2003.12.01

患者の周術期死亡率、術者の手術件数に依存−−米調査

 手術件数が多い外科医に手術を受けた患者ほど、周術期の死亡率が低いことが、米国の高齢者向け公的医療保険であるメディケアのデータ解析から明らかになった。医療機関の手術件数と死亡率とに負の相関があることは、日本を含む各国から数多くの報告があるが(関連トピックス参照)、外科医の手術件数との相関を大規模な調査に基づいて示したのはこの研究が初めて。研究結果は、New England Journal of Medicine(NEJM)誌11月27日号に掲載された。

 調査対象は、1998〜1999年の2年間に、メディケアの対象である65歳以上で、次に挙げる8種類の手術のいずれかを受けた米国の高齢者47万4108人。年齢や性別、人種、合併症などの患者背景や、手術を行った施設の手術件数で補正した後、30日死亡率と術者の年間手術件数との関連を調べた。解析対象とした手術の種類は、血管外科が4種類(頚動脈内膜切除術、冠動脈バイパス術、大動脈弁置換術、待機的腹部大動脈瘤再建術)、癌が4種類(肺切除術、胆嚢切除術、食道切除術、膵臓切除術)。

 その結果、すべての手術において、手術件数が多い術者の手術を受けた人ほど、30日死亡率が低いことが判明。最も差が大きかったのは膵臓切除術で、手術件数により術者を3群に分けると、手術件数が少ない外科医に手術を受けた患者は、手術件数が多い外科医の患者の3.61倍、周術期死亡率が高いという計算になった。

 面白いのは、周術期死亡率と医療機関の手術件数との関連が、術者の手術件数でどの程度説明できるかを解析したデータ。例えば大動脈弁置換術ではこれが100%で、患者の命運は術者の“経験”に100%かかっていることになる。対照的なのが肺癌の手術で、術者の手術件数には24%しか依存していない。肺切除術では、術者よりもむしろ医療機関の“経験”、端的には周術期のケアが生死を分けることを意味している。

 研究グループは、これまで医療機関の手術件数と関連すると考えられてきた術後患者の予後が、実は術者の手術件数と強い関連があり、「医療機関の手術件数との関連」の大部分は術者の手術件数で説明できると考察。手術を受ける患者は、手術件数の多い病院で、かつ頻繁に手術を行っている外科医を選べば、生存確率を高められると結論付けている。

 この論文のタイトルは、「Surgeon Volume and Operative Mortality in the United States」。アブストラクトは、こちらまで。(内山郁子)

■ 関連トピックス ■
◆ 2003.11.19 日経ヘルスケア21◇中医協リポート】No.5
医療機関の手術件数と死亡率に負の相関、医療技術評価分科会で研究報告

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