2004.03.18

【連載:がんの治療成績を読む】 その16 米国血液がん:非血縁者間・造血細胞移植成績 施設別に生存率と評価を開示、患者背景から「期待生存率」を科学的に計算

 今回と次回は米国の血液がんに関して、非血縁者間造血幹細胞移植(骨髄移植など)の成績の開示状況を見る(同移植は血液がんのみならず、再生不良性貧血などの血液疾患になどにも適応される)。これを取り上げるのは、がんの治療成績開示のモデルケースに位置付けられるからだ。

 全米骨髄バンク(National Marrow Donor Program=NMDP)によって、非血縁者間造血細胞移植の成績が集約されて開示されている。

 その開示の仕方では、以下の三つが柱である。

1.「施設別分析」(Center Specific Analysis):施設別の移植後1年生存率の開示  
2.「診断・年齢別分析」(Survival by Patient Diagnosis and Age):施設別、疾病別、病期別の症例数と移植後1年生存数の開示  
3.開示された生存率の見方についての解説の提供

 全米骨髄バンクは患者向けの冊子、「移植センターを選ぶ〜患者のためのガイドブック(移植センター一覧)」(Choosing a Transplant Center, A Patient's Guide, Transplant Center Directory)を発行し、定期的に改訂も行っている。2003-04年・第20版は500ページ弱に及ぶ。また、その内容はインターネット(http://www.marrow.org/PATIENT/patients_guide_idx.html)で読むことができる。  

 まず、1.の「施設別分析」の内容を見てみよう。

 <表(ここをクリックすると表れます)>は、上記ガイドブックのデータを解析しランキングとしたものだ(ただし、掲載症例7例以下の施設は対象外とした)。

 ここでは、症例数(1996年5月1日から2001年4月30日までの5年間)、リスクレベル(症例の患者背景による移植難易度により5段階分類)、移植後1年実生存率、移植後1年期待生存率(リスクレベルで調整済み)、95%信頼区間、移植成績の優劣(95%信頼区間判定による統計学的有意性のある格差を表示)が、1施設ごとに掲示されている。

 重要なのは、各施設の成績の中で技術差と患者背景に起因する要素を科学的、統計学的にできるだけ区別する努力がなされていること。そして、期待生存率(予後因子で調整済みの平均的生存率)と実際の成績(実生存率)を比較して評価できるようになっていることだ。

 予後因子として多数の項目が勘案されている。疾病の種類、病期、ドナー(提供者)とレシピエント(移植を受ける患者)のHLA(ヒト組織適合抗原)適合度、日和見感染原因ウイルスの陽性・陰性、全身状態、診断から移植までの期間、年齢などだ。過去の成績から各因子の生存率への影響度が分かっているので、それを点数化し、1症例ごとの期待生存率が計算される。全症例の期待生存率を合算して、全症例の期待生存率、すなわち施設単位の期待生存率が算出されている。

 リスクレベルは、その施設が行っている移植の難易度だ。予後因子分析により、各施設の扱う症例の難易度を合算して、全施設を症例リスク度から並べ、それを施設数が同じになるよう1(易)から5(難)まで5段階に分類。それを表示している。ハイリスク患者を積極的に受け入れている施設かどうかの目安にもなる。

 このように、「当病院は、ハイリスクの患者を受け入れているので不利だ」「予後の良い患者を選択しているので、あそこは成績が良い」といった疑問の声が出ないように、できるだけ合理的、科学的なアプローチで算出した成績を開示しているわけだ。

 その上で95%信頼区間より上の成績の施設には「優良」、下の成績の施設には「不良」との表示も付している(表参照)。  

 このように方法論を明確にしておけば、データを出す方(施設)も、見る方(患者など)も、かなり納得ができる生存率開示が可能となる。  

 次回に続く・・・。                        

(埴岡健一、日経メディカル

*随時、掲載します。
*読者からの情報提供をお待ちしています。がんの治療成績に関するデータやご意見があれば、お寄せください。今後の連載の参考にさせていただきます。
宛先:khanioka@nikkeibp.co.jp

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