2003.12.03

日経メディカル「患者アンケート報告」第4回 「クレームから学ぶ」姿勢を

 患者アンケートの自由意見欄には多くの生々しい声が寄せられた。149人の回答者のうち、93人もの記入があった。長文の意見もあった。病院に対して多くの人が、意見や感想を持っており、それを表明したい気持ちが強いことを示している。

 以下、(1)待ち時間(2)医療者の対応(3)病院の運営や設備−−について、主な意見を紹介する(コメント後の記号は、その人の「必要があれば、またその病院に行きますか」との問いに、A=「強くそう思う」、B=「そう思った」、C=「どちらとも言えない」、D=「そう思わない」、E=「全くそう思わない」と答えたことを意味する)。

1 待ち時間

 待ち時間や混雑に関する記述が最も多く、93人中13人がこの点に関するクレームを書いた。

 「診察までの待ち時間が長すぎる。2、3時間が当たり前では、症状はさらに悪化せざるを得ない。診察が終わってからのお金の支払いと薬の受け取りにまた小一時間かかるのも不可思議。朝早く行って、実質5〜10分の診察のために午後2〜3時までかかるので、実質1日つぶす覚悟が必要」(C)というコメントが典型的。

 その他、「3時間待ちの3分診療」(D)、「何しろ混んでいる」(C)など、多くの苦言があった。

 一方、待ち時間が少ないことや待ち時間短縮の改善は、患者が実感しやすいだけに好印象をもたらすことが、次のような意見から分かる。

 「予約診療で待ち時間が最大20分という点も精神的に良い」(B)、「診療科によっては、予約制が整備されており、支払い、薬などの待ち時間もそんなに長くない」(B)、「2年くらい前までは薬やレジに時間がかかり腹を立てていたが、最近では院外での薬、レジには長くても15分位、とずいぶん改善した」(A)、「最近新築したのでシステムも新しくそれほど待ち時間がない」(B)、といった具合だ。

2 医療者の対応

 医療者の対応は、患者の満足度に決定的なインパクトを与えることは第2回で見た通りだ。

 不満については、「複数科にかかったが、どの医師・検査技師も挨拶ができない。こちらは挨拶しているのに返事が返ってこない」(E)、「担当ドクターの無愛想さには愛想が尽きた、2度と行きたくない」(E)、「家内が5年前に卵巣嚢腫の手術をした時にその前後の対応、措置、説明の納得性、いずれも不満が残った」(D)、「指導医の態度が横柄であり、研修医からの説明ではいまいち納得できなかった」(C)「『今日はどうしました』と聞かれたので人間ドック結果に胃にポリープと書かれていたのでお話を聞けたらと思い来たことを告げると『ポリープができたんだったらそうなんだよ。12カ月後に検査することになっているなら、それでいいんでしょ。何なの』とすごい態度でした。私は、いままで病気に縁がなく、とても不安でしたので病院に来たのに、医師の言動にはびっくりして怒りもこみあげてきました」(E)、などの声があった。

 一方、医療者から十分に説明を受けたと感じたときは、一種の感動を覚え、強くその医療者や病院への愛着のような心理が発生することも分かる。

 「医療の質等まではよく分かりませんが、医師の説明は丁寧で、聞き終わった後、家族と顔を見合わせたほどでした。この様子から考えてもかなり患者要理の病院だと思われます」(A)、「担当医師は病状に対する説明をパソコンを使って、データや写真を基に論理的に説明してくれた」(A)、「カルテは公開しているし医師もオープン。看護師も大変親切で良い」(A)、「患者およびその家族への対応が親身であり、退院後も気にかけてくれた」(A)、「丁寧な説明をしてくれた。医師自身にとって不利となることでも説明があったため、信頼できると感じた」(A)、「病状に対する説明、セカンドオピニオンの取得についても協力的であった。患者の悩みに聞く耳があった」(A)、などだ。こうした患者はすべて、また同じ病院に行きたいと思っている。

3 病院の運営や設備

 患者は病院の運営についても冷静に観察している。

 「医師は能力を評価され天狗になっている人も多いと聞きましたが、病院は、患者さんへの技術のサービスだけではないと思います。患者さんや他の医療従事者と同じ腰の高さで語り合える姿勢が医師には欠けているような気がします。看護師さんに対する態度も患者は見ています。機能評価は、その辺り、どのように評価しているのか疑問に思います」(B)、「最近入院患者の、事故・自殺による転落事故が数件あった。都市の大病院になると事故予防で大変高いフェンスが張り巡らされていますが、この病院は一度事故があっても放置しています。当直もあれだけの患者がいながら、看護師が各階二人しか在中していません。セキュリティーも不完全です」(C)、「早く退院させることに熱心で、患者個々の容態を勘案しているとは思えなかった」(C)、「看護師の引き継ぎが悪い、医師と看護師の伝達が悪い、病室が狭くて高い、クリティカルパスを認めない、介護のたびに駐車代を取られる、介護人の食堂がない、ヘルパーさんの対応が悪い、支払いに時間がかかる」(E)、「技術については安心できる。あとは設備的に老朽化が目立ってきていることと、勤務者(特に看護婦さん)の労働環境が過酷であることが気がかり」(B)。

