2004.03.19

SHEAF試験:家庭血圧は診療所血圧に優る予知因子−−「仮面高血圧」でリスクは2倍強

 診療所血圧は正常だが家庭血圧が高値を示す「仮面高血圧(Masked Hypertension)」は、診療所血圧・家庭血圧ともに高い高血圧例よりも心血管系イベントのリスクが高い−−。フランスHopital Europeen Georges PompidouのGuillaume Bobrie氏らが米国医師会雑誌3月17日号で報告したSHEAF(Self-Measurment of Blood Pressureat Home in the Elderly: Assessment and Follow-up)試験の結果だ。24時間血圧計ではなく家庭血圧による「仮面高血圧」例の予後を検討した大規模試験としては初だという。

 SHEAF試験は、試験開始の前年に診療所血圧が140/90mmHgで、試験開始時に高血圧治療を受けていた60歳以上(平均70歳、男性48.9%)の4939例を平均3.2年間追跡したプロスペクティブな観察研究だ。全例で診療所血圧と家庭血圧が測定・記録された。試験開始時の平均診療所血圧は152/85mmHg、家庭血圧は146/82mmHgだった。

 追跡期間中、致死・非致死的を合わせ324例で心血管系イベントを認めた。そこで、血圧正常値をそれぞれ「診療所血圧<140/90mmHg」「家庭血圧<135/85mmHg」として、診療所・家庭血圧が正常である「血圧正常群」(685例)、診療所血圧のみ正常ではない「白衣高血圧群」(656例)、家庭血圧だけが高い「仮面高血圧群」(462例)、診療所・家庭血圧とも正常ではない「高血圧群」(3125例)に分け、「心血管系イベント」リスクを多変量解析を用いて比較した。

 その結果、「高血圧群」の「心血管系イベント」リスクは「正常血圧群」の1.96倍(95%信頼区間:1.27〜3.02)だったが、「仮面高血圧」では2.06倍(95%信頼区間:1.22〜3.47)で、「高血圧群」を上回る増加となっていた。「白衣高血圧群」におけるリスク増加は1.18倍(95%信頼区間:0.67〜2.10)、有意ではなかった。

 「高血圧群」の診療所血圧、家庭血圧は、それぞれ「160/87mmHg、155/86mmHg」。一方「仮面高血圧」では「134/78mmHg、143/83mmHg」、「白衣高血圧」では「151/85mmHg、127/74mmHg」、「正常血圧群」は「130/77mmHg、123/74mmHg」だった。

 また、診療所血圧、家庭血圧それぞれ1mmHgの昇圧によるリスクの増加を、年齢、性別、心血管系疾患既往や喫煙などを補正後、算出すると、「総死亡」(205例)と「心血管系死亡」(85例)に関しては診療所血圧・家庭血圧とも有意な増加は認められなかったが、「心血管系イベント」は家庭血圧の上昇により有意に増加していた。

 すなわち、「心血管系イベント」のハザード比は、家庭収縮期血圧1mmHgの増加により「1.02(95%信頼区間:1.01〜1.02)」、拡張期血圧でも同様に「1.02(95%信頼区間:1.01〜1.03)、さらに脈圧1mmHg増加でも「1.20(95%信頼区間1.01〜1.03)」と有意に増加していた。一方、診療所血圧増加によるハザード比の有意な増加は認められなかった。

 同様に家庭血圧では、収縮期血圧10mmHgの上昇による「心血管系イベント」リスク増加は17.2%(95%信頼区間:11.0〜23.8%)、拡張期血圧5mmHgの上昇で「11.7%(95%信頼区間:5.7%〜18.1%)」と有意だったが、診療所血圧ではそれぞれ「5.8%(95%信頼区間:−0.8%〜12.5%)」、「1.4%(95%信頼区間:−4.8〜7.9%)」となり、有意なリスク増加は認められなかった。

 24時間血圧で判別した仮面高血圧も予後増悪因子だったが、SHEAF試験の結果、家庭血圧でも同様であることが明らかになった。Bobrie氏らは降圧治療における家庭血圧測定を強く推奨している。

 ただしBobrie氏らも認めるように、家庭血圧を指標にした降圧治療が、診療所血圧を基準とした治療に比べ心血管系イベントをさらに抑制するかどうか、今後の検討が必要となる。

 なお、わが国では現在、家庭血圧を基準とした降圧治療の有用性を検討する「HOMED-BP」という大規模試験が進行中だ。開業医の参加も当初から予定している本試験、登録は2005年12月まで。詳細はhttp://www.cpt.med.tohoku.ac.jp/HOMED-BP/top.htmで閲覧できる。

 本論文のタイトルは「Cardiovascular prognosis of"masked hypertension"detected by blood pressure self-measurement in elderly treated hypertensive patients」。現在、アブストラクトをhttp://jama.ama-assn.org/cgi/content/abstract/291/11/1342?etocで閲覧できる。
(宇津貴史 医学レポーター)

Information PR

ログインしていません

Close UpコンテンツPR

ログインしていません

もっと見る

人気記事ランキング

  1. 「脱水」は2つに大別して考える カデット特集●シーズン前に押さえよう 脱水の基本 FBシェア数:263
  2. 熱中症の診療はFIRE! カデット特集●シーズン前に押さえよう 脱水の基本 FBシェア数:126
  3. 高Na・低Na血症で覚えておきたい計算式 カデット特集●シーズン前に押さえよう 脱水の基本 FBシェア数:70
  4. 予約制で1日40人、念願のきめ細やかな診療実現 ルポ:50代の転職(3)◎完全予約制の小児科を開業 FBシェア数:67
  5. 「私、ゲイですが、膀胱癌といわれて……」 井戸田一朗の「性的マイノリティの診療日誌」 FBシェア数:65
  6. 裏には何かある! 「合わない」情報への対処法 毎回5分、初めての診断戦略 FBシェア数:9
  7. 渡邊剛氏の大動脈弁置換術を動画でみる 動画で学ぶ「神の手」テクニック FBシェア数:208
  8. エカードとユニシアの併用処方は何が問題? セキララ告白!個別指導 FBシェア数:42
  9. 上腕に埋め込まれた「避妊の棒」を抜き取るには 小林米幸の外国人医療奮闘記 FBシェア数:95
  10. ニボルマブはNSCLC第1選択薬の優位示せず NEJM誌から FBシェア数:67