2003.12.03

【投稿】 歯科救命救急医療の展望

 元愛知県歯科医師会救急医療対策委員会委員長、鈴木崇儀(すずきたかのり)さんから、「歯科救命救急医療の展望」と題する投稿をいただきました。長年の経験を元に、今年9月に厚生労働省が示した歯科医師の医科での研修ガイドラインについて、現時点での評価を試みています。以下に紹介します。このテーマに関する皆様のご意見をお寄せください。あて先は、miwa@nikkeibp.co.jp へどうぞ。

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歯科救命救急医療の展望
 
 平成15年9月、厚生労働省より歯科医師の医科での研修ガイドラインが発表された。半年前の3月28日、札幌地裁は、救命救急センターでの歯科医師の参加型研修が、医師法17条に違反するとの判決を出したばかりである。ガイドラインの内容は、歯科医師に医科での参加型研修を認める内容であり、厚生労働省が社会的反響に一部屈したとも言える形となった。

 ガイドラインの具体的内容を抜粋してみると、1.診察部門で、医師法17条に違反するとされた腹部の診察(視診、触診、聴診、打診)、2.循環補助部門のAEDによる除細動(VF/脈なし VT)、3.薬物の使用部門ではACLSのVF/VT、PEA、心静止のアルゴリズムで使用する薬剤の使用、4.輸液等の部門の救命救急センター、救急部における救急輸液の実施、のいずれもが研修水準A(研修指導医または研修指導補助医の指導・監督下での実施が許容されるもの)にランクされている。

 一方、気道確保部門の気管挿管、循環補助部門の手動による除細動(VF/脈なし VT)は、緊急時、歯科医にも必要な手技にもかかわらず、研修水準B(研修指導医または研修指導補助医が介助する場合、実施が許容されるもの)になっている点は、やや納得しかねるところである。

 ただ、今回この時期に参加型研修として医科研修が認められたことは大きな意義を持っている。

 このガイドラインの実施に当たり急務とされるものに、ACLSを指導する歯科医師の養成がある。到達目標に、1.バイタルサインの把握ができる、2.重症度及び緊急度の把握ができる、3.ショックの診断と治療ができる、4.基本的な二次救命処置(ACLS:Advanced Cardiovascular Life Support)ができる、5.専門医へのコンサルテーションができる、の5項目があるが、現時点ですでに救命救急センター等で研修を終え、この目標に到達している歯科医師もいるはずである。この歯科医師らのACLS指導医としての認定は、これまで歯科医師を指導してきた救命救急センター等の管理責任者が評価し、目標に到達している歯科医師には、認定する配慮も必要と思われる。

 なお、今後の問題点の一つとして、モニタリングの位置付けがある。バイタルサインの把握時、救急薬使用時のモニタリングは、医科では常識であるが、残念ながら、これまで厚生労働省・歯科界にはモニタリングに対する認識に欠けており、健康保険制度にさえ導入されていないのが現状である。

 まず、厚生労働省の担当官および歯科医師に対する意識改革が必要である。そして今後は、歯科医師が中心になり、このガイドラインがより充実したものになるようにしていかねばならない。また、この機会に、歯科救命救急医学会を立ち上げる前に、歯科救命救急研究会なるものを発足できればと考えている。

 医療法人 緑丘歯科医院 理事長 
 元愛知県歯科医師会救急医療対策委員会委員長 鈴木崇儀

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