2004.03.17

【連載:がんの治療成績を読む】 その15 パート3 米国のがん治療成績開示方法から 疾病、施設群、病期、州別に生存率を開示 インターネットから自在に検索が可能

 今回からパート3として米国の状況を見る。米国では全国的ながんの成績開示の仕組みがある。まず、これを紹介しよう。

 米国では、がんの治療成績の収集、集計方法の標準化、生存率の開示に関して、米国外科学会のがん委員会(American College of Surgeon=ACoS, Commission on Cancer=COC)が大きな役割を果たしている。このCOCが扱うのは外科手術領域に限らず、放射線療法、化学療法、免疫療法なども含んでいる。

 COCのホームページは、治療実績データに関して二つの重要な一般公開検索サービスを提供している。

 一つが、全米がんデータベース(National Cancer Data Base)の「ベンチマークレポート」(比較指標レポート、Benchmark Reports)(http://web.facs.org/ncdbbmr/)。

 もう一つが、同じく全米がんデータベースの「生存率レポート」(Survival Reports)(http://web.facs.org/ncdbbmr/surv.cfm)である。

 ベンチマークレポートは、年(1997年〜2001年)、疾病(乳がん、結腸がん、直腸がん、肺がん、肝がんなど11種類の主要ながん)、地区、州、施設群(年間症例300以上の施設、年間症例300未満の施設、調査・研究施設、その他の施設)、年齢、性別、病期、病理分類、治療法(外科手術、放射線治療、化学療法、免疫療法など)、手術の術式などの項目によって、その件数が自在に検索できるようになっている。

 例えば、乳がんについて、病期別の温存療法の比率を州別に調べるといった比較ができる。

 生存率レポートは、全国約1800病院から11種類のがんを対象に、1995、96年に治療を受けた120万人の患者の生存状況が、病期別に1年〜5年の生存率として閲覧できるデータベースだ。全国のがんの症例数の3分の2がカバーされている。これも疾病、地区、州、施設群に検索できる。

 例えば乳がんでは、施設群別に見ると年間300例未満の施設が成績が低めで、教育・研究病院が高めであることが分かる。また州別に分析すると、ハワイ州などの生存率が高く、テキサス州ではやや全国平均を下回るといったことも読みとれる。

 結腸がんでは、施設群別では300例以上の病院の生存率が高めであり、州別ではニューヨーク州で全国平均より生存率が低くなる。肺がんでは、教育・研究病院群が年間300症例未満施設群より、かなり高い成績を示している。  

 各病院は、こうしたデータベースによって自らの施設の成績と全国あるいは近隣の施設を、疾病・病期別に成績や術式構成を比べ、治療成績改善のための指標や目標とすることができる。COCのベンチマークレポートと生存率レポートは、生存率を比較検討する基盤を提供することで、米国のがん治療の成績向上に大きく貢献していると考えられる。

 次回は米国の血液腫瘍の治療法の成績開示を見ます。

(埴岡健一、日経メディカル

*随時、掲載します。
*読者からの情報提供をお待ちしています。がんの治療成績に関するデータやご意見があれば、お寄せください。今後の連載の参考にさせていただきます。
宛先:khanioka@nikkeibp.co.jp

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