2004.01.06

バラシクロビルによるHSV感染予防、FDAの承認根拠試験がNEJM誌に掲載

 抗ウイルス薬バラシクロビル(商品名:バルトレックス)を1日1回服用すれば、単純ヘルペスウイルス(HSV)をパートナーに感染させるリスクをほぼ半減できる−−。昨年8月に米国食品医薬品局(FDA)が、バラシクロビルに「HSVの異性間性交渉による感染予防薬」としての効能を追加した(関連トピックス参照)際の、根拠となったプラセボ対照試験がついに論文化された。研究結果は、New England Journal of Medicine(NEJM)誌1月1日号に掲載された。

 HSVには1型と2型があり、性器ヘルペスを起こすのは主に2型(HSV-2)だ。HSV-2に慢性感染した場合、普段は無症状だが、免疫力が低下した時などにウイルス量が増え、性器などに水疱や潰瘍を生じる。こうした症状は抗ウイルス薬で抑制できるが、ウイルスへの慢性感染そのものを治す薬は現時点では得られていない。悩ましいのは、特に症状がない時期でも、パートナーに感染させる恐れがあること。性交渉時にコンドームを使用するなど粘膜の直接接触を避けることが一番の予防策だが、十分な予防策が取られないケースも少なくなく、性器ヘルペスが急増している米国では大きな問題となっていた。

 臨床試験の対象は、カップルの一方のみにHSV-2感染による性器ヘルペスの罹病歴があり、相手側がHSV-2に感染していない(血中からHSV-2のDNAまたは抗HSV-2抗体が検出されない)ことが確認された、男女1484組。無作為に2群に分け、感染者にバラシクロビル500mgまたはプラセボを1日1回服用してもらい、8カ月間追跡して非感染パートナーへの感染率を比較した。臨床試験の参加時には、カップルの両者にコンドームの使用などの感染防護策を指導。感染者の症状再燃時には、どちらの群に割り付けられた場合も、実薬500mgを1日2回5日間服用してもらった。

 対象者の年齢の中央値は35歳(範囲:18〜76歳)、女性側が感染者であるケースが3分の2。半数にHSV-1との共感染があり、性器ヘルペスの罹病歴の中央値は8年(同:0〜51年)だった。非感染パートナーとの性関係期間の中央値は2年(同:0〜52年)。追跡期間中の性交渉回数の中央値は、バラシクロビル群(743組)が49回、プラセボ群(741組)が46回だった(同:0〜482回)。

 試験期間中に20人が性器ヘルペスを新たに発症したが、バラシクロビル群からの発症は4人(0.54%)で、プラセボ群の16人(2.1%)より有意に少ないことが判明(ハザード比:0.25、95%信頼区間:0.08〜0.75)。非顕性感染も含めるとHSV-2への新規感染者は41人になったが、感染率はバラシクロビル群が1.9%、プラセボ群が3.6%で、バラシクロビル群で有意に低くなった(ハザード比:0.52、95%信頼区間:0.27〜0.99)。

 試験期間中の感染者の性器ヘルペス症状再燃率は、バラシクロビル群(38.8%)でプラセボ群(77.3%)より有意に低かった(p<0.001)。バラシクロビル群の副作用発現率はプラセボ群と変わらず、長期連用による重篤な副作用は生じなかった。

 ちなみに、試験期間中にコンドームを「ほぼ常に使用した」のは全体の2割だけで、試験開始時の指導にも関わらず4割は全く使用しなかったが、HSV-2の感染率はコンドームの使用カップルで低い傾向があった。感染率には性交渉回数との相関もあり、性交渉が頻繁なカップルほど感染率が高い傾向があった。また、よく知られていることだが、この試験でも感染率の男女差が認められ、「男性から女性」への感染率の方がその逆よりも高かった。

 研究グループは、「性交渉時にコンドームを使うことがHSV-2感染予防に有用であり、今後も指導すべき」と強調しつつも、指導にも関わらず4割が全く未使用だったことを指摘。カップルのうち男性が感染者で、コンドームを使わず、性交渉頻度が多いケースでは特に、バラシクロビルによるパートナーへの感染予防を考慮すべきだと論じている。

 この論文のタイトルは、「Once-Daily Valacyclovir to Reduce the Risk of Transmission of Genital Herpes」。アブストラクトは、こちらまで。(内山郁子)

■ 関連トピックス ■
◆ 2003.9.4 FDAが性交渉によるHSV感染の予防薬、感染を約半減

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