2004.02.06

葉酸・ビタミンB群投与に脳卒中の再発予防効果なし−−VISP試験より

 脳卒中既往者3700人を対象とした北米とスコットランドの56施設共同無作為化試験で、高用量の葉酸とビタミンB6、ビタミンB12を併用しても、脳卒中や心血管疾患の2年再発率は低用量服用者と変わらないことが明らかになった。研究結果は、Journal of the American Medical Association(JAMA)誌2月4日号に掲載された。

 必須アミノ酸の一つであるメチオニンの代謝には、葉酸とビタミンB6、ビタミンB12の3種類の栄養素が欠かせない。これらが不足すると、中間代謝物のホモシステインの血中濃度が高くなる。複数の疫学研究から、血中ホモシステイン濃度が高い人では、脳卒中や心筋梗塞などの心血管疾患発症・再発リスクが高いことが判明。葉酸などの投与で血中ホモシステイン濃度を下げれば、心血管疾患を予防できる可能性があるとの期待が高まっていた。

 米国Wake Forest大学脳卒中研究センターのJames F. Toole氏らは、35歳以上の脳卒中既往者6860人の、血中ホモシステイン濃度を検査。ホモシステイン濃度が低い(下位25%)など、組み入れ条件に合わない人を除き、同意が得られた3680人を対象に「VISP」(the Vitamin Intervention for Stroke Prevention)試験を行った。

 主な組み入れ条件は、脳卒中発症後120日以上が経過しており、後遺症がなく、血中ホモシステイン濃度が低くないこと。試験参加者には、降圧治療やアスピリンの服用など、十分な脳卒中再発予防策を講じた上で、高用量または低用量の葉酸、ビタミンB6、ビタミンB12を連日服用してもらった。1日量は高用量群が葉酸:2.5mg、ビタミンB6:25mg、ビタミンB12:0.4mgで、低用量群が葉酸:20μg、ビタミンB6:200μg、ビタミンB12:6μg。

 対象者の平均年齢は66歳、4割弱が女性で8割が白人。試験開始時の血圧の平均値は141/78mmHgで、全体の4分の3が高血圧、3割が糖尿病を合併していた。試験開始時のホモシステイン濃度は平均13.4μmol/l。平均追跡期間は約20カ月だった。

 その結果、服用開始から1カ月で、高用量群のみ血中ホモシステイン濃度が2μmol/l低下し、追跡期間中は維持されることが判明。しかし、追跡期間中の脳卒中再発率や心血管イベント発症率、総死亡率には、両群で全く差は認められなかった。患者背景や服薬継続率で補正を加えても結果は変わらなかった。年齢(70歳以上か未満か)、性別、糖尿病などの合併の有無や、試験開始時の血中ホモシステイン濃度で分けた解析でも、高用量投与で脳卒中などの予防効果を示したサブグループはなかった。

 興味深いのは、「試験開始時の」ホモシステイン濃度と脳卒中再発率とに、明らかな関連がみられたことだ。過去の疫学研究で示唆されていた通り、もともとホモシステイン濃度が高かった人では、脳卒中の再発率が高いことが今回の試験でも確かめられた。だが、介入でホモシステイン濃度を下げても再発率に差が現れなかったわけで、以前から議論されていた「ホモシステインは真の危険因子ではなく単なるマーカーではないか」との疑いを再燃させる結果だ。

 研究グループは、葉酸・ビタミンB群投与で血中ホモシステイン濃度を2μmol/l程度下げても、少なくとも2年間は脳卒中再発予防効果が認められないと結論。試験開始時のホモシステイン濃度が高い(脳卒中再発リスクがより高い)人のみに絞った、より大規模・長期間の試験を実施して、予防効果が本当にないのかを確かめるべきと論じている。しかし、脳卒中患者のごく一部を対象とした大規模長期試験で統計学的に有意な差が仮に出たとしても、その結果を多くの患者に反映できないことは明らかで、「葉酸・ビタミンB群投与」という脳卒中再発予防戦略にはあまり大きな期待はできないだろう。

 この論文のタイトルは、「Lowering Homocysteine in Patients With Ischemic Stroke to Prevent Recurrent Stroke, Myocardial Infarction, and Death」。アブストラクトは、こちらまで。(内山郁子)

■ 参考トピックス ■
◆ 2004.1.13 腎機能低下例ではアポA1が減少、ホモシステインやCRPなどが増加−−NHANES3横断研究より

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