2004.01.22

メマンチンのFDA承認根拠試験がJAMA誌に掲載、中等度〜重度のアルツハイマー病治療に上乗せ効果

 昨年10月に米国食品医薬品局(FDA)が初の重度アルツハイマー病治療薬として承認(関連トピックス参照)、先週から米国で発売された、塩酸メマンチン(米国での商品名:Namenda)のFDA承認根拠試験の一つが、Journal of the American Medical Association(JAMA)誌1月21日号に掲載された。既に塩酸ドネペジル(商品名:アリセプト)治療を半年以上受けている中等度〜重度のアルツハイマー病患者400人を対象に、プラセボ対照で上乗せ効果を確認したもの。

 塩酸メマンチンは、記憶や学習に関与する神経伝達物質であるグルタミン酸の受容体の一つ、N-メチル-D-アスパラギン酸(NMDA)受容体に対する拮抗薬。神経伝達物質アセチルコリンの分解酵素を阻害する、塩酸ドネペジルとは作用機序が異なり、小規模のオープン試験で両薬の併用による上乗せ効果が示唆されていた。

 対象は、ミニ・メンタル・ステート(MMSE)検査のスコアが5〜14点で、症状と磁気共鳴イメージング(MRI)からアルツハイマー病と診断されており、既に塩酸ドネペジル治療を半年以上受けている50歳以上の404人(一人は割り付け後に臨床試験への同意を撤回)。無作為に2群に割り付け、塩酸ドネペジルの服用を続けながら、プラセボまたは塩酸メマンチン(1日5mgから20mgまで8週で漸増)を24週間追加服用した。

 対象者の平均年齢は76歳、3分の1が男性で、9割強が白人。組み入れ時のMMSEの平均スコアは10点で、平均するとそれまでにおよそ2年半、塩酸ドネペジル治療を続けていた。4分の3が塩酸ドネペジル以外に何らかの薬やサプリメントを服用しており、ビタミンEやC、マルチビタミン、アスピリン、アセトアミノフェン、イチョウ葉エキス、カルシウムなどの併用が多かった。

 一次評価項目は、SIB(Severe Impairment Battery、高度痴呆患者向けの認知機能評価指標)と、ADAS-ADL19(アルツハイマー病患者向けに改変された日常生活動作=ADLの指標)の、組み入れ時から24週後までの変化幅。試験期間中、プラセボ追加群(201人)の25%、塩酸メマンチン追加群(202人)の15%が脱落したが、評価は脱落者の最終評価時のスコアを外挿するLOCF(Last Observation Carried Forward)形式で行った。

 その結果、プラセボ追加群ではSIBスコア(0〜100点、高得点ほど認知機能が高い)が当初の80.0点から2.5点低下したのに対し、塩酸メマンチン追加群では当初の78.0点から0.9点上昇しており、認知機能の低下が有意に食い止められていることが判明(p<0.001)。ADAS-ADL19(0〜54点、高得点ほどADLが良好)は両群とも低下したが、低下幅は塩酸メマンチン追加群で有意に少なかった(−3.4点対−2.0点、p=0.03)。

 副作用はプラセボ追加群の72%、塩酸メマンチン追加群の78%に発現。不穏、混乱、転倒、めまい、頭痛などが主なもので、大半は軽度〜中等度のものだった。塩酸メマンチン追加群で特に多かった(プラセボ群の2倍以上生じた)副作用は、混乱(7.9%)と頭痛(6.4%)だった。副作用による試験からの脱落率は、プラセボ追加群が12.4%、塩酸メマンチン追加群が7.4%で、塩酸メマンチン群で低い傾向がみられた。

 今回得られたデータが示唆するのは、既に塩酸ドネペジル治療を長く受けている、中等度〜重度のアルツハイマー病患者でも、塩酸メマンチンの追加投与で少なくとも半年は治療効果の増強が期待できるということ。しかし、統計学的には有意な差があるとはいえ、「目を見張るほどの効果」というほどでもないことも事実だ。現実には、重度にまで進行したアルツハイマー病患者では「いつまで治療を続けるか」も大きな課題で、今回の結果は希望とともに新たな悩みをもたらすかもしれない。

 この論文のタイトルは、「Memantine Treatment in Patients With Moderate to Severe Alzheimer Disease Already Receiving Donepezil」。アブストラクトは、こちらまで。(内山郁子)

■ 関連トピックス ■
◆ 2003.10.22 新規アルツハイマー病治療薬メマンチンが米で承認、「重度」への適応は初

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