2004.03.10

【ACC2004速報】 食欲抑制による抗肥満薬に禁煙補助効果も、リモナバンについて二つのRCTの報告

 脳内のモルヒネ受容体を阻害して、過剰な食欲を抑制し、体重を減らす働きがある「リモナバン」に関して、対象の異なる二つの第3相試験の結果が、第53回米国心臓病学会(米・ニューオリンズ)で発表され、肥満人口の増加が深刻な問題となっている米国メディアの注目を集めている。

 臨床試験の一つは、肥満者を対象に1年間の体重と血清コレステロール値などの変化を追跡した「RIO-LIPIDS」。もう一つは、喫煙者を対象にした禁煙指導にリモナバンを用い、10週後の禁煙達成率と体重の変化を追跡した「STRATUS-US」。

 RIO-LIPIDS(Rimonabant In Obesity)は、国際的多施設におけるプラセボ対照の二重盲験比較試験。対象は、BMIが27〜40kg/m2の肥満者で、中性脂肪または総コレステロールが高い1033人。これらの被験者をリモナバン20mg/日投与群(346人)、5mg群(345人)、プラセボ群(342人)に無作為に振り分け、それぞれ1日600キロカロリーの摂取削減指導を1年間行った。

 その結果、リモナバン20mg群では、平均8.6kg体重が減少し、プラセボ群の2.3kg減に対して有意差が認められた。体重が5%以上減少した割合は20mg群72.9%、5mg群41.8%で、いずれもプラセボ群(27.6%)に対し、有意差が認められた。また、ウエストも20mg群で9.1cm縮まった(有意差あり vs プラセボ群)。

 一方、HDLコレステロール値はリモナバン投与群で上昇し、中性脂肪も20mg群でプラセボ群に対し有意に低下するなど、心血管疾患の危険因子を改善されたことが認められた。

 以上から、演者のJ.P. デスプレ氏(カナダ・Laval大学教授;上の写真)は、「これまで体重を減らすことが、臨床的にどういう効果があるかははっきり分かっていなかったが、リモナバンは肥満者のウエストを縮めるだけでなく、脂質の改善など、心血管イベント発生の危険を減少させることが明らかになった」と締めくくった。

 STRATUS-US(STudies with Rimonabant And Tobacco USe)では、1日平均10本以上たばこを吸う喫煙者784人(平均年齢42.3歳、BMI 27.8kg/m2、平均本数23本/日)を対象に、10週間にわたって禁煙指導を行い、禁煙成功率などを評価した。

 指導と同時に、リモナバン20mg/日を投与する群(262人)、5mg群(261人)、プラセボ群(261人)に無作為に振り分けた。禁煙できたかどうかは、呼気中のCO濃度と血清ニコチン濃度で確認した。

 その結果、リモナバン20mg群では、36.2%が禁煙継続に成功したが、5mg群では20.6%、プラセボ群は20.2%の成功率だった。禁煙すると体重が増加すると一般にいわれているが、20mg群では、肥満傾向や肥満者では体重は減少傾向にあった。体重が正常範囲の被験者では減少しなかった。一方、プラセボ群では、禁煙失敗者も含めて、正常範囲でも肥満者でも増加し(平均1.1kg)、リモナバン投与群との有意差が認められた。

 副作用については、吐き気が最も多く、20mg群15.7%、5mg群8.8%、プラセボ群9.2%だったが、他の副作用も含め、実薬群とプラセボ群で有意差は認められなかった。また、うつや不安などの精神的な症状も、差は認められなかった。

 以上の結果から、発表者のR. アンテネリ氏(米国・シンシナティ医科大学助教授;写真)は「喫煙は心疾患の最大の危険因子だが、これまでは喫煙者の発症予防に対する薬剤がなかった。リモナバンには、禁煙継続を支援し、しかも体重の増加を防ぐという二つの効果がある」と結論付けた。

 リモナバンは、脳内にあるモルヒネ様物質の受容体であるアナンダマイド受容体とCB1カンナビノイド受容体を阻害する働きを持つ。これらの受容体は、食物の摂取と消費エネルギーのバランスを保つ役割を果たしている一方、たばこ依存へも影響していると考えられていた。今回発表された臨床試験によって、これらの理論が裏付けられたことになる。今後、「喫煙と肥満を同時解消する夢の薬」と呼ばれる可能性もありそうだ。
(坂本正、日経メディカル

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