2004.03.26

米国栄養評議会(CRN)、ビタミンとミネラルの安全摂取量を公開 米国、欧州、英国の安全摂取量を比較、日本にも影響か

 「新しいエビデンス及びエビデンスの解釈を加えるとともに、CRNと各国の安全摂取量を横並びで比較した」。

 米国Council for Responsible Nutrition(略称:CRN、米国栄養評議会)副会長で科学・国際問題担当のJohn Hathcock博士が来日、ビタミンとミネラルの安全最大摂取量に関する最新動向を解説した。

 Hathcock博士によると、ビタミンとミネラルの上限摂取量に関して、米国、欧州、英国の基準を比較、これらの間で若干の差異があるものの、「今後、米国、EU、英国が安全最大摂取量の統一化を進めることになる」としている。

 なお日本は現在、第7次栄養所要量の改定作業を進めており、安全最大摂取量にあたる許容上限摂取量の策定も行う予定で、Hathcock博士の提言は大きな影響を与えそうだ。

日本語版発行は6〜7月

 Hathcock博士は2004年3月23日に都内で開かれた講演会「サプリメント最前線 ビタミン・ミネラルの利用と安全性」で、2004年4月発行予定の書籍『Vitamin and Mineral Safety 2nd Edition』の特徴を紹介した。

 2nd Editionは1997年に発行されたHathcock博士らの著書「Vitamin and Mineral Safety」の第2版。

 この第2版は日本語版が2004年6〜7月頃に第一出版から発行される予定。

 Hathcock博士の講演の座長を務めた東邦大学医学部大橋病院検査医学研究室の橋詰直孝教授が明らかにした。

 第2版で新たに横並び一覧を掲載したのは、ビタミンやミネラルの安全最大摂取量。

 ビタミンやミネラルのリスクアセスメント(リスク評価)を行い、現在、以下の基準が出されており、『Vitamin and Mineral Safety』第2版では、これらを比較した。

1)米国食品・栄養委員会(米国FNB、実施時期は1997〜2002年)
2)欧州連合(EU)食品科学委員会(欧州SCF、同2000〜2003年)
3)英国ビタミン・ミネラル専門家委員会(英国EVM、同2003年)
4)米国CRNの1997年版(書籍『Vitamin and Mineral Safety』第1版の内容)
5)米国CRNの2003年版(同第2版の内容)

 日本に関しては、1999年に許容上限摂取量(UL)を定めたことをHathcock博士は認識していたが、その数値を決定した経緯について英語の情報として入手しにくかったこともあり、一覧表には入れていない。

 今回の第2版とりまとめで、ビタミンやミネラルの安全性評価は一段落したとみていい。

 リスクアセスメントの方法としてUL値(許容上限摂取量)で安全最大摂取量を定めていく方法(UL法)が妥当という考え方は、国際標準になってきた。UL法は、NOAEL(副作用非発現量)/不確定因子(UF)をベースに安全最大摂取量を算出する方法。

 WTO(世界貿易機関)のSPS協定(衛生植物検疫措置の適用に関する協定)に基づいて食品の国際規格基準化を進める機関であるコーデックス(Codex)委員会(FAO/WHO合同食品規格委員会)のCCNFSDU(栄養・特殊用途食品部会)も、「UL法を採用することをごく最近、決めた。これから実際の適用を進めていく」(Hathcock博士)。

 CCNFSDUは主催国のドイツで定期的に開催されており、直近では2003年11月3日〜7日にボンで第25回が開かれた。

 「輸入規制にならぬよう、今後、米国とEC、英国が安全最大摂取量の統一化を進めることになる。CCNFSDUでの採択を目指したFAO/WHOの国際的UL確立計画を進め、まずは科学委員会が各栄養成分のUL(食事も含む)を設定した後で、CCNFSDUがサプリメント製品のための安全最大摂取量を設定していくべき」と、Hathcock博士は提言した。

