2003.12.19

AAAへのステントグラフト、長期予後は外科療法に劣る恐れあり−−FDAが勧告

 米国食品医薬品局(FDA)は12月17日、腹部大動脈瘤(AAA)に対する人工血管内挿術(ステントグラフト)の安全性に関する最新見解を発表した。米国Medtronic社製の「AneuRx Stent Graft System」を用いて治療を受けたAAA患者の長期成績に基づくもの。FDAは、ステントグラフトによる周術期の死亡率は低いが、施術後の遅延死亡率は外科治療より高いため、長期的には死亡率が外科治療を上回る恐れがあると結論。リスク利益比をよく考慮して適応を絞り込むよう求めている。

 AAAでは、動脈瘤を生じた血管を人工血管と取り替える「人工血管置換術」が行われることが多い。ステントグラフトは、この人工血管置換術の代替法として考案されたものだ。折りたたんだ人工血管を、カテーテルを使って動脈瘤を生じた血管の内側に設置、その場で広げて痛んだ血管を内張りする。ステントグラフトには、開腹せずに治療が行えるため、侵襲性が低いとのメリットがある。

 しかし、設置したステントグラフト用人工血管が「ずれ」を生じ、人工血管と本来の血管の間に血液が流れ込むと、“内張り”効果がなくなってしまう。施術後の動脈瘤破裂などの報告を受け、FDAは2001年4月、ステントグラフト後に留意すべき合併症に関して通知。医療従事者に合併症報告を促すと同時に、「AneuRx Stent Graft System」の市販前試験の参加者について長期追跡調査を進めていた。なお、米国では現在、3種類のステントグラフト用人工血管が市販されているが、長期成績が得られているのは「AneuRx Stent Graft System」のみだ。

 市販前試験には、全身状態が比較的良好で、腎不全や感染、高度肥満などがない、つまり外科手術にも十分耐え得るAAA患者942人が参加。施術後30日以内の死亡率は1.5%だった。AAAの外科治療による周術期死亡率は、施設により0〜5%程度と報告されており、多くの施設では短期的にはステントグラフトの方が予後が良いことになる。

 しかし、最長7年間の追跡で、ステントグラフト施術後の遅延死亡率(late mortality)が、少なくとも3年は年率0.40%に上ることが判明。外科治療患者の方が遅延死亡率が低く(施設により年率0〜0.34%、平均0.18%)、長期的には、ステントグラフト施術患者の死亡率が外科手術を受けた患者を上回る恐れがあることがわかった。

 以上からFDAは、個々の施設の外科治療成績や患者の手術リスク、期待される余命などを勘案した上で、ステントグラフトの適応の絞り込みを行うよう勧告している。

 この件に関するFDAの通知は、こちらまで。(内山郁子)

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