2004.03.19

【連載:がんの治療成績を読む】 その17 各施設が疾病、病期別に症例数と生存数を開示 生存率の読み方を患者向けに説明

 引き続き、米国の血液がんに関して、非血縁者間造血幹細胞移植(骨髄移植など)の成績の開示状況を見ていこう。

 全米骨髄バンクの成績開示においては、以下の三つが柱と言える。  

1.「施設別分析」(Center Specific Analysis):施設別の移植後1年生存率の開示
2.「診断・年齢別分析」(Survival by Patient Diagnosis and Age):施設別、疾病別、病期別の症例数と移植後1年生存数の開示  
3.開示された生存率の見方についての解説の提供

 表1(ここをクリックすると表が表示されます)は「1」の「施設別分析」から症例数と生存率の相関を分析したものだ。

 1996年5月〜2001年4月における症例数100以上の11施設の生存率差(実生存率−期待生存率)(プラスであるほど成績が優れていること、マイナスであるほど成績が劣っていることを示す)は、平均3.0。症例数50〜99の24施設の生存率差の平均は−1.9%。症例数20〜49の32施設の生存率差の平均は−3.8。症例数20未満の17施設の生存率差の平均は−12.0。

 症例が多い施設の方が生存率が優れている傾向が明らかだ。

 表2(ここをクリックすると表が表示されます)は、同じ「施設別分析」データから、「想定喪失患者数」を算出したものだ。平均以下の生存率の病院が平均的な生存率成績を残していれば、さらにあと何人が救命されていたかという仮定の数字だ。これは194人と計算することができる。75位のセント・ジュード・チルドレンズ・ホスピタル、シンシナティ・チルドレンズ・ホスピタル、ヴァンダービルト大学メディカル・センターは、症例数が多いのに成績が低いので、想定喪失患者数は大きくなる。こうした症例数が多いのに有意に成績が低い施設の成績が改善されることが、全体の成績を向上させるために大切である。

 このような議論ができるのも、施設別の生存率が標準化されて出ているからだ。だから、施設側も自己評価や目標設定ができるし、患者が施設選択の参考として使うこともできるのだ。  

 次に、「2」の「診断・年齢別分析」を見てみよう。ここでは、各施設の疾病、病気、年代別の症例数と1年後生存数が示してある。これだけ細分化すると1分類ごとの症例数は少なくなるので、生存率でなく症例数と生存数の生データが記入されている。

 いくつかの施設の実際例を見てみよう。まず、「施設別分析」で最上位であったシアトル・キャンサー・ケア・アライアンスの場合(こちら)。

 全体では症例数が522で、うち1年後生存数が299と分かる。また、例えば慢性骨髄性白血病の第1慢性期の11〜35歳では、症例数が62で1年後生存が51例というように、細かな分類ごとに症例数と生存数が分かる。

 一方、最下位であったヴァンダービルト大学メディカルセンター(こちら)。

 全体症例数が67で、うち1年後生存数が13であったことが分かる。慢性骨髄性白血病・第1慢性期の11〜35歳では、症例数が5で生存数が0である。

 このように、患者は「施設別分析」からその施設全体の生存率を読むだけでなく、「診断・年齢別分析」から自分の該当する疾病、病期、年齢別に、各々の施設の経験(症例数、生存数)を知ることができる。

 最後に、「3」開示された生存率の見方についての解説の提供−−に視点を転じてみよう。全米骨髄バンクの患者向け冊子「移植センターを選ぶ〜患者のためのガイドブック(移植センター一覧)」では、5ページにわたる「移植センター統計の読み方」という解説を付け、数字の読み方や留意点を説明している。ホームページからも閲覧できる。生存率データを開示するだけでなく、読み方を丁寧に説明することで、患者のデータを読みとる素養を高めようとしている。  

 全米骨髄バンクの「施設別分析」「診断・年齢別分析」「患者用解説」の3本立ての開示方法は、がん生存率のモデルとなる手法と言えよう。  

 次回からパート4 「がん生存率開示の問題点と将来像」へと進みます。                        
(埴岡健一、日経メディカル

*随時、掲載します。
*パート4では、読者からの声もご紹介したいと考えています。これまでの連載(バックナンバー目次はここ)を読まれたご意見、ご感想をお送りください。すべてをご紹介することはできませんが、引用させていただいたり、参考にさせていただきつつ、連載を続けたいと考えています。

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