2004.03.05

【再掲】【連載:がんの治療成績を読む】 その9 推定喪失患者数  もしすべてが優良施設なら、「2万人中187人」が救命されたはず

 がん治療施設の治療成績を見るのは、1.施設間格差を明らかにして患者が施設を選択できるようにする、2.成績の低い施設が成績の高い施設に倣って成績を向上させる−−などの狙いがある。

 成績が低い施設が存在するということは、成績が高い施設で治療すればもっと多くの患者が救命されていたことを意味する。言い換えれば、成績の低い施設が選ばれたことで生存できなかった「推定喪失患者」が存在することになる。

 前回見た全がん協加盟病院の施設群別の成績格差については、どの程度が医療技術に起因し、どのくらいが患者背景の違いに由来しているか分からない。今後のさらなる分析と開示が待たれるところだ。現状では、医療技術の差だけを抽出できないので、幾つかの想定で「推定喪失患者数」について試算を行ったのが<>だ。

シナリオ1】

 各施設群の成績を全体平均成績と比較。成績格差がすべて医療技術水準に起因していたと仮定。平均成績に達していれば救命できていたはずの人数。

 これは374人となる。

シナリオ2】

 各施設群の成績を全体平均成績と比較。成績格差の半分が医療技術水準に、残り半分が患者背景に起因していたと仮定。平均成績に達していれば救命できたはずの人数。

 これは187人となる。

シナリオ3】

 各施設群の成績を最も生存率が高かった「がんセンター群」の成績と比較。成績格差がすべて医療技術水準に起因していたと仮定。「がんセンター群」と同じ成績に達していれば救命できていたはずの人数。

 これは733人となる。

シナリオ4】

 各施設分の成績を最も生存率が高かった「がんセンター群」の成績と比較。成績格差の半分が医療技術水準に、残り半分が患者背景に起因していたと仮定。平均成績に達していれば救命できたはずの人数。

 これは367人となる。

 仮にシナリオ2を採用すると、約2万人の治療で187人(1%弱)の救命の機会を逸していることになる。がんと診断される患者数は年間約50万人で、この集計に入っているのはごく一部に過ぎない。日本全国では、毎年、50万人×1%=5000人程度の患者が、施設選択の問題によって救命の機会を逃しているというラフな計算も成り立つ。

 だが、実際は施設による医療技術格差はもっと大きいのかも知れない。施設群ごとの比較では、同じ群に属する施設の成績の平均値となるので、施設ごとの差が際立たないからだ。  

 施設ごとの治療成績格差はさらに大きい。次回は、個別施設の生存率を考察する。                          

(埴岡健一、日経メディカル

*随時掲載ですが、当面は毎日掲載する予定です。
*読者からの情報提供をお待ちしています。癌の治療成績に関するデータやご意見があれば、お寄せください。今後の連載の参考にさせていただきます。
宛先:khanioka@nikkeibp.co.jp

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■ 訂正 ■
 記事中で、がんと診断される患者数は年間30数万人としておりましたが、年間約50万人でした。お詫びして訂正します。

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