2004.02.09

【再掲】「アスタキサンチン」に熱い注目集まる 大量生産可能になり、眼精疲労や腎症改善などの新効用が次々明らかに

 アスタキサンチンという食品成分が、サプリメントやドリンク、化粧品などの原料として熱い注目を浴びている。

 アスタキサンチンは、サケの切り身やイクラに含まれる赤色の色素。抗酸化力が極めて強く、アスタキサンチンの抗酸化力は、代表的な抗酸化ビタミンであるビタミンEの約550〜1000倍に相当するといわれる。

 大量生産が可能になったことをきっかけに、アスタキサンチンを配合したサプリメントやドリンク、化粧品など、商品化が広がっている。

 一方で、アスタキサンチンの健康効用の研究も活発に行われている。

 すでに、抗炎症、動脈硬化抑制、ストレス抑制、糖尿病予防、発ガン抑制、目・脳・肝臓・筋肉・精子・皮膚の機能を高める、免疫を賦活(ふかつ)−−などが明らかになっている。

 特に、眼精疲労の軽減と、糖尿病の合併症である糖尿病腎症の軽減に注目が集まっている。

サケの生殖に欠かせない色素成分がヒトの健康によい

 アスタキサンチンは、ヘマトコッカス藻と呼ばれる藻類を大量に培養することにより、大量に入手することが可能になった。

 サケの色素を、特定の藻類を培養して作ると聞くと、ちょっと意外な感じだが、実はサケの色素の大元は藻類だ。アスタキサンチンはサケが自ら作る色素成分ではなく、サケが食べた藻が体内に蓄積した結果だからだ。

 ヘマトコッカス藻を培養してアスタキサンチンを大量生産する技術が開発され、まとまった量のアスタキサンチンの入手が容易になり、アスタキサンチンがどのような機能を持っているか、経口摂取したときにどのような健康効用を発揮するか、という研究が急ピッチで進んでいる。

 そもそも、アスタキサンチンとは何か。

 アスタキサンチンは、サケの生殖にとってなくてはならない成分だ。

 サケは川を遡上するとき、浅瀬で強烈な紫外線にさらされ、悪玉の酸素である活性酸素が発生して、体がボロボロになる。

 大量に発生する活性酸素を消去して、サケの身を守るのがアスタキサンチンだ。サケはアスタキサンチンのお陰で、スタミナを温存しつつ産卵場所にたどりつくことができるのだ。

 また、サケのもつアスタキサンチンの一部は、産んだ卵(イクラ)に受け継がれる。そのイクラは、アスタキサンチンの量が少ないと孵化しない。

 つまり、アスタキサンチンはサケの生殖に欠かせない色素成分なのだ。

 アスタキサンチンは、動植物界に広く分布していて、黄橙・赤・赤紫色を示す色素であるカロチノイドの一つ。

 カロチノイドに分類される色素成分の代表的なものは、ニンジンのカロチンとトマトのリコピンだ。いずれも、活性酸素の害を防ぐ「抗酸化活性」が強い。ただし、抗酸化活性はカロチノイドの種類によって異なる。

アスタキサンチンは、悪玉酸素のエネルギーを熱に変える

 多くの抗酸化物質は、自らが酸化されるという自己犠牲によって、活性酸素の害を防ぐ。しかし、「酸化された抗酸化物質」の量が増えていくと、それ自体が活性酸素を生み出す原因物質になる。

 こうなった物質はプロオキシダントと呼ばれる。いわば“ババ抜き”のように、活性酸素の原因となる性質が手渡しされていくのだ。

 アスタキサンチンは、この“ババ抜き”とは異なる仕組みで、活性酸素の害を減らす。活性酸素に対して触媒のように働き、活性酸素の害のエネルギーを熱エネルギーに変える作用が強い。

 いわば、“ババ抜き”のババを、アスタキサンチンは熱エネルギーに変えて、放出してしまうのだ。

 さて、アスタキサンチンの効用のうち、特に注目度が高まっているのが、目の機能を高める作用と、糖尿病を抑制する作用だ。

 両作用を確認した成果は、2004年2月5日に都内で開かれた「アスタフォーラム記者説明会」で発表された。

 目に対する健康効用としては、眼精疲労を軽減する効果が確認された。

 1日12mgのアスタキサンチンを4週間摂取してもらったところ、眼精疲労の指標となる調節緊張時間が、3分の1に短縮された。つまりは眼精疲労がアスタキサンチンの摂取で改善されたのだ。

