2004.01.16

心筋梗塞後心不全のほぼ半数で収縮能が維持、前向き観察試験で明らかに

 急性心筋梗塞3166人を対象としたデンマークの観察研究から、心筋梗塞後に心不全を呈した患者のうち、49.5%は収縮機能が維持されていることがわかった。しかし、それらの収縮機能維持心不全例でも、死亡リスクは心不全非発生例に比べて2倍以上増加していたという。デンマークOdense大学病院のJacob Eifer Moller氏らによる報告で、European Journal of Heart Failure12月号に掲載された。

 同氏らが追跡したのは、デンマーク33施設に急性心筋梗塞で入院した連続3326人中、心筋梗塞発症6日以内に心エコーを施行できた3166人だ。

 その結果、入院後12時間以内に1136人がKillip分類2度以上の心不全発症あるいは心不全治療が必要となり、さらにその後313人が入院中に心不全を発症した。

 これら心不全発症1449人を左室機能別に見ると、732人では左室収縮能が低下(壁運動スコア1.3未満:左室駆出率40%未満に相当)していたが、残る717人の左室収縮能は維持されていた(壁運動スコア1.3以上)。収縮機能が維持されている717人中、167人の壁運動は全く正常だった(壁運動スコア2.0)。

 背景因子を比較すると、収縮機能が維持された心不全例では「高血圧既往」(32%対25%)と「下壁梗塞」(33%対18%)が収縮能低下心不全例より有意に多かった。一方、「心筋梗塞既往」「前壁梗塞」「脚ブロック」は有意に少なく、「MB型クレアチニンキナーゼのピーク値(ピークCK-MB)」も有意に低かった。

 次に死亡率(追跡期間中央値34カ月)を単純比較すると、追跡開始1年、3年後の死亡率は、心不全非発症患者では順に6%、13%だったが、収縮能低下心不全患者では35%、53%と有意かつ著明に高かった。さらに、収縮能が維持された心不全患者でも、同様に22%、37%と高い死亡率が認められた(いずれも心不全非発症例との差はp<0.00001)。

 しかし、退院時の背景因子には合併症やリスク、服用薬にばらつきがある。そこで研究グループは、それらの因子すべてで補正した死亡リスクを算出した。すると、やはり収縮能維持心不全患者の死亡リスクは、心不全非発症例の2.10倍(95%信頼区間:1.74〜2.55)に有意に増加していた(p<0.0001)。

 左室収縮能が保たれているにもかかわらず心不全例の生命予後が悪い理由について、Moller氏らは、拡張障害に伴う左室充満圧の上昇と、それを代償するよう活性化する神経体液性因子の関与を示唆している。

 なお、この論文は昨年7月にアクセプトされているため「収縮機能維持心不全に対する至適治療は不明」と結論しているが、昨年9月には収縮機能維持心不全患者に対する−−心筋梗塞後のみを対象としたものではないが−−アンジオテンシン2(A2)受容体拮抗薬の「入院減少作用」を示した「CHARM Preserved」試験(Candesartan in Heart failure -- Assessment of Reduction in Mortality and morbidity、関連トピックス参照)が報告されている。

 この論文のタイトルは、「Congestive heart failure with preserved left ventricular systolic function after acute myocardial infarction: clinical and prognostic implications」。アブストラクトは、こちらまで。(宇津貴史、医学レポーター)

■ 関連トピックス ■
◆ 2003.9.5 ESCで発表の3臨床試験「CHARM」「EUROPA」「ESTEEM」、原著論文がLancet誌HP上で早期公開

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