2004.01.23

【専門記者の目】 2大勢力が君臨する健康マヨネーズ市場 トクホ・マヨネーズの花王は覇者になれるのか

 年間市場が金額ベースで600億円規模といわれる日本の家庭向けマヨネーズ市場で、健康訴求タイプ(健康マヨネーズ)が急増していることが、マヨネーズ最大手のキユーピーの市場分析によって浮き彫りになった。

 マヨネーズは特売品として極端な安値で売られることも多いため、金額として市場を把握するのは難しい。キユーピーは、数量ベースで市場を分析、このほど2003年の集計結果を公表した。


コレステロール訴求型は、4年前の13倍に急増

 まず、健康マヨネーズの販売数量は2003年に2万5000トン強と、マヨネーズ市場全体の2割近くを占めるまでに増えたとキユーピーは分析。

 さらに健康マヨネーズ市場を、1.カロリー訴求型、2.コレステロール訴求型−−の二つに分類して販売数量の推移を分析した。

 それによると、コレステロール訴求型は、2003年は4000トン弱と、2002年比2.5倍に急増した。もともと数量の多いカロリー訴求型は、2003年に2万1000トン強と、2002年比約9%増だった。

 2003年の販売数量を1999年と比べると、コレステロール訴求型は13倍、カロリー訴求型は2倍に拡大した。

マヨネーズ初のトクホ「エコナ」は、「体に脂肪がつきにくい」表示を開始

 カロリー訴求型には、花王が2002年9月に発売した「エコナ マヨネーズタイプ」が含まれる。

 「エコナ マヨネーズタイプ」は、大さじ1杯分15gのカロリーが98kcalと、通常のマヨネーズと変わらないが、製品の7割を占める油脂として、「健康エコナ クッキングオイル」を使用しているため、食べても体脂肪になりにくい。

 2003年10月に、「『体に脂肪がつきにくい』のが特長。体脂肪が気になる方におすすめ」と商品に表示できる許可を厚生労働省から取得、マヨネーズで初のトクホ(特定保健用食品)になった。

 ここで、商品を「マヨネーズタイプ」としているのは、農林水産省が定めるJAS規格上の「マヨネーズ」に該当していないためだ。

 油脂の配合量は7割程度と、普通のマヨネーズと同程度だが、「健康エコナ」はジアシルグリセロールという油脂が主成分。

 一方、普通のマヨネーズには植物油と同じくトリアシルグリセロールが配合されている。「マヨネーズ」と表記するには、トリアシルグリセロールを主体としなければならず、このため、「健康エコナ」を使用したマヨネーズは「マヨネーズ」ではなく「マヨネーズタイプ」に分類される。

 「体に脂肪がつきにくい」というトクホ表示をした「エコナ マヨネーズタイプ」は2003年12月上旬から順次、店頭に登場している。トクホ表示による差異化で売り上げを伸ばし、2004年は金額ベースのシェアで10%到達を目指している。

 トクホではないが、この「エコナ マヨネーズタイプ」に対抗するカロリー訴求型のマヨネーズは、マヨネーズに配合する油脂の量を通常の半分に減らした「ハーフ」と呼ばれる商品。

 キユーピー「キユーピーハーフ」と、味の素「ピュアセレクト ハーフ マヨネーズタイプ」が店頭によく並んでいる。

 油脂の配合量が半分なので、カロリーもほぼ半分。摂取エネルギーを控えたいヒトにはうれしいマヨネーズといえる。

 味の素は、一段とカロリーを抑えた「ピュアセレクト スーパーローカロリー カロリー70%カット」も商品化している。

 なおこれらの商品も、油脂の配合量が少ないという理由でJAS規格の「マヨネーズ」には該当せず、「マヨネーズタイプ」と呼ばれる。

 当然、配合する油脂の量を減らした分、別の素材を加えないと低カロリー・マヨネーズをつくれない。どんな素材を加えれば、味わいが普通のマヨネーズに近くておいしいものを実現できるかを、キユーピーや味の素が競っている。

 キユーピーは、「キユーピーハーフ」を2004年2月にリニューアルする。コクを高め、キユーピーマヨネーズのおいしさにさらに近づけるとともに、健康感と商品コンセプトを明確に伝える「健康にカロリー半分」のキャッチコピーを目立たせたパッケージに変更する。

油脂分が少ないマヨネーズは、食後の中性脂肪を上げにくい

 「ハーフ」陣営を元気付ける“エビデンス”も出ている。

 油脂の配合量が少ないマヨネーズは、普通のマヨネーズに比べて、食後に血中の中性脂肪濃度(TG値)を上げにくいことがわかったからだ。

 お茶の水女子大学の近藤和雄教授(生活環境研究センター長)らと防衛医科大学第一内科のグループは、実際にヒト試験を行い、この効果を実証した。

 空腹時TG値が120mg/dl以上と高めの健常男性14人に12時間絶食後、マヨネーズ15gをレタス10gとともに摂食してもらい、食後6時間までTG値の変化を調べた。

 すると、血清TG、カイロミクロンTGとも、「ハーフ」を食べた場合は、通常のマヨネーズを食べた場合に比べ上昇が抑えられた。

 なお、近藤教授らは、花王「健康エコナ」と同じく、ジアシルグリセロールが主成分の油脂を配合したマヨネーズについても比較試験を行った。その結果、ジアシルグリセロールのマヨネーズは、通常のマヨネーズよりも食後TG値が上昇するとの結果が得られた。

 このヒト試験の成果は、2003年10月に横浜市で開かれた日本臨床栄養学会・日本臨床栄養協会で発表された。

 同学会では、健常男女43人にマヨネーズ様食品を摂食してもらう試験で、ジアシルグリセロールのマヨネーズは、通常のマヨネーズに比べ、食後TG値の上昇度合いが少なかったという成果を、花王ヘルスケア第一研究所が発表した。

 健康マヨネーズ市場の動きは活発で、花王が健康油で成功したパターンで健康マヨネーズ市場を制することができるかどうかが注目される。

 現在のトクホ制度では、健康に良い成分を強化した食品のみ、トクホ表示が認められる。したがって、配合する油脂の量を減らした「ハーフ」は、トクホ表示の対象とはならず、食後TG値が上がりにくいという健康に良い機能を、消費者に直接伝えることができない。

 これに対し、現在のところ唯一のトクホ・マヨネーズである花王「エコナ マヨネーズタイプ」は、トクホ表示で「体に脂肪がつきにくい」という特長を明確に伝えられる点で、「ハーフ」に比べて優位に立っている。

 ただし、「ハーフ」は2004年2月にキユーピーが新製品を発売するように、年々、味の改良が進んでいる。価格も、「エコナ」に比べて4割ほど安い点も強みになる。

 消費者の健康志向にマッチして販売量を増やしてきた「ハーフ」は、トクホ表示の「エコナ」が店頭に登場しても、人気は引き続き高まりそうだ。

 それを後押しするには、近藤教授らのヒト試験の実験成果が広く知られるように工夫することもポイントになるだろう。

 こうして見てくると、健康油「エコナ」でトップシェアを獲得した花王も、キユーピー、味の素という2大勢力が君臨する健康マヨネーズ市場で覇者となるのは、一筋縄ではいかないのではないか。
(河田孝雄)

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