2003.12.05

【解説】 ココアの新たな効用、杏林大と森永製菓が発見 毒性の強いピロリ菌を抑制する

 冬の温か飲料の一つ、ココアの人気が徐々に高まっている。胃潰瘍(かいよう)や胃癌の原因になるピロリ菌を減らし、整腸作用もあることが明らかになり、健康増進効果のある飲料として消費者に認知が広まっているためだ。そのココアに、毒性の強いピロリ菌の活動を抑制する作用があることが新たにわかった。

 ピロリ菌は、VacAと呼ばれるたんぱく質の毒素を出し、胃の細胞に空胞を作って、細胞を死滅させる。実は、ひと口にピロリ菌といってもいろいろな株があり、このVacAをたくさん作る株ほど、毒性が強いことがわかってきた。

 杏林大学医学部の神谷茂教授は森永製菓と共同で、VacAをたくさん作り出す毒性の強いピロリ菌を研究。この毒性の強いピロリ菌にココアを0.06%の濃度で加えると、VacAを作る働きが抑えられることがわかった。

 ちなみに0.06%という濃度は、通常のココアの飲用濃度である3.5%に比べると60分の1に相当する。「まだ研究の初期段階だが、ココアを飲むことで毒性の強いピロリ菌の活動を抑制する作用を期待できると考えてよいだろう」(神谷氏)。

 この効用は、2003年12月2日に東京都内で開かれた報道関係者向けセミナー「ヘリコバクターピロリに対するカカオの効果 最新情報」で発表された。

 これとは別に、ピロリ菌対策のヨーグルトとして人気の明治乳業「明治プロビオ LG21」の乳酸菌であるLG21乳酸菌が、ピロリ菌の活動を抑える新たなメカニズムも明らかになってきた。

 ピロリ菌は、胃粘膜の上皮細胞に付着すると、ピロリ菌の細胞膜からタイプ4分泌装置という針のようなものを胃の上皮細胞に突き刺し、毒素を上皮細胞内に送り込むことが知られている。

 このタイプ4分泌装置でピロリ菌が上皮細胞を突き刺すのを、LG21乳酸菌が抑制することがわかったのだ。東海大学医学部教授の古賀泰裕氏が明治乳業と共同で、このメカニズムを見い出し、2003年9月上旬にスウェーデン・ストックホルムで開かれた第16回欧州ヘリコバクター研究グループ国際ワークショップのサテライト・シンポジウムの招へい講演で発表したもの。

 医療機関で行われているピロリ除菌は年々、除菌成功率が低下している。耐性菌が登場しているからだ。

 医療機関ではピロリ菌を除去するために、胃酸の分泌を抑制するプロトンポンプ阻害薬1種と、抗生物質2種の計3剤を併用している。3剤の一つであるクラリスロマイシンという抗生物質が効きやすい通常のピロリ菌であれば、除菌成功率は8割ほどと、かなり高い。

 ところが、クラリスロマイシンに耐性がある(死滅しにくい)ピロリ菌株が胃に棲息(せいそく)している場合には、除菌成功率は4〜2割程度に下がることがわかってきた。

 抗生物質は使えば使うほど耐性菌が出やすくなることはよく知られているが、ピロリ菌についても同じことが起こっているのだ。

 医薬品だけに頼らず、ココアやヨーグルトといった身近な食品でピロリ菌に対抗していく動きは今後、より重要度を増していくだろう。(河田孝雄)

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