2003.12.19

【解説】 どうして、タマネギには効用表現が許されるの? 疲労回復や安眠にとってもよく効く−−タマネギの車内広告を発見!

 東京国際空港(羽田空港)と浜松町駅を結ぶモノレールの車内で、ホクレン(正式名称:ホクレン農業協同組合連合会)の北海道産タマネギの広告から目が離せなくなった。

 「毎日食べて健康宣言。疲労回復や安眠にも新鮮な玉ねぎはとってもよく効くんですよ」と書いてある。

 広告には「よ!日本一。おいしいね北海道産」「北海道産『玉ねぎ』は日本一の生産量です」といった一連の記載があるが、上記の「効く」という文言と、「疲労回復」「安眠」という具体的な効能表現にちょっとびっくり。

 いずれも、健康効果の高い食品を開発・商品化している一般企業からすると、なんともうらやましい広告表現だからだ。

 というのも、薬事法の規制などにより、企業が製造・販売する食品には効果・効能を一切表現できないからだ。

 例えば、「効く」という表現はご法度。また、病名と関係する具体的な効能を意味する表現も使えない。

 しかし、タマネギのような農作物は、効果・効能の規制対象にはならないと考えられている。農家やその団体が商品化している場合にも、規制はゆるいようだ。

 また、ホクレンのように、農林水産省と関係が深い農協系の企業の場合には、「この規制の縛りが少ない」と業界関係者は話す。

「疲労回復」の表現を可能にするトクホプロジェクト
4年がかりで総額10億円


 タマネギで表現されている「疲労回復」という効能表現は現在、医薬品と医薬部外品以外には表示できない。

 2003年12月18日に東証マザーズに上場した総合医科学研究所が中心となり、厚生労働省許可・特定保健用食品(トクホ)の新しい保健表示として「疲労回復」の表示許可を獲得するプロジェクト「疲労定量化および抗疲労食薬開発プロジェクト」が11月7日に始動したが、トクホ表示獲得までに4年かかると想定している。

 トクホ取得に必要なヒト介入試験の受託機関として頭抜けた実績をもつ同社が主体となり、武田薬品工業や大塚製薬、花王などの有力18社が参加する約10億円のプロジェクト。「疲労回復」のトクホ表示には、これだけの時間と費用がかかるのだ(関連トピックス)。

 また、タマネギで表現されている「安眠」という効能表示も、食品には認められていない。

 最近も、睡眠時に分泌されるホルモンであるメラトニンを多く含むように工夫した乳飲料「nemu(ネムー)」を大塚製薬が11月11日に発売したが、当初予定の9月9日から2カ月強、発売を遅らせることになった理由の一つに、薬事法による規制が関係すると推測されている。「安眠」はもちろん、「眠りを誘う」といった表現を食品でするのもまずいようだ(関連トピックス)。

 タマネギが「疲労回復や安眠にも効く」という広告表現をしていることについて、ホクレンでは、「根拠のある効果だけを記載している」と説明する。

 1988年に北海道東海大学の教授に就任し、2003年4月からは北海道東海大学地域連携研究センター所長をつとめる西村弘行氏らの研究成果などをもとに、この広告の表現を決めたという。

 北海道産青果物拡販宣伝協議会とホクレンが共同で運営しているウェブサイト「きたやさい.com」(http://www.kitayasai.com/)の「顔の見える北野菜」のコーナーでは、“玉ねぎ教授”として西村氏が登場し、“スーパー健康野菜”玉ねぎの健康効果を紹介している。

 また、同ウェブサイトの「北野菜の効きめ」のコーナーでは、2003年12月15日付で「たまねぎ」の項目が加わった。「北野菜の効きめ」は、札幌市にある藤女子大学人間生活学部食物栄養学科栄養指導研究室の笹谷美恵子教授が監修している。

 確かに、含硫化合物を多く含むタマネギは、健康に良い成分が豊富な健康野菜だ。

 タマネギの健康効果は、加熱したり抽出すると高まり、そうしたエキスやペーストなどが商品化されている。ところが、タマネギも、加熱したり加工して食品やサプリメントにすると、効果効能を表現できなくなる。

 これらタマネギ加工品の健康効果は、加工していないタマネギ以上にあることは、研究で明らかになっているはずなのだが。(河田孝雄)

■ 関連トピックス ■
◆ 2003.11.14 疲労回復のトクホ表示獲得を目指す産官学連合が始動
アサヒビール、花王、武田薬品など18社が参加

◆ 2003.10.31 専門記者の目】
大塚製薬、乳飲料「ネムー」を2カ月遅れで11月11日発売
発売延期の理由を推測してみると…


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