2003.11.27

【救急医学会速報】 「兵庫AED特区」構想、地元医師会員232人がAED保有

 厚生労働省が2004年度中をめどに自動体外式除細動器(AED)の市民利用を認める決定を行った直接のきっかけは、兵庫県にAEDの市民利用を認める特区を作るとした提案だった。この特区申請を行った兵庫県立健康センター所長の河村剛史氏が、11月19日の一般口演「救急医療体制2」で、兵庫県医師会員に対するAED教育の現状を報告した。

 河村氏は兵庫県医師会などと協力し、2001年11月から開業医に対するAED講習を実施し、併せてAED購入を呼びかけている。2006年に同県で開催される「のじぎく国体」までに、300台を配備するのが目標だ。積極的なキャンペーンを続けた結果、一時は、国内のAED台数の半分が兵庫県内に配備されていたほど。2002年からは兵庫県医師会で、AED指導者講習会を会員向けに実施し、2年足らずで392人が講習を終了、2003年11月現在で、232人の県内医師会員がAEDを購入した。300台の目標は既に射程距離に入ったと言える。

 河村氏は早くから、学校教育の場や一般市民向けセミナーなどで、救命教育を進めてきた。ところが、「市民が心肺蘇生をできるのに、医師ができないという逆転現象が起きてしまった。AEDでは二度とその轍を踏みたくない」として、開業医が市民に対してAED操作を教える体制作りとして、AED指導者講習を開催してきた。

 実際に救命の成果も上がっている。2001年11月23日に尼崎市医師会で講習会を実施し、同月25日の尼崎シティ国際マラソンにAEDを持った医師を派遣したところ、65歳の男性が倒れた際、14人の医師が一斉に心室細動の対応に動いた。最終的には、AEDによるショックは使わず、胸部強打によって心拍を再開したが、こうした即座の除細動を可能にする体制こそが重要だという。

 河村氏は、「意識を消失したら、まずAEDを装着する」という指導方針をとっている。医師が意識消失を発見したら、気道確保と頚動脈での拍動を確認し、循環のサインがなければただちに除細動を行う。心拍が再開したらバッグマスクで気道を確保し、心マッサージとバッグマスクによる人工呼吸を施して救急車を待つべきだという。「診断する、判断するなどといった状態監視は最小限にとどめ、まずパッドを貼るAEDファーストの意識を持つべきだ」と強調する。

 河村氏は、医師以外の人によるAEDの使用について「講習受講などの条件を満たさない場合には医師法17条違反」とする厚労省の見解には反対の立場をとる。居合わせた一般市民に救命をためらわせることになりかねないことはもちろんだが、「医者が居合わせていながらAEDによる救命を実施しなかった場合、不作為を問われることになりかねない」という危機感があるからだ。救急車が到着するまでは医師も一般市民も同等の立場だと主張している。

 兵庫県医師会は、AED普及キャンペーンの一環として、「まず、AED」というシールを開業医の診察室に貼ることにしている。河村氏は、「将来的にはコンビニなどにもこのシールを貼る時代が来ることを願っている」と普及への意欲を語っていた。(中沢真也)

Information PR

ログインしていません

Close UpコンテンツPR

ログインしていません

もっと見る

人気記事ランキング

  1. 画像診断報告書の確認漏れが起こる理由 リポート◎指摘の見落とし、連携不足、多忙など改善点は多く FBシェア数:144
  2. ヒドすぎる医療シーンに仰天「これが魔術か…」 薬師寺泰匡の「だから救急はおもしろいんよ」 FBシェア数:4
  3. 今年の大学医学部入試の問題から(その1) 松原好之の「子どもを医学部に入れよう!」 FBシェア数:1
  4. 梅毒かも、結果が出るまではエッチ厳禁で 井戸田一朗の「性的マイノリティの診療日誌」 FBシェア数:96
  5. 貯金?最悪!元本保証の呪縛から解き放たれよ Dr.Kの「医師のためのバリュー投資戦術」 FBシェア数:0
  6. 「落ちこぼれ研修医が後輩に対してメンツを保つには… 研修医のための人生ライフ向上塾! FBシェア数:4
  7. 新専門医制度、8月の専攻医募集開始に向け運用細則… 大都市の5都府県は定員に上限 FBシェア数:54
  8. 息子が中学受験、それでも地方に転職した医師の決断 医師ヘッドハンティングの舞台裏 FBシェア数:7
  9. 近所で有名な「怖い看護師さん」の処遇に悩む 榊原陽子のクリニック覆面調査ルポ FBシェア数:2
  10. 医師国試の合格率は88.7%、大学別合格率は? 8533人の新医師が誕生、合格率は90%を切る FBシェア数:1837