 この効用は、アスタキサンチンが目の血管に到達することによって得られる。

 目の血管は、脳の動脈から分かれているため、目に有効成分が到達するには、その前に脳の血管に入る必要があるが、脳の血管の入り口には「脳血液関門」と呼ばれる関所があり、ここを通過できる物質は限られている。

 アスタキサンチンは、この関所を通過できる成分なのだ。

腎透析の患者増大の抑制に期待

 一方、糖尿病に対する健康効用としては、糖尿病性腎症(糖尿病が原因で起きる腎臓の機能低下)を抑制する効果が、特に顕著に認められた。

 アスタキサンチンを餌に混ぜて、糖尿病モデル動物(マウス)に投与したところ、腎炎の指標となる尿中アルブミン濃度が顕著に低下した。

 腎臓の糸球体の細胞をとってきて、どんな遺伝子が働いているか(発現しているか)を調べたところ、通常のマウスに比べて糖尿病モデル・マウスで働きが高まる、いわゆる悪玉の遺伝子は、その多くがアスタキサンチンの経口投与によって働きが抑制された。

 逆に、糖尿病で働きが低下してしまう、いわゆる善玉の遺伝子は、その多くがアスタキサンチンの経口投与で働きが向上した。

 京都府立医科大学の研究グループが、DNAチップと呼ばれる、遺伝子を高密度で配置した装置を活用して、この現象を見いだすことに成功した。

 日本では現在、20万人の患者が透析治療を受けており、一人当たり年間500万円の医療費がかかっている。

 20万人×500万円/人=1兆円もの医療費がかかっている計算になる。

 腎臓の機能が低下して透析が必要になってしまう最も大きな原因が、糖尿病。年間1万人が糖尿病性腎症によって、新たに透析が必要になるのだ。

 「このままいくと、10年後には透析患者数は30万人になる。これが半分になるだけで、ものすごい経済効果がある」

 アスタキサンチン投与のモデル動物実験を進めている京都府立医科大学大学院の内藤裕二講師(学内)はこう話す。

 「厳しい食事制限を指導されている糖尿病患者の血液を調べたら、血中のカロチノイド濃度がことごとく正常値より低くなっていた。酸化ストレスの指標となる数値も増大していた。そこで、カロチノイドのひとつであるアスタキサンチンの投与が意味があると考え、まず動物実験で効果を確認した」と内藤講師は語る。

 眼精疲労に悩んでいる人や、糖尿病が気になる人は、アスタキサンチンを試してみる価値がありそうだ。

富士化学工業が、アスタキサンチン世界市場の70%超を握る

 アスタキサンチンを世界で最も大量に生産しているのは、アスタフォーラムを支援する富士化学工業(本社:富山県)。

 ハワイ州マウイ島でバイオドームという半球状の透明容器でヘマトコッカスを培養しているBioReal社と、ヘマトコッカスをタンク培養しているスウェーデンAstaReal社を傘下にもち、世界のアスタキサンチン生産量の70%超を占めるという。

 アスタキサンチン配合商品も増えている。

 富士化学工業を母体として設立された健康食品企業ナチュリル社がサプリメント「アスタリール」を商品化したほか、ファンケル、サントリー、資生堂、コーセー化粧品などが配合サプリメントやドリンク、化粧品などを相次ぎ商品化している。

 富士化学工業は、アスタキサンチンがもつ多様な健康効用を一般に広く認知してもらうためにも、厚生労働省が安全性と効果を認定する特定保健用食品(トクホ)としての表示許可を、アスタキサンチンで取得したい考えだ。目指すトクホ表示は、「眼精疲労の緩和効果」。これまでに認められた食品がないため、ハードルは高いが、安全性の確認に必要なデータの収集と、ヒトで効果を検証する“エビデンス”データの蓄積を進めている。

 これまで蓄積された“エビデンス”をみても、サケの赤色色素、アスタキサンチンの市場拡大は確実。赤丸急上昇の機能性食品素材として注目していきたい。(河田孝雄)

■ 訂正 ■
 記事中、「20万人×500万円/人=1億円」とあるのは「20万人×500万円/人=1兆円」の間違いでした。お詫びして訂正いたします。(三和護、MedWave編集長)

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