2004.01.26

喘息増悪時の「吸入ステロイド倍量」戦略、臨床的意義に疑問符

 吸入ステロイドでよくコントロールされている390人の喘息患者を対象に行われた英国のプラセボ対照試験で、急性増悪時に吸入ステロイドを倍量にしても、「経口ステロイドを要するほどの増悪」は防げないことがわかった。朝のピークフロー値や日中の症状スコアの経時変化も、倍量にした群と通常量を続けた群とで変わらなかったという。研究結果は、Lancet誌1月24日号に掲載された。

 喘息のコントロールに吸入ステロイドが有用であることは既に確立しているが、急にピークフロー値が落ちたり、症状が悪くなった時に、吸入ステロイドの量をどうするかについては結論が出ていない。臨床現場では、急性増悪時に吸入ステロイドを倍量にするよう指示する医師も少なくないが、その臨床的な意義については明らかではなかった。

 英国Nottingham市立病院David Evans研究センターのT. W. Harrison氏らは、吸入ステロイドによるコントロールがうまくいっているが、過去1年に1回以上急性増悪を起こしたことがある喘息患者390人を対象に、「倍量戦略」の意義を調べる臨床試験を実施。対象患者を無作為に2群に分け、実薬またはプラセボを配布して、1.朝のピークフロー値が15%以上低下、2.日中の症状スコアが低下−−のいずれかが起こったら、普段の吸入ステロイドに加え配布された薬を2週間、普段と同じ量だけ吸入するように指示した。これで、急性増悪時に実薬群では倍量、プラセボ群では普段と同じ量だけ、吸入ステロイドを使うこととなる。

 対象者の平均年齢は、実薬群(192人)が50歳、プラセボ群(198人)が48歳、女性比率は順に64%と71%。試験開始時の努力呼気1秒量予測値(%FEV1)は順に79%と81%、ピークフロー値は順に382ml/分、386ml/分で、吸入ステロイドの1日量(プロピオン酸ベクロメタゾン=BDP換算)は順に708μg、711μgだった。慢性閉塞性肺疾患(COPD)の合併者を除外するため、長期喫煙者は対象から除いており、現喫煙者(短期喫煙者)は実薬群の4%、プラセボ群の3%だった。こうした患者背景に群間の差はなかった。

 1年間追跡したところ、全体の半数にあたる207人(53%)が配布薬を使用。全体の12%は、症状やピークフローの改善に経口ステロイドを要した。しかし、経口ステロイドを要した人の比率は、実薬群の11%、プラセボ群の12%となり、両群に差は認められなかった(相対リスク比:0.95、95%信頼区間:0.55〜1.64)。

 また、二次評価項目であるピークフロー値や症状スコアの経時変化も、実薬群とプラセボ群とにほとんど差が認められず、両群ともほぼ2週間で測定値がほぼ元の水準に戻った。このことは、急性増悪の気配を感じた時点(朝のピークフロー値の15%低下または日中の症状悪化)から吸入ステロイドを倍量にしても、症状の推移は吸入ステロイド量を増やさなかった場合と変わらず、多くの場合はだいたい2週間で回復することを示唆している。

 以上から研究グループは、急性増悪時に、早めに吸入ステロイド量を倍量にしても、経口ステロイドを要するような増悪の予防にはつながらないと結論。「4倍量」など小規模の試験で示唆されている他の戦略に関しても、大規模な試験で臨床的な意味があるかどうかを確認すべきとしている。

 この論文のタイトルは、「Doubling the dose of inhaled corticosteroid to prevent asthma exacerbations: randomised controlled trial」。アブストラクトは、こちらまで。(内山郁子)

■ 参考トピックス ■
◆ 2003.4.3 軽症持続型喘息への低用量吸入ステロイド、発症早期からの開始で急性増悪発作を4割減−−「START」研究

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