2004.01.16

肥満治療薬オルリスタットが肥満者の2型糖尿病発症を予防−−XENDOS試験より

 体格指数(BMI)が30以上の肥満者3300人を対象としたスウェーデンのプラセボ対照試験で、強力な生活指導のみを受けた群よりも、強力な生活指導に加え肥満治療薬のオルリスタット(海外での商品名:Xenical、わが国では第2相試験中)を服用した群の方が、2型糖尿病の4年発症率が4割低いことがわかった。糖尿病治療薬に2型糖尿病ハイリスク者の発症予防効果があることは複数の臨床試験で示されているが、肥満治療薬に同程度の効果があることがわかったのは初めて。研究結果は、Diabetes Care誌1月号に掲載された。

 この臨床試験「XENDOS」(XENical in the prevention of Diabetes in Obese Subjects)の対象は、BMI30以上の肥満がある30〜60歳の男女3277人。無作為に2群に分け、全員に強力な生活指導を行った上で、オルリスタット(1日量120mg)またはプラセボを服用してもらった。

 対象者の平均年齢は43歳、女性が55%で、平均体重は110kg、平均BMIは37。全体の2割には、組み入れ時に耐糖能異常(IGT、75gブドウ糖負荷試験=OGTTの2時間値が140〜200mg/dl)があった。4年間の試験の完遂率は、生活指導+オルリスタット群(1640人)が52%、生活指導+プラセボ群(1637人)が34%と低く、しかも有意な差があった(p<0.0001)が、解析は脱落者も含めたITT(intent to-treat)形式で行った。なお、主な脱落理由は、被験者が続行を拒否(順に14%対20%)、介入効果が不十分(8%対19%)などだった。

 その結果、4年間の累積2型糖尿病発症率は、生活指導+オルリスタット群が6.2%で、生活指導+プラセボ群の9.0%より有意に低いことが判明。強力な生活指導にオルリスタットを追加することで、2型糖尿病の発症を相対的に37.3%、有意に抑制できることがわかった(p=0.0032)。減量効果は両群とも開始1年後がピークだったが、4年後の時点でも、生活指導+オルリスタット群の方が減量幅が大きかった(5.8kg対3.0kg、p<0.001)。

 組み入れ時にIGTがあった694人に対するサブ解析では、2型糖尿病の4年発症率にさらに大きな差が現れた。IGT者のうち、生活指導+プラセボ群に割り付けられた344人では28.8%が2型糖尿病を発症したが、生活指導+オルリスタット群に割り付けられた350人の発症率は18.8%で、相対的に45%低かった(p=0.0024)。一方、組み入れ時に耐糖能異常がなかった(NGT)人では、2型糖尿病の4年発症率にプラセボ群とオルリスタット群との間で差は認められなかった(2.7%対2.6%)。オルリスタット群のIGT者とNGT者の減量幅に差はなかった(5.7kg対5.8kg)。

 肥満や過体重にIGTを合併した人に対する2型糖尿病予防試験では、αグルコシダーゼ阻害薬のアカルボース(わが国での商品名:グルコバイ)が3年余で33%(関連トピックス参照)、ビグアナイド系薬のメトホルミン(わが国での商品名:メルビン、グリコランなど)が3年弱で31%(関連トピックス参照)、2型糖尿病の発症を予防することが示されている。

 しかし、これらの試験の“対照群”にはパンフレット配布などの標準的な生活指導しか行われておらず、「両群ともに強力な生活指導を行った上で、実薬の追加で2型糖尿病の発症予防効果を示した試験は今回が初めて」と研究グループは強調する。ちなみに、メトホルミンを用いた「DPP」(Diabetes Prevention Program)試験のサブ解析では、予防効果の主因が“減量”であることが示唆されている(関連トピックス参照)。

 オルリスタットは、消化管酵素のリパーゼを阻害することで、食事中の脂肪の吸収を抑える薬。昨年12月に発表された米国予防医療専門委員会(USPSTF)のガイドライン(関連トピックス参照)では、ある程度の減量を2年程度は維持できるが、長期成績が不明などの理由で「他の治療法と組み合わせてのみ使用すべき」と位置付けられている。

 今回得られたデータは、同ガイドラインが肥満治療法として推奨する「強力な生活指導」にオルリスタットを組み合わせることで、IGTを合併した高度肥満者に対する2型糖尿病の予防効果がかなり高まることを示したもの。発症機序における人種差(高度肥満例が比較的少ない)には留意すべきだが、糖尿病患者数が急増しているわが国(関連トピックス参照)でも、「IGT段階からの介入」に一層の注目を集めるものとなりそうだ。

 この論文のタイトルは、「XENical in the Prevention of Diabetes in Obese Subjects (XENDOS) Study」。アブストラクトは、こちらまで。(内山郁子)

■ 関連トピックス ■
◆ 2002.6.19 STOP-NIDDM試験の原著論文がLancet誌に掲載、αグルコシダーゼ薬がIGT者の糖尿病発症を予防
◆ 2002.2.13 生活指導やビグアナイド系薬でハイリスク者の糖尿病発症が抑制−DPP試験より
◆ 2002.9.5 EASD学会速報】2型糖尿病の発症予防の鍵は「減量」、1kgやせればリスクが13%低下−−DPP試験より
◆ 2003.12.3 USPSTFが肥満スクリーニングGLを策定、外来での肥満成人スクリーニングと介入を推奨
◆ 2003.8.8 糖尿病が疑われる人は約1620万人、実態調査による試算

Information PR

ログインしていません

Close UpコンテンツPR

ログインしていません

もっと見る

人気記事ランキング

  1. JCHO東京高輪病院で感染症内科医7人一斉退職 2017年4月から、ほぼ全科で土曜休診に FBシェア数:651
  2. アルツハイマー治療薬開発が進まない理由 理化学研究所神経蛋白制御研究チームシニア・チームリーダーの西道隆臣氏に聞く FBシェア数:191
  3. 70歳代男性。便潜血反応陽性 日経メディクイズ●内視鏡 FBシェア数:1
  4. 「救急医にはアイデンティティーがない」の呪い 薬師寺泰匡の「だから救急はおもしろいんよ」 FBシェア数:175
  5. 75歳女性。構音障害、左共同偏視 日経メディクイズ●心電図 FBシェア数:0
  6. 57歳男性。両下腿から足背の浮腫と紫斑 日経メディクイズ●皮膚 FBシェア数:0
  7. 高齢糖尿病のコントロール指標はHbA1cだけでは… 学会トピック〇第59回日本老年医学会/第30回日本老年学会 FBシェア数:289
  8. 広がる中学生のピロリ検診・除菌 ニュース追跡◎エビデンス乏しく副作用の懸念も FBシェア数:549
  9. なんでこんな検査を定期健診に入れている? 記者の眼 FBシェア数:227
  10. 酸素療法で飛んで行ったメガネ 倉原優の「こちら呼吸器病棟」 FBシェア数:103