病変にはPCIよりも薬物療法

 3月27日のコントロバーシーセッション「一枝病変の治療」では、低リスク一枝病変に対して経皮的冠動脈インターベンション(PCI)と薬物治療、どちらを第一選択とするかについてディベートが行われた。

 低リスクなので生存率に与える影響にこそ差はないが、エビデンスは予後改善作用と経済性は薬物治療が優ることを示しているため、一般論として、薬物治療から開始するのが現状では望ましいとされた。

薬物療法
 薬物療法から開始すべきだとの立場から、岐阜大学循環内科学の西垣和彦氏はまず、薬物療法の予後改善作用を強調した。

 米国において低リスク狭心症を対象に薬物治療とPCIを比較したRITA-2(Lancet 1997; 350: 461 cmd=Retrieve&db=pubmed&dopt=Abstract&list_uids=9274581>では、死亡+非致死性心筋梗塞発症が薬物治療群でおよそ半分まで有意に低下していた(3.3% vs6.3%)。また、わが国において37個所のローバブレター認定施設より、PCIまたは薬物療法で治療した狭心症のデータを連続10例で集め解析した結果も以下の通り、おおむね同様だ。

 本解析において、薬物治療を受けた207例とPCI施行の266例(いずれも低リスク狭心症)を比較すると、平均3.5年間の観察期間中、血行再建術施行が必要になったのは薬物治療群9.7%に対しPCI群では33.8%と有意に多かった。両群の背景因子、狭心症治療薬に、差は認められていない。ただし#6、#7に病変を持つ例では、PCI施行が有意に多かった。

 一方、冠動脈死の発生率は両群間に差は無かったが(薬物治療1.4% vs PCI2.6%、NS)、非冠動脈死は薬物治療群で増加傾向を示した(6.3% vs2.6%、p=0.050)。「PCIを施行できない、冠動脈疾患以外に重篤な疾患を持った例が薬物治療群に多かったためだろう」と西垣氏は推測している。

 興味深いことに、薬物治療よりもPCI施行が有意に多かった#6と#7のみで比較すると、薬物治療群の生存率が有意に良好だった(0/73例 vs 5/158例、p=0.049)。

 コストに関しても薬物治療が優れている。西垣氏が示したデータによると、PCI施行1年目にかかるコストは患者1人当たり約376万円で薬物治療(およそ86万円)の4.4倍となる。2年目も薬物治療の37万円に対しPCIは112万円だ。

 これらより西垣氏は、低リスク一枝病変には、原則としてまず薬物治療を考慮すべきだと結論した。

 なお、現在、低リスク一枝病変に対する薬物療法とPCI/冠動脈バイパス術をプロスペクティブに比較するJ-SAP(Japanese - Stable Angina Pectoris)研究が進行中である。

PCI
 これに対し東邦大学附属大橋病院内科学第3の中村正人氏は、RITA-2など、薬物治療とPCIを比較した試験では、1.薬物治療群の悪化例がPCI群にクロスオーバーされる、2.PCIの技術が今ほど高くなく周術期の心事故が多かった−−の2点を挙げ、PCI成功例の予後を純粋に薬物療法と比較した成績でない点を指摘。

 さらにPCI最大の問題だった再狭窄が、薬物溶出ステント出現で解決される見込みがたった現在、過去のエビデンスをそのまま当てはめる妥当性に疑問を呈した。

 また、RITA-2やMASS(JACC 1995; 26:1600 PubMed:)において、運動耐容能や挟心症状は薬物治療に比べPCIで改善された点を指摘し、虚血が明らかな場合はPCIが第一選択となりうるとした。

 本セッションの座長を務めた東京慈恵会医科大学循環器内科教授の望月正武氏は、本ディベートを「古くて新しい問題」と評した。デバイス、薬物の進歩により次々とエビデンスが変わっていくためだ。そのため「薬物溶出ステントが使用可能になれば、また、ディベートが必要になるだろう」とコメントした。

 また同氏は、PCIには施設や術者の経験などで成績が変わるため、その点への留意も促した(わが国のPCIの現状についてはこちら)。
(宇津貴史、医学レポーター)

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