2003.12.10

未熟児網膜症への手術適応見直しへ、早期手術で視力不良例が減少−−ETROP研究より

 重度の未熟児網膜症にかかった新生児約400人を対象とした米国の無作為化試験で、網膜剥離リスクが15%以上になった段階で手術をした方が、剥離リスクが50%以上になるまで経過観察するよりも、生後9カ月時点での視力不良例や瘢痕残存例が少ないことがわかった。従来の手術適応の見直しにつながる結果で、原著論文がArchives of Ophthalmology誌12月号に掲載された。

 未熟児は網膜が未完成の状態で生まれてくることがあり、出生後、網膜周辺の血管が異常に増殖して眼球の内側にまで伸びてしまうことがある。これが「未熟児網膜症」と呼ばれる病態だが、ほとんどの場合は、伸びた血管が再び網膜に戻り、正常な網膜血管へと成長する。つまり自然に治るケースが多いわけだが、重度の未熟児網膜症では、血管の異常増殖に伴い、網膜の剥離や黄斑部・水晶体の不可逆的な変化が発生、最悪の場合は失明する。

 レーザー手術(光凝固法)や冷凍凝固法といった眼科手術を行えば、網膜症の進行を止めることができるが、その場合は周辺視力が失われてしまう。しかし、網膜剥離や黄斑部変性などが起こると、全くものが見えなくなってしまう恐れがある。自然に治ることも多い病気だけに、どのタイミングで手術を行うかは大きな問題だ。米国では、網膜剥離のリスクが50%以上と見込まれる場合に手術を行うべきとされてきたが、もっと早い段階から手術に踏み切った方が良いとのデータもあり、はっきりした結論は出ていなかった。

 そこで、米国国立衛生研究所(NIH)の下部機関、米国国立眼研究所(NEI)は、「ETROP」(Early Treatment for Retinopathy of Prematurity study)研究を企画。1251g未満で生まれ、生後42日後の時点で重症の(網膜剥離リスクが15%以上の)網膜症を発症していた新生児401人を対象に、早期手術と経過観察(網膜剥離リスクが50%を超えた段階で手術を施行)とを無作為に比較する試験を行った。

 対象患児の平均出生時体重は703g、平均在胎週数は25.3週で、半数強が男児、3割が多胎例。8割は両眼、2割は片眼に重症の網膜症があった。研究グループは、両眼に重症の網膜症がある場合は、どちらか一方の眼にだけすぐに手術を行い、もう一方の眼は経過観察した。片眼だけの場合は、早期手術または経過観察のいずれかを無作為に適用した。手術は主に光凝固法で行った。

 9カ月後に視力検査を行ったところ、従来通り網膜剥離リスクが50%以上になるまで手術を待った眼では、19.5%が失明または弱視であることが判明。一方、すぐに手術を行った眼では、失明または弱視の発生率が14.5%と有意に低かった(p=0.01)。後極部の束状網膜剥離など不可逆的な重度瘢痕は、経過観察群の15.6%に生じていたが、早期手術群では9.1%と有意に少なかった(p<0.001)。

 以上から研究グループは、網膜剥離予測リスクが15%以上の場合は、すぐに手術を行った方が、予測リスクが50%以上になるまで手術を待つよりも視力を保てる可能性が高まると結論。未熟児網膜症に対する手術適応の見直しを提言している。研究グループは今後、6歳になるまで研究参加児を追跡し、早期手術のメリットが長期的に保たれるか否かを検討する予定だ。

 この論文のタイトルは、「Revised Indications for the Treatment of Retinopathy of Prematurity」。現在、全文をこちらで閲読できる(リンク先の運営次第で変更になることがあります。ご了承下さい)。この件に関するNEIのプレス・リリースは、こちらまで。(内山郁子)

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