2004.01.30

ストロンチウム製剤が閉経後女性の脊椎骨折を予防、第3相試験結果がNEJM誌に掲載

 2002年11月の米国リウマチ学会(ACR)で発表され大きな話題となった、ストロンチウム製剤の第3相試験結果が、New England Journal of Medicine(NEJM)誌1月29日号に掲載された。脊椎骨折歴のある閉経後の骨粗鬆症女性1600人を対象としたプラセボ対象試験で、ラネリック酸ストロンチウム(予定商品名:Protos、海外で第3相試験、日本で第2相試験中)が脊椎骨折を3年で相対的に41%、有意に抑制することを示したもの。骨粗鬆症治療におけるストロンチウムの“復権”につながるデータで、今後の展開に注目が集まりそうだ。

 ストロンチウムは骨代謝に欠かせない微量元素の一つで、骨代謝の盛んな部位に集積する性質があり、ストロンチウムの放射性核種(Sr-89)は癌の骨転移の疼痛緩和薬として用いられている。一方、非放射性のストロンチウム製剤は1950年代に骨粗鬆症の治療薬として使われたが、期待された効果が得られず、長く忘れられた存在となっていた。

 その後、血中にカルシウムが十分にある状態では、ストロンチウムを投与しても活性型ビタミンD(カルシトリオール)の生合成は妨げられないことが判明。経口投与で十分な効果を発揮するラネリック酸ストロンチウムが開発され、骨形成の促進と骨吸収の抑制という二つの作用を持つ新しい骨粗鬆症治療薬として、臨床試験が進められていた。

 今回発表されたのは、欧州とオーストラリアの計12カ国で行われた、多施設共同の第3相試験結果だ。対象は、脊椎骨折の既往がある、閉経後の骨粗鬆症女性1649人。カルシウムとビタミンDの併用下で、プラセボまたはラネリック酸ストロンチウムを1日2g服用、3年間追跡して脊椎骨折の発生率などを比較した。解析は、組み入れ時以降の脊椎X線写真が揃っていた1442人(平均年齢:69歳、腰椎骨密度の平均Tスコア:−3.6)について行った。

 その結果、最初の1年間の脊椎新規骨折発生率は、ラネリック酸ストロンチウム群(719人)が6.4%と、プラセボ群(723人)の12.2%より有意に低いことが判明(相対リスク:0.51、95%信頼区間:0.36〜0.74)。3年間では順に20.9%と32.8%となり、脊椎の新規骨折発生率はラネリック酸ストロンチウム群で相対的に41%有意に低くなった(相対リスク:0.59、95%信頼区間:0.48〜0.73)。

 また、骨密度に関しては、プラセボ群では3年間に渡り軽度の減少が続き、ラネリック酸ストロンチウム群ではほぼ直線的に有意に増加した。プラセボ群とラネリック酸ストロンチウム群の骨密度の差(組み入れ時からの各群の変化率の和)は、3年間で腰椎が14.4%、大腿骨頚部が8.3%、股関節が9.8%に達した。

 服薬継続率は、ラネリック酸ストロンチウム群(83%)とプラセボ群(85%)とでほぼ同じ。副作用は主に消化器系で、最も多かったのは下痢(順に6.1%、3.6%)だった。

 以上から研究グループは、ラネリック酸ストロンチウムの脊椎骨折予防効果は、ビスホスホネート製剤や選択的エストロゲン受容体調整薬(SERM)など既存の骨粗鬆症治療薬にほぼ匹敵すると結論。副甲状腺ホルモン(PTH)製剤では立証されなかった(関連トピックス参照)、既存薬との相乗効果も期待できるとした。

 同薬は現在、5000人以上の閉経後女性を対象に、大腿骨頚部など脊椎以外の部位の骨折予防効果を評価する第3相試験が進められている。ストロンチウム製剤が骨粗鬆症治療においてどのように位置付けられるかは、大腿骨頚部骨折に対する予防効果や、他薬との併用効果に関する試験成績を待つ必要があるだろう。

 この論文のタイトルは、「The Effects of Strontium Ranelate on the Risk of Vertebral Fracture in Women with Postmenopausal Osteoporosis」。アブストラクトは、こちらまで。(内山郁子)

■ 関連トピックス ■
◆ 2003.9.22 PTHによる骨粗鬆症の治療、ビスホスホネート製剤との「相乗効果」なし−−2臨床試験が米で学会発表

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