・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 生々しい苦言も届いた。

 「人気の女医から医者とは思えない発言をされた。3人帝王切開で出産後、最後の子から約3年後に4人目を妊娠しました。体が心配で、産めますかと聞いたところ、『子宮破裂で死にますよ、シャーシャーと4人目妊娠しましたね。よく考えてください。堕ろすとしても、うちではできないからO産婦人科に行ってね』と言われとてもショックでした。結局、子宮破裂のことが頭から離れず中絶しました。確かに4人帝王切開は危ないかもしれません。でも、もう少しきちんと説明してほしかったです」(C)。

 「首、肩、背中にかけて激痛に悩まされた。A病院では『トシだからしょうがない』と言われ、首の懸垂と投薬だけ。何の効果もないまま苦痛に耐えかねていたところ、B新聞にC病院医師の『長期放置は痛みが固定化する危険あり』との記事を見て、すぐ行った。MRI、X線など医用画像装置による診断はA病院と同じだが、読影の精密度と対応に格段の差がある。頸椎症性神経根症と診断され、X線モニター下での神経ブロックを受け、一発で痛みが解消した。右手握力が3分の1に低下したが、今は3分の2に回復した。A病院の評価は信じられない。C病院とはこの科目に関してはプロとアマの差がある。A病院は泌尿器科(前立腺肥大)でも待ち2時間、診察2分(調剤処方を書くだけ)で、1年間通院して改善なしなので、D病院で手術を受け治癒した。私の経験ではA病院は経営至上主義で医療機関としては決して高いレベルにあるとは思えない」(C病院に対してA)。

 もちろん感謝の言葉もあった。  「胸部圧迫感を感じて受診。外来の医師に緊急入院を告げられ、ICU(集中治療室)へ。寝耳に水のことであったが、3、4人の医師が問診してきちんと説明をしてくれた。不安の渦中、非常にありがたかった。狭心症のうたがいで心臓カテーテルなど検査したが異常はなく、他の病院と連携して全体的に病気を診てくれた。また余計な検査はせず、患者の意思を尊重してくださった。ありがとうございました。S先生」(B)。

・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・  

 患者の満足度は、非常に高い場合から、紛争につながりそうなクレーム段階のものまで、大きな違いがある。患者を満足させる病院・スタッフと、患者を激怒させる病院・スタッフが混在している。

 連載第2回で見たように、満足した患者は病院を再訪し、不満を持った患者は病院を変える。どんなサービス業でも、不満を感じた顧客のうち、クレームを表明してくれるのはごく一部で、大半は黙って他のサービス供給者に切り変えたり、いきなり強硬なクレームを表明するという。

 ある病院に対して、「規模が超大型でなく院長の目配りが効いているように思える。患者の要望とその回答が掲示されている」(B)とのコメントがあった。このように、患者の潜在的要望や不満を拾い上げ、それを真摯に取り上げることが、医療機関に求められている姿勢だと言えるだろう。
(埴岡健一、日経メディカル) (連載終)


■ 参考トピックス ■
◆ 2003.11.26 日経メディカル「患者アンケート報告」第3回
機能評価、「認定取得」だけでは不十分

◆ 2003.11.18 日経メディカル「患者アンケート報告」第2回
患者の15%は医師に満足せず、不満な患者は病院を変える

◆ 2003.11.13 日経メディカル「患者アンケート報告」第1回(病院への意識) 深い「日本の医療」への不信感

■ 参考図書 ■


Information PR

ログインしていません

Close UpコンテンツPR

ログインしていません

もっと見る

人気記事ランキング

  1. 医師国家試験を解答するAIの正体教えます トレンド◎人工知能が医療現場にやってくる FBシェア数:129
  2. その開業話、本当に進めても大丈夫ですか? その開業、本当に大丈夫ですか? FBシェア数:19
  3. 清掃中に生じた精巣痛の原因は? 山中克郎の「八ヶ岳から吹く風」 FBシェア数:32
  4. 「教えるプロ」に学ぶ、下部消化管内視鏡検査 薬師寺泰匡の「だから救急はおもしろいんよ」 FBシェア数:2
  5. 脳梗塞に対するt-PA投与をiPhone使って判… トレンド◎日本初の保険適用アプリ「Join」、入院日数・医療費減にも効果 FBシェア数:348
  6. 向精神薬になったデパス、処方はどうする? トレンド◎ベンゾジアゼピン系薬の安易な処方に警鐘 FBシェア数:1300
  7. 燃え尽きる前に、やるべきことは1つ! 研修医のための人生ライフ向上塾! FBシェア数:0
  8. 男性医師は何歳で結婚すべきか、ゆるく考えた 独身外科医のこじらせ恋愛論 FBシェア数:201
  9. デパス向精神薬指定の根拠とは Interview FBシェア数:148
  10. 天才は、扱う人間を格付けする意味で罪作り!? 松原好之の「子どもを医学部に入れよう!」 FBシェア数:0