2003.11.26

東京都、SARS感染の恐れのある不法入国者などに対する行動制限、司法措置などを国に要求へ

 東京都は、繁華街などにおいて、不法入国者などから重症急性呼吸器症候群(SARS)の感染が広がる可能性があるとして、SARSに感染している恐れのある不法入国者に対する行動制限や司法措置がとれるよう、国に対して緊急提案要求を行う。11月26日から28日にかけて副知事が各省庁に出向き、直接提案するという。

 東京都は10月31日、約2カ月の準備期間を経て、不法入国者などからSARS感染が広がる事態を想定したシミュレーション(図上訓練)を実施した。その結果、SARSに感染している恐れのある不法入国者を発見しても、現状では司法措置を含む行動制限を行うことは困難なことが明らかになったという。このため、国の関係省庁に対して必要な施策を要求することにしたもの。具体的には、新たな法律の制定などを求めるのではなく、感染症法の条項や運用、解釈の変更・追加などによる対応を想定している。

 都が提案要求先としているのは、厚生労働省、法務省、警察庁、内閣官房の4省庁。厚生労働省に対しては、SARSに感染している恐れがあり、自由な行動を認めると所在が確認できなくなる者に対して、経過観察のための行動制限の措置がとれるようにすることと、各省庁に対するSARS感染の情報提供の徹底を求めている。法務省と警察庁に対しては、SARS感染の恐れがある不法入国者などに対して、厚生労働省と協議の上、感染防止と司法措置がとれる対処方針の確立を要求している。法務省にはこのほか、SARSに感染している恐れのある不法入国者などの収容施設の整備を求めている。内閣官房に対しては、危機管理の観点から省庁間の調整を求めるとしている。

 東京都の提案は、多数の繁華街と1200万人の人口を抱える自治体として、大規模なSARS流行という事態を未然に防ぐため、自治体では対処しきれない施策を国に要求するという点では合理性がある。半面、不法入国者などに対する行動制限や司法措置、施設入所などは、人権問題の調整や対象者のケア、医療サービス提供など、多くの調整を要する可能性がある。冬季のインフルエンザ流行期にはSARSとの鑑別で混乱が起きる可能性は、今年春のSARS流行時期から既に指摘されていたことであり、11月末という時期になってからの「緊急提案」が無用な混乱や調整不足を招かないかどうか、懸念される。

 ただし、仮に国との調整がつかない段階で想定したようなSARS感染が発生した場合には、「知事の権限で何らかの緊急避難的な対応を実施することもありえる」(都総務局総合防災部)として、強制的な行動制限や収容など、国の規定を超えた“超法規的”措置や収容施設の整備などの準備を進めていることを示唆した。

 本件に関する東京都のプレスリリースはこちらまで。(中沢真也)

■ 参考図書 ■

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