2004.01.22

「ハーセプチン」にHER2発現NSCLC治療への上乗せ効果なし

 上皮細胞成長因子受容体(EGFR)の一つであるHER2蛋白の、過剰発現が確認された非小細胞肺癌(NSCLC)患者を対象とした臨床試験で、標準治療に「ハーセプチン」(一般名:トラスツズマブ)を追加投与しても、治療効果に差が現れないことがわかった。欧州とカナダで行われた無作為化第2相試験の結果で、Annals of Oncology誌1月号に掲載された。

 HER2は、乳癌などの腺癌に過剰発現がみられる蛋白。トラスツズマブはHER2に対する分子標的薬(抗HER2抗体)で、わが国ではHER2陽性の転移性乳癌の治療薬として2001年から販売されている。HER2の過剰発現はNSCLCや大腸癌など乳癌以外の癌にも認められるため、ほかのHER2過剰発現癌にも有効なのではないかと期待されていた。

 ドイツGrosshansdorf病院のU. Gatzemeier氏らは、ドイツ、オランダ、イタリアとカナダの4カ国の医療機関を受診した、病期3B〜4の進行NSCLC患者619人のHER2発現状態を検査。過剰発現(2+または3+)が認められた103人を無作為に2群に分け、標準治療または標準治療+トラスツズマブ投与を行って予後を比較した。標準治療としては、ゲムシタビンとシスプラチンを用いた。評価症例は101人。

 その結果、奏効率はトラスツズマブ追加群(51人)で36%と、標準治療群(50人)の41%と変わらないことが判明。無進行生存期間(PFS)の中央値も、6.1カ月対7.0カ月で変わらなかった。

 ちなみに、103人中6人はHER2が強陽性(3+または2+かつ蛍光in situ ハイブリダイゼーション法=FISHで陽性)だったが、この6人では奏効率が83%、PFS中央値が8.5カ月となり、追加投与による延命効果が期待できる水準となった。しかし、たった6人では確とした結論は出せない。HER2が強陽性だった人はNSCLC患者全体(619人)からみるとわずか1%で、HER2が3+の人だけを集め十分な検出力を持った試験を行うのは、この数字を見ると現実には難しいと言わざるを得ない。

 論文に対する論説では、メシル酸イマチニブ(商品名:グリベック)など他の分子標的薬も、臨床試験ではNSCLCに対する治療効果を示せなかったことに言及。NSCLCでは、過状発現している分子がよい標的にはならない場合があると論じている。

 この論文のタイトルは、「Randomized phase II trial of gemcitabine?cisplatin with or without trastuzumab in HER2-positive non-small-cell lung cancer」。アブストラクトは、こちらまで。(内山郁子)

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