2004.01.12

腎機能低下例ではアポA1が減少、ホモシステインやCRPなどが増加−−NHANES3横断研究より

 昨今、心イベントの危険因子として注目されている腎機能低下だが(関連トピックス参照)、Annals of Internal Medicine誌1月6日号では、この腎機能低下が、心疾患の非古典的な危険因子と関連しているとの報告が行われた。米国Tulane大学のPaul Muntner氏らによる検討結果で、腎機能軽度低下例では血清中の「アポプロテインA1(アポA1)の減少」や「C反応性蛋白(CRP)の増加」など、最近着目されている危険因子の増加が認められたという。

 この検討は、米国の大規模疫学研究である「米国健康栄養調査」の第3回調査(NHANES3)データを用いた横断研究。18歳以上で血清クレアチニン値を測定していた1万6495人から腎不全24人を除外した1万6471人を、腎機能で3群に分け、心血管疾患の危険因子を比較した。腎機能の指標には、血清クレアチニン値から求めた糸球体濾過率(GFR)を用いた。腎機能がほぼ正常だと考えられる「90ml/分/1.73m2以上」は1万2537人、軽度低下の「89〜60mL/分/1.73m2」は3180人、中等度〜重度低下の「59〜15mL/分/1.73m2は744人だった。

 まず古典的危険因子を比較すると、GFRの低下に従い、年齢、収縮期血圧、肥満者の割合は有意に増加し、逆に高比重リポ蛋白(HDL)コレステロール値は有意に低下したが、総コレステロール値には有意な差がなかった。非古典的な危険因子の単純比較では、血清「アポA1」濃度がGFR低下に伴い有意に減少し、「アポB」「フィブリノーゲン」「ホモシステイン」は有意に増加していた。

 そこで研究グループは、GFRで分けた3群間で、年齢、性別、人種や喫煙など、背景因子に差のあった全要因で補正後に比較を行った。すると、「アポA1」「フィブリノーゲン」「ホモシステイン」はGFR低下に伴い、異常値出現オッズ比が有意に高くなった。またGFR「15〜59mL/分/1.73m2」群と「90mL/分/1.73m2以上」群とを直接比較すると、上記3因子だけでなく「ホモシステイン」や「リポ蛋白(a)(Lp(a))」の異常値出現オッズ比も有意に増加していた。

 なお、本検討における「異常値」は、検討で得られた検査値の85パーセンタイルに含まれない値と定義されている。この定義によれば、アポA1は1.2g/l未満、アポBは1.3g/l以上、フィブリノーゲンは10.35μmol/l以上、ホモシステインは15μmol/l以上、Lp(a)は45.3mg/dl以上が異常値になる。ただし、CRPに関しては測定精度の関係から全例の74%で検出できなかったため、検出された場合には「異常」としている。

 Muntner氏らは腎機能低下例における心血管系イベント増加が、これらの危険因子によりもたらされている可能性を示唆しているが、同号の「論評」(editorial)では異なる見方が紹介されている。執筆者である米国Johns Hopkins UniversityのLawrence J. Appel氏は、腎機能低下例では夜間血圧が低下しない例が多いため、(非古典的危険因子による影響よりも)夜間高血圧による血管傷害進展が顕著である可能性を指摘。当面は高血圧などの古典的危険因子に介入すべきだと述べている。

 確かに低アポA1血症や高フィブリノーゲン・ホモシステイン血症への介入も合理的だが、降圧薬治療によるGFR改善によりこれらの危険因子を改善できるならば、その方が好ましいだろう。その意味で、「心血管系危険因子をほとんど有さない微量アルブミン尿陽性例の心血管系予後を、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬による降圧が改善した」とする、昨年の米国心臓協会(AHA)年次集会で報告された「PREVEND IT」研究(Prevention of Renal and Vascular Endstage Disease Intervention Trial、関連トピックス参照)は、サブ解析の結果が待たれる試験の一つだといえる。

 この論文のタイトルは、「The Prevalence of Nontraditional Risk Factors for Coronary Heart Disease in Patients with Chronic Kidney Disease」。アブストラクトは、こちらまで。(宇津貴史、医学レポーター)

■ 関連トピックス ■
◆ 2003.10.30 「慢性腎疾患は心血管疾患の最大の危険因子」、AHAが声明
◆ 2003.11.13 CABG後患者対象の臨床試験結果で明暗、スタチン系薬の初の“直接対決”も−−12日のLBCTより

Information PR

ログインしていません

Close UpコンテンツPR

ログインしていません

もっと見る

人気記事ランキング

  1. わいせつ容疑の外科医、初公判で無罪を主張 「乳腺科医のプライドにかけて無罪を主張します」 FBシェア数:585
  2. トイレにこそ、人間の尊厳がある Dr.西&Dr.宮森の「高齢者診療はエビデンスだけじゃいかんのです」 FBシェア数:480
  3. 原発性アルドステロン症の重症例を見逃すな トレンド◎診断のボトルネックを解消する新たな基準が決定 FBシェア数:200
  4. 下血? 血便? 赤いの? 赤くないの? 薬師寺泰匡の「だから救急はおもしろいんよ」 FBシェア数:185
  5. 繰り返す乾燥肌やマラセチアの陰に保温肌着 リポート◎保温肌着の愛用者かどうかを聞き取り適切な生活指導を FBシェア数:459
  6. 佐久の医師たちがハッとした海外研修生の一言 色平哲郎の「医のふるさと」 FBシェア数:97
  7. 「どうしてこんな急に!」急変時の家族対応は 平方眞の「看取りの技術」 FBシェア数:34
  8. 輸液の入門書 医学書ソムリエ FBシェア数:0
  9. 医療者は認知症家族との暮らしが分からない 患者と医師の認識ギャップ考 FBシェア数:211
  10. 難治性皮膚潰瘍を再生医療で治す リポート◎大リーガー田中将大投手のケガも治したPRP療法とは? FBシェア数:22