2004.02.17

血漿BNP濃度は心不全例以外でも死亡、心血管系イベントの予知因子になる

 慢性心不全の予後予知因子として注目されている血漿Bタイプナトリウム利尿ペプチド(BNP)値とN末端pro心房性ナトリウム利尿ペプチド(NT-proANP)値は、心不全の鑑別診断に用いられるよりもかなり低い値で、心血管系イベントと総死亡の有意な予知因子になっているとする報告が、米New England Journal of Medicine(NEJM)誌の2004年2月12日号に掲載された。米国Framingham Heart StudyのThomas J. Wang氏らが報告した。

 Wang氏らは、Framingham Offspring Studyに参加した3532例から、心不全や腎機能低下などが見られる186例を除外した3346例(うち男性1562例)を追跡し、転帰と血漿BNP、NT-proANP値との相関を検討した。

 平均5.2年間の追跡期間中、119例が死亡し、79例で心血管系イベント初発を認めた。心血管系イベントの内訳は「心不全」、「心房細動」、「脳卒中(一過性脳虚血を含む)」、「冠動脈イベント」とした。

 多変量解析により、BNP、NT-proANP値と死亡、心血管系イベントの相関を検討したところ、BNP値を対数化した値が1標準偏差増加すると、死亡リスクは27%(p=0.009)、心血管系イベント初発は28%(p=0.03)、それぞれ有意に増加していた。しかし「心血管系イベント」のなかで、冠動脈イベントにはBNPとの有意な相関は認められなかった。

 一方、NT-proANP値を対数化した値が1標準偏差増加すると、死亡リスクは41%(p=0.001)増加し、心血管系イベント初発も30%(p=0.04)増加したが、脳卒中と冠動脈イベントはNT-proANPと有意な相関を示さなかった。

 また、BNPとNT-proANPが80パーセンタイル値を上回る症例では、それ以下の値の症例に比べ、死亡リスクはそれぞれ 62%(p=0.02)、76%(p=0.009)、心血管系イベント初発リスクは76%(p=0.03)、52%(有意差なし)増加していた。

 ここで、BNPの80パーセンタイル値は男性が20.0pg/ml、女性23.3pg/ml、中央値はそれぞれ6.2pg/ml、10.0pg/mlだった。また、NT-proANPの80パーセンタイル値は男性が497pmol/l、女性541pmol/l、中央値はそれぞれ6.2pmol/l、女性10.0 pmol/lだった。

 本研究では、BNP値が現在、心不全の鑑別基準とされている100pg/ml(NEJM誌2002年7月18日号の「Rapid Measurement of B-Type Natriuretic Peptide in the Emergency Diagnosis of Heart Failure」を参照)よりも極めて低い水準で、死亡や心血管系イベントの予知因子となる可能性が示された。しかし、本試験ではC反応性タンパクなどのデータが欠けているため、BNPやNT-proANPが本当に予知因子であるのかについて、さらに研究が必要であるとWang氏らは慎重な姿勢を示している。

 この論文の原題は「Plasma Natriuretic Peptide Levels and the Risk of Cardiovascular Events and Death」。アブストラクトはこちらまで。(宇津貴史、医学レポーター)

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