2004.03.10

積極的脂質低下療法、標準的脂質低下療法より有意に予後を改善−−急性冠症候群大規模臨床試験PROVE-IT発表

 急性冠症候群(ACS)は、冠動脈粥腫の急激な崩壊によって生じることが知られているが、予後不良であることから早急な治療戦略の確立が望まれていた。そうした中、ACC2004のLate-Breaking Clinical Trialで、発症早期からの積極的脂質低下療法が標準的脂質低下療法よりも有意に予後を改善することが報告された。これはPROVE-IT(Pravastatin Or Atrovastatin Evaluation and Infection Therapy: TIMI 22)と呼ばれる大規模臨床試験で明らかになったもの。報告者はBrigham and Womens' Hospital,BostonのCannon CP氏(写真)。

 PROVE-IT(8カ国、349施設参加)は、ACS発症10日以内、総コレステロール(TC)240mg/dl未満の4162例を、標準的脂質低下療法=プラバスタチン群(2063例、40mg/日:日本における承認用量は10〜20mg/日)と積極的脂質低下療法=アトルバスタチン群(2099例、80mg/日:日本における承認用量は10〜20mg/日)に無作為に割り付け、平均2年間にわたって追跡し予後を調べたもの。

 第一次エンドポイントは総死亡+心筋梗塞+入院を要する不安定狭心症+再入院+血行再建術(無作為化後30日以降)+脳卒中。試験開始時におけるTCの中央値はプラバスタチン群180mg/dl、アトルバスタチン群181mg/dl。LDL-コレステロール(LDL- C)の中央値は両群とも106mg/dl。

 平均2年間の投与で、LDL- Cの中央値はプラバスタチン群で95mg/dlまで、アトルバスタチン群では62mg/dlまで低下した(p<0.001)。第一次エンドポイントはアトルバスタチン群でプラバスタチン群よりもハザード比が16%有意に低下した(22.4% vs 26.3 %、p=0.005)。第一次エンドポイントのうち血行再建術や入院を要する不安定狭心症などはアトルバスタチン群で有意差が認められたが、総死亡や心筋梗塞などでは有意差はなかった。一方、脳卒中に関しては両群ともに発症率は低かった。

 アトルバスタチンの有用性は、性別や糖尿病の有無、不安定狭心症か心筋梗塞かといった患者背景の違いを超えて認められ、発症30日の早期から試験終了まで続いたが、LDL- C 125mg/dl以上で認められたハザード比34%減少という有用性が、LDL- C 125mg/dl未満では7%減少にとどまった点が特に注目される(p=0.02)。治療の中止率は両群間で差はなかったが、alanine aminotransferase値の上昇(正常値上限の3倍以上)は、アトルバスタチン群でプラバスタチン群よりも有意に高かった(3.3% vs 1.1%、p<0.001 )。

 現行のガイドラインでは、心筋梗塞既往の場合の脂質治療目標値はLDL- C 100mg/dl未満となっているが Cannon 氏は、「ACS患者は入院直後の早期から持続的な形で、現行の治療目標を下回る値までLDL- Cを低下させることにより一層の利益を受けることが分かった」と結論付けた。報告はN Eng J Med 2004;350:15www.nejm.org] に掲載されている。

 この試験では、アトルバスタチン80mg/日という現状考えられる最強の脂質低下療法が標準的治療法と比較されたため、日本の使用量とは現実離れした高用量が2年間にわたって使われている。日本では今後ACSに対する積極的脂質低下療法を臨床的にどのように確立するかについて議論が必要となるであろう。また、ACSにおいてChlamydia pneumoniae感染が関与する可能性が考えられるため、PROVE-ITでは抗菌薬ガチフロキサシンの有用性も検討されているが現在データ解析中のため今回は未報告だった。

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