2004.01.23

【ヘルスケア2004】 特別講演 介護保険見直し、効率化、適正化を図りながらサービスの質的向上を目指す

 「給付引き下げは主たる論点ではないが、効率的な運営と給付の適正化を図りながらサービスの質的向上を目指す」。介護保険制度は、開始5年目に当たる2005年度を目途に、厚生労働省社会保障審議会介護保険部会では現在、大詰めの議論が行われている。同部会委員で構想段階から介護保険制度の策定にかかわってきた日本社会事業大学長の京極高宣氏は、1月21日に開催されたヘルスケアフォーラム2004の特別講演で、最終段階に入った制度改正の全容と狙いを明らかにした。

 厚生労働省の社会保障審議会介護保険部会では、2005年4月1日の改正介護保険法施行に向け、この3月にも議論を集約して6月にも答申をまとめる。以後は改正法案策定に軸足を移し、2005年2月の通常国会での法案通過を目指す。

 京極氏は、介護保険制度によって、多くの企業が介護サービスに進出し、在宅介護も量としては増えたと評価する。しかし、「介護保険サービスの安直な使い方をするケースも目立ってきた。利用を抑制するつもりはないが、要介護度の悪化を防ぐ努力やサービスの適正な運用を図る必要がある」と指摘する。改正の軸となるのが、1.市町村の保険者機能の強化、2.給付の質的向上と効率化、3.負担の公平化、4.地域包括ケア化推進の4点だ。

 市町村の保険者機能強化は、リハビリテーションや健康増進活動などと連係した介護保険制度の運用を可能にする狙いがある。現行制度では、事業活動に対する調査権やレセプトに対する支払い拒否権などがなく、権限が十分とは言えなかった。こうした権限を市町村に与え、住民の顔が見える介護保険の担い手としての役割を強化する方向だという。

 給付の質的向上と効率化は課題が多い。多彩な介護メニューの設定などケアマネジャー機能の強化もその一つだという。このため、ケアプランの質的評価を単価に反映するなどの改正を進める。痴呆性高齢者介護サービスの充実も懸案になっている。ノウハウはあるものの体系化が不十分であり、仙台、東京、大府に設置された痴呆性高齢者介護の研究・研修センターの研究成果を今後、都道府県や市町村に還元していくという。

 要支援や軽介護度の利用者に対しては、介護度が重くならないようにする努力を義務付けたり、特別養護老人ホームへの入所基準を作って緊急性のある重度要介護者から入所ができる仕組みを強化するなど、利用の適正化を図っていく方向だ。住宅改修や福祉用具で対応できる場合には、ヘルパー派遣を減らすといった対応も図る。「(市町村の)財政には限りがあり、要介護者の在宅化を進めていかないと、自分の首を絞めることになる」(京極氏)という。

 3番目の公正な負担では、在宅者と施設入所者の格差解消と低所得層への対応に焦点を当てる。個室入所のホテルコスト一部負担や生活保護者の介護保険料支払いなどについて、改正を実施する方向だ。

 4番目の論点である地域包括ケア化の推進は、地域の高齢者介護の全体像と介護保険制度のかかわりを論じるものだ。京極氏は、介護保険だけで高齢者ケアができるわけではなく、医療との関係や配食、介護保険で対応できない住宅改修、移送サービスなどをボランティア活動も含め、地域の実情に即して展開すべきだと指摘する。「介護保険を軸として、市民が参加し、総合的な福祉の街作りをすべきだ。それぞれの地域の介護保険のあり方を模索していってほしい」と訴えていた。(中沢真也)

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