2004.01.14

花粉症の悪化に“大気汚染への感受性”が関与−−米研究

 ブタクサに対する花粉症がある19人の協力で行われた米国の研究で、ブタクサ花粉を鼻から吸い込んでからディーゼルエンジンの排気(ディーゼル微粒子)を吸い込むと、ブタクサ花粉だけの時よりもアレルギー反応が強く出ることがわかった。しかも、「大気汚染に弱い遺伝子」を持っている人では、より激しい反応が現れたという。研究結果は、Lancet誌1月10日号に掲載された。

 ディーゼルエンジンから排出される微粒子状物質には、動物実験で、アレルギーの原因物質(アレルゲン)の働きを増強する作用があることが確かめられている。例えば花粉症がある人なら、大気汚染が激しい地域に行くと、症状がひどくなる可能性があるわけだ。ただし、大気汚染に対する感受性には個人差がある。

 この個人差に関連する遺伝子として、最も有力だと考えられているのが、グルタチオン抱合酵素(グルタチオン-S-トランスフェラーゼ、GST)の遺伝子。そこで、米国南California大学予防医学部門のFrank D. Gilland氏らは、GSTの遺伝子型の違いにより、ディーゼル微粒子による花粉症悪化度にどのような差が現れるかを調べた。

 実験に協力したのは、ブタクサに対する花粉症がある、20〜30歳台の男女19人。鼻からブタクサ花粉のみ、またはブタクサ花粉の後にディーゼル微粒子を吸い込んで、アレルギー反応がどの程度強く出るかを検査した。アレルギー反応の強さは、血中のブタクサ花粉特異的免疫グロブリンE(IgE)値とヒスタミン値で評価した。遺伝子型については、GSTのうちGSTM1、GSTT1、GSTP1の3種類について調べた。

 その結果、ほとんど全員で、花粉のみの時よりも花粉の後にディーゼル微粒子を吸い込んだ時にアレルギー反応が強く出ることが判明。ところが、GSTM1の遺伝子型が野生型の人や、GSTP1の遺伝子型がV型(GSTP1の105番目のアミノ酸がバリン)の人では、ディーゼル微粒子による“増悪効果”が弱かった。逆に、GSTP1の遺伝子型が欠損型、あるいはGSTP1の遺伝子型がI型(105番目のアミノ酸がイソロイシン)の人では、ディーゼル微粒子を後から吸うと、花粉に対するアレルギー反応が大幅に増強された。なお、GSTT1に関しては、野生型と欠損型でアレルギー反応への違いはなかった。

 今回の研究結果が示唆するのは、花粉症患者ではディーゼル微粒子を吸い込むことで花粉へのアレルギー反応が高まるが、大気汚染に敏感な体質の人では、アレルギー反応が一層強く出るということ。研究グループは、他の“解毒酵素”に対しても遺伝子型の違いによるアレルギー反応の差を調べ、将来的にはこれらの解毒酵素の作用を補う、新しいコンセプトのアレルギー治療薬を開発したいと考えている。

 この論文のタイトルは、「Effect of glutathione-S-transferase M1 and P1 genotypes on xenobiotic enhancement of allergic responses: randomised, placebo-controlled crossover study」。アブストラクトは、こちらまで。なお、この研究は、米国国立衛生研究所(NIH)の関連機関である米国アレルギー感染症研究所(NIAID)の助成研究で、NIAIDがプレス・リリースを発表している。(内山郁子)

■ 参考トピックス ■
◆ 2003.11.11 大気汚染がひどい日は心臓発作にご用心、大気中の微粒子量と強い相関

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