2003.12.04

関節リウマチ患者の「心の健康」に男女差、重症度に加え「社会とのつながり」とも関連

 20〜50歳代の関節リウマチ患者500人を対象としたインターネット調査で、疾患の重症度などで補正後も、「心の健康状態」を反映するHADSスコアなどに大きな男女差があることがわかった。こうした性差のほか、HADSスコアは「お年寄りの病気でしょう」「なまけている」など周囲から誤解や非難を受けた経験が多い人で高く、逆に闘病を支えてくれる人が周囲に多い人では低かったという。調査結果の速報は、12月3日に都内で開催された記者会見で発表された。

 この調査「関節リウマチをもつ人々の困難と社会とのかかわり」を行ったのは、東京大学大学院医学系研究科健康社会学教室の山崎喜比古氏らと、ワイス(旧社名:日本ワイスレダリー、関連トピックス参照)との産学共同研究グループ。関節リウマチ患者10人が調査設計段階から参加している点が特徴の一つで、こうした「当事者参加型リサーチ」が産学共同で行われたのはわが国で初めてだ。

 調査対象は、関節リウマチに罹患しており、インターネットを使える環境にある、20〜50歳代の男女492人。「インターネットが使えるとの条件に加え、関節リウマチ患者の7割は60歳以上であることを考えると、今回の調査対象者が関節リウマチ患者を代表しているわけではない。しかし、20〜50歳代は最も社会との関わりが重要性を持つ年代であり、今回の調査目的に合致する」と、対象患者の選定理由を山崎氏は説明する。

 対象者の平均年齢は41.1歳、女性が8割強で、診断後経過年数は平均8.3年。4分の3が配偶者を持ち、6割に子供がいた。6割強に関節の変形(平均変形関節数:2.4カ所)、4分の1に手術経験があった。約9割の人には、ビンの蓋の開閉や就寝・起床の動作などの日常生活動作に何らかの困難があった。年齢や罹病期間に男女差はないが、関節変形出現率や手術経験率は女性が男性の2倍で、機能障害も女性の方が重度だった。

 ところが、抑うつ・不安を反映する心理測定尺度であるHADSスコア(0〜42点、高得点ほど抑うつ・不安度が高い)の平均値は、男性で17.0点と、女性(13.3点)より有意に高いことが判明(p<0.001)。うつ病が疑われる「HADSスコア20点以上」の人の比率も、男性では32.1%と、女性(17.6%)のほぼ2倍になった(p<0.05)。逆に、疾患への前向きな対処につながる「逆境に耐える力」(山崎氏)を反映するHOPEスコア(12〜48点、高得点ほど“生きていく意味”を見出せている)は男性で有意に低く、「心の健康」は女性の方が高く保たれていることが明らかになった。この男女差は、患者背景で補正後も変わらなかった。

 社会環境との関連では、7割以上の人で「温泉やマッサージで治るのでしょう」「お年寄りの病気でしょう」などの誤解を受けた経験があり、約半数に「わがままだ」「なまけている」といった非難を受けた経験があった。こうした誤解・非難の経験数とHADSスコアやHOPEスコアとには、性別や機能障害度で補正した後も、有意な相関がみられた。しかし、誤解や非難を受けた場合、理解を求めて説明している患者は4割強に留まっており、関節リウマチへの理解を求めることが簡単ではないことが伺われた。

 一方、全体の6割(男性の57.7%、女性の60.3%)は、趣味の集まりや町内会などを通し、何らかの社会参加をしていたが、こうした人ではHADS・HOPEスコアで評価した精神健康状態が有意に良いことがわかった。また、悩みを相談できる相手や家事などを手伝ってくれる人、逆に患者側に心配事を相談してくる相手など「サポートの受領関係」が多い人ほど、心の健康が保たれていることも明らかになった。この「サポートの受領関係」数には明らかな男女差があり、女性の方が支え合う相手を多く持っていた。

 この結果について山崎氏は「一般に男性の方が疾患などによるストレスに弱いとされているが、これほど明確な差が出るとは正直驚いた」と話す。ストレスへの弱さに加え、周囲と支え合う関係をどれだけ築けているかにも男女差があったことが、心の健康度に大差が生じた一因である可能性があると山崎氏はみる。

 興味深いのは、「診療への満足度」と精神健康状態とにも相関が認められたこと。調査では1.治療の効果、2.主治医の専門知識・治療技術、3.関節の状態の観察とそれに基づく診療、4.診療にかける時間、5.主治医の態度・説明の仕方、6.主治医とのコミュニケーション−−の6点について満足度を尋ねている。いずれの設問についても、「満足」と答えた人は3〜5割と「他の慢性疾患と比べ低い水準」(山崎氏)だが、HADS・HOPEスコアとは性別や機能障害度で補正後も有意な相関があった。

 今回の調査は相関をみたもので、山崎氏は「この調査だけで因果関係までは言えない」としつつも、周囲の疾患への理解を深めたり、診療満足度を高めるなど「病を抱えた患者を支える社会環境を整えることで、患者の精神健康状態を改善できる可能性がある」と考察。今後は同様の調査を海外でも行い、比較研究結果を通して具体的な提言へつなげたいとした。

 なお、調査結果は関連学会での発表のほか、ワイスが主催する関節リウマチ情報サイト「リウマチ e-ネット」にも、近く掲載される予定だ。(内山郁子)

■ 関連トピックス ■
◆ 2003.11.5 日本ワイスレダリー、ワイスに社名変更


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