2003.11.27

【救急医学会速報】 交通事故などによる高次脳機能障害、認知不足で多くの患者が潜在か−−札幌の調査で示唆

 ひどい物忘れ、同時に二つのことができない、良好な人間関係を築けない、など、一見すると本人の性格の問題として受け止められがちな「高次脳機能障害」に対する認知が進んでいないようだ。多くの患者が治療を受けることもなく、潜在化している可能性を、北海道大学リハビリテーション医学教室の生駒一憲氏が、11月20日のパネルディスカッション3「急性期医療から社会復帰までを考える」で、札幌市の調査結果をもとに報告した。

 2002年1月から2月にかけ、北海道と札幌市でリハビリテーション科、脳外科、精神神経科、神経内科を標榜するすべての病院など428施設を対象として、入院・通院中、または在宅の高次脳機能障害者の実態を調査した。

 その結果、調査票回収率68.5%(293施設)で690人の高次脳機能障害者を把握できた。回収率を勘案すれば北海道内で約1000人の患者数となるが、生駒氏は「把握できた患者数は明らかに過少」と指摘する。その原因として、調査方式の不備の問題を除けば、医療関係者に高次脳機能障害に対する理解・認識不足があるほか、家族にも高次脳機能障害が知られていないために、適切な治療やケアが実施されず、潜在化している可能性が高いという。

 従来、高次脳機能障害は、比較的限局した脳損傷、特に脳血管障害に伴う失行や失認、失語、記憶障害などを指す概念だったが、近年、広範囲の脳損傷によって、記憶や注意力、物事の実行力、社会的行動などに起きる障害を指す用語になっているという。引き起こされる障害としては、物忘れがひどく、何度も同じことを繰り返し質問する、同時に二つのことができない、自分で計画を立てて物事を実行できない、よい人間関係を築けないなど、あたかも本人の性格の問題のような障害が現れる。このため、「だめな人間」という烙印を押され、就職も治療もせずにぶらぶらしていることも多い、と生駒氏は指摘する。原因が外傷などによる微小出血などによることは、MRIやPETなどを用いた画像診断などによって、確認できるという。

 薬剤などによる治療も行われるが、認知障害自体の改善は多くの場合、困難で、職場や家族の理解を高めるほか、リハビリテーションによって何らかの代替手段で機能低下を補う努力がなされるようだ。例えば、ひどい物忘れについては、メモ使用の訓練が成果を上げているという。総合的なリハビリテーションの結果、北大病院の高次脳機能障害による入院者52人のうち、約52%に当たる27人が復学・復職、あるいは就労に成功、約38%に当たる20人が小規模作業所や障害者職業センターで訓練などを行っているという。

 全国の高次脳機能障害者数についての実態はまだ把握されていない。2001年度の警察庁統計によると、交通事故の主損傷部位別統計によると、頭部外傷の重傷者は1万786人であり、これより発生数が多いことは明らかだという。生駒氏は、医療関係者や一般企業などに対する十分な啓蒙活動と、支援サービスの提供体制確立を目指して知見を集める必要性を強調していた。(中沢真也)

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