2004.02.20

低用量ラミプリルは2型糖尿病の心血管系イベントと腎障害進展の抑制に無効−−DIABHYCAR試験

 微量アルブミン尿または蛋白尿陽性の2型糖尿病患者の心血管系イベントと腎障害進展の抑制に対し、低用量のACE阻害薬ラミプリルは無効だった。フランスAssistance Publique des Hopitaux de ParisのMichel Marre氏らが行った無作為割り付け二重盲検試験DIABHYCAR試験の結果が、英British Medical Journal(BMJ)誌のホームページで、誌面掲載に先立って2月11日に公開された。

 DIABHYCAR(type 2 DIABetes, Hypertension, Cardiovascular Events and Ramipril)試験の対象は、50歳を超え、標準的糖尿病治療薬を服用しているにもかかわらず、微量アルブミン尿また蛋白尿陽性(2回の随時尿で20mg/L以上)の2型糖尿病4912例。およそ55%が140/90mmHg以上ないし降圧薬を服用している高血圧だった。

 これら4912例をラミプリル1.25mg/日群(2443例)とプラセボ群(2469例)に無作為割り付し、二重盲検法で3〜6年(中央値4年)間追跡した。その結果、第一評価項目である「心血管系死亡、非致死性心筋梗塞、脳卒中、入院を要する心不全または末期腎不全の発症率」は、低用量ラミプリル群が37.8/1000例・年、プラセボ群38.8/1000例・年で有意差はなかった(p=0.65)。また、個々の評価項目のいずれについても、ラミプリル群における有意な減少は認められなかった。

 微量アルブミン尿と尿蛋白については、ラミプリル群で減少傾向が見られたが、統計的有意差は得られなかった。血圧は試験開始2年後の時点で「2.43/ 1.06mmHg」だけラミプリル群が低かった。

 ラミプリルはMICRO-HOPE試験において、10mg/日の用量で、心血管系イベント既往、または心血管系リスクファクターを有するが顕性腎障害を認めない2型糖尿病患者に対する心血管系イベント減少作用と腎保護作用が認められている。このため、本論文の考察でも両試験の比較に多くの誌面を割いているが、Marre氏らは結論として、両試験の結果の違いをもたらした要因として、ラミプリルの用量の違い(高 対 低)を挙げている。

 Marre氏は考察の中でいくつか反証仮説を立てて検証している。「MICRO-HOPEではDIABHYCARとは違って腎機能低下例が含まれておらず、逆に心血管系イベント既往例が多かったことが成績の違いをもたらしたのではないか」という点については、両試験とも対象は心血管系イベントハイリスク例であり、またMICRO-HOPEにおいて心血管系イベント既往を有する群と有さない群でラミプリルによる有用性に差がなかった点を指摘し、両試験の対象患者の違いが結果の差をもたらした可能性を否定している。
 
 その上でMarre氏らは、低用量ACE阻害薬では高用量と異なり、血清ACE活性が同等に阻害されていても動脈硬化病変出現を抑制できなかったという動物実験や、HOPEの副研究である SECURE(The Study to Evaluate Carotid Ultrasound Changes in Patients Treated With Ramipril and Vitamin E)試験で観察されたラミプリルの頸動脈硬化進展抑制作用の用量依存性を挙げ、心血管系イベントハイリスク例の心腎保護には、低用量よりも高用量のレニン・アンジオテンシン系抑制薬が有用だと結論付けている。

 注目されるのは、DIABHYCARにおけるラミプリル群の降圧度が「2.43/1.06mmHg」で、MICRO-HOPEにおける2.4/ 1.0mmHg」と同等だった点だ。MICRO-HOPEを含む一連のHOPE試験の結果は、「ACE阻害薬による降圧とは独立した臓器保護作用のエビデンス」であると主張する立場と「血圧の差だけで説明できる」とする立場から、ここ数年間論争の的になってきた。

 DIABHYCARとMICRO-HOPEの結果の差が血圧で説明できないならば、「高用量ラミプリルを用いたMICRO-HOPEでは、組織ACEを阻害できたため、心腎保護作用が現れた」との議論も成り立ち、ACE阻害薬による「降圧プラスα」の臓器保護作用が示唆され得る。

 通常量のACE阻害薬を用いた高血圧試験では、忍容できる高用量を用いれば得られたはずの心血管系に対する有用性が得られていない可能性がある──とするMarre氏らの主張は、ALLHATをめぐっても更なる議論を呼びそうである。今後の議論を追いたい。

 本論文の原題は「Effects of low dose ramipril on cardiovascular and renal outcomes inpatients with type 2 diabetes and raised excretion of urinary albumin : randomized, double blind, placebo controlled trial (the DIABHYCAR study)」。現在全文をこちらで閲覧できる(pdfファイル)。(宇津貴史:医学レポーター)

■ 関連トピックス ■
◆ 2002.12.18 「利尿薬はACE阻害薬、Ca拮抗薬に勝る」−−NHLBIが「ALLHAT」研究結果を発表

Information PR

ログインしていません

Close UpコンテンツPR

ログインしていません

もっと見る

人気記事ランキング

  1. 医師はスペシャリストの前にゼネラリストたれ 記者の眼 FBシェア数:357
  2. 看護師に問題視される医師 うさコメント! FBシェア数:1
  3. 17歳女子。主訴:下痢と肛門部痛 総合内科BASICドリル FBシェア数:1
  4. 56歳男性。湿性咳嗽、呼吸苦 日経メディクイズ●胸部X線 FBシェア数:0
  5. 内覧会でPRした手術、手続き漏れで実施できず 開業の落とし穴 FBシェア数:1
  6. 28歳男性。腹痛、下血 日経メディクイズ●救急 FBシェア数:0
  7. 74歳女性。入院中の著明な血小板減少 日経メディクイズ●神経内科 FBシェア数:0
  8. 診察中の患者の横でひざまづき祈り始めた通訳 小林米幸の外国人医療奮闘記 FBシェア数:30
  9. どうなってるの? 扁桃摘出の適応 Dr.ヨコバンの「ホンマでっか症例帳」 FBシェア数:103
  10. ついに登場!希釈式自己血輸血 リポート◎自己血輸血に3つ目の柱、手術当日でも可能な新手法 FBシェア数:476