日本では栄養所要量の第7次改定が進行中

 日本では、2005年4月から5年間使用する「第7次改定日本人の栄養所要量」の策定が進められており、ビタミンやミネラルの許容上限摂取量(過剰摂取による健康障害を防ぐ上限値)についても、改定作業が進行中。

 日本では、サプリメントだけでなく、食事を含めた1日全体の許容上限摂取量(UL)を設定しており、1999年に公衆衛生審議会が厚生省に答申した第6次改定では、次のビタミン7種、ミネラル11種について、許容上限摂取量が設定された。

・ビタミン7種:ビタミンA、D、E、K、ナイアシン、B6、葉酸
・ミネラル11種:カルシウム、鉄、リン、マグネシウム、銅、ヨウ素、マンガン、セレン、亜鉛、クロム、モリブデン

 実はこの第6次改定から、推定平均必要量、推奨栄養所要量、適正摂取量、許容上限摂取量の4種類(栄養素ごとにみると最大3種類まで)の値が決められるようになり、食事摂取基準と呼ばれるようになった。

 Hathcock博士は日本のUL値について具体的に言及しなかったが、これは第6次改定で許容上限摂取量を決めるに当たって、参考とした論文をどのように探したのか、いくつの論文をどのように参考にして、どのようにまとめたか−−といったことに関して、日本でも十分に情報が公開されていないためだ

 第7次改定では、独立行政法人国立健康・栄養研究所の栄養所要量策定企画・運営担当リーダーの佐々木敏氏らが「科学的根拠に基づいた栄養所要量の策定に関する研究(通称:DRIプロジェクト)」を推進している。

 全国の100人を超える一流の栄養学者の協力を得て、「世界中の論文をくまなく探して、内容をまとめる」という系統的レビューを実施して基礎資料を収集する仕組みを取り入れている。

 日本人の栄養所要量を決めるには、日本人を対象に研究したデータが好ましいが、残念ながらこの分野では、質の高い日本人のデータの蓄積が少ない。

 輸出入をできるだけ円滑に行えるよう、コーデックス委員会が事実上の国際標準の策定を進めていることもあり、欧米の動向を強く意識することになりそうだ。

 なお、許容上限摂取量については、近く発行になる『Vitamin and Mineral Safety 2nd Edition』が重要な情報源の一つになりそうだ。

アミノ酸、カルニチン、CoQ10などの上限摂取量を検討へ

 Hathcock博士は、ビタミンとミネラルの安全性評価で確立したUL法を、今後、ビタミンやミネラル以外の栄養成分について適用していく考えだ。

 適用していきたい成分・物質として次の四つを挙げた。

1)アミノ酸や脂肪酸など、その他の栄養成分
2)ルテインやリコピンなど、食品中のビタミン様物質
3)カルニチンやクレアチン、ピルビン酸、コエンザイムQ10(CoQ10)など、生体物質または食品に含まれる物質(代謝産物)
4)ニンニクやイチョウ、薬用人参などの複合物質(植物成分及びエキス)

 2004年5月にチェコの首都プラハで開かれるIADSA(国際栄養補助食品協会連合)総会では、UL法の適用対象の候補として次の成分名を発表する。

・アミノ酸、脂肪酸、カルニチン、ルテインやリコピンなどのカロテノイド類、コンドロイチン、CoQ10、クレアチン、グルコサミン、メラトニン

 なお、講演会「サプリメント最前線 ビタミン・ミネラルの利用と安全性」は、NNFAジャパンが創立5周年記念講演会として主催したもの。

 Hathcock博士と国内4人の講師が3月21日と23日の2回、同じ演題で講演を行い、合計400人を超える参加者が集まった。

 NNFAジャパンは、栄養補助食品の業界団体として99年3月に活動を開始、現在は100社を超える企業が参画している。

 NNFAは、米国の栄養補助食品の業界団体である全米栄養補助食品協会の略称。NNFAジャパンは独立した日本の団体だが、米国NNFAとは密接な関係を持っている。    
(河田孝雄)

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