2004.03.09

NADPH酸化酵素阻害により、プラバスタチンは高血圧性心機能障害を抑制

 名古屋大学老年医学の市原佐保子氏らは3月7日のポスターセッション「Heart Failure: Chronic Treatment」において、プラバスタチンが脂質代謝や血圧を介さずに、高血圧性心不全ラットの生存率、左室収縮能、拡張機能を改善するとのデータを報告した。プラバスタチンによる抗酸化作用が関与していると考えられるという。

 市原氏らはDahl食塩感受性ラットに7週齢より8%食塩水を負荷し心不全モデルを作製したが、その際、1.プラバスタチン50mg/kg/日(低用量)投与、2. 同100mg/kg/日(高用量)投与を同時に開始する群と、3.プラバスタチン非投与群――の3群に分け、観察した。対照群は0.3%食塩水負荷Dahl食塩感受性ラット群とした。

 その結果、18週齢時、高用量プラバスタチン群では、低用量プラバスタチン群とプラバスタチン非投与群に比べ、有意かつ著明に低い死亡率が認められた。しかし、血圧の推移は、対照群に比べ3群とも12週齢時と18週齢時に有意な高値を示したが、3群間には差がなかった。同様に、血清総コレステロール値、HDLコレステロール値も、対照群に比べそれぞれ有意に低値、高値を示していたが、3群間に有意差は認められなかった。また、心肥大への進展に関しても、18週齢時の心室中隔壁厚、後壁厚、左室重量、左室重量/体重比は、3群間に有意差はなかった。しかし左室拡張末期径だけは、「高用量群」で「低用量群」、「非投与群」に比べ有意に低値を示していた。

 そこで左室収縮能の指標である左室内径短縮率(FS)を比較すると、「低用量群」と「非投与群」では対照群に比べ有意に低下していたFSが、「高用量群」ではこれら2群に比べ有意に高かった。さらに拡張能も「高用量群」では維持されており、拡張能指標であるpeak negative MVG(心筋速度勾配)が対照群に比べ有意に低下した「非投与群」に比べ「高用量群」で有意に高かった(「低用量群」では高値傾向のみ)。心筋組織の検討では、「低用量群」、「非投与群」に比べ「高用量群」では間質線維化が有意に抑制され、また「高用量群」の血管周囲の線維化は、対照群と同等まで抑制されていた。

 「高用量群」でこのように高血圧性心機能低下が抑制された背景として、市原氏らはプラバスタチンによる抗酸化作用を想定している。すなわち「高用量群」18週齢時の心筋細胞では、抗酸化の指標であるGSH/GSSG比は「非投与群」に比べ有意に高く、NADPH酸化酵素は有意に少なかった。一方、スーパーオキシドディスムターゼ(SOD)とグルタチオンペルオキシダーゼ(GPx)活性は「低容量群」、「非投与群」と差がなかった心筋細胞におけるNADPH消化酵素減少の機序を見るべく、NADPH酸化酵素の構成要素であるRac1、p47phox、p67phox蛋白の発現を比較すると、細胞膜においては「高用量群」で抑制されていたが、細胞質における発現の抑制は認めなかった。

 この結果より、プラバスタチンの抗酸化作用は「Rac1などの細胞表面へのトランスロケーション抑制された結果」ではないか――と市原氏らは考えている。

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