2003.11.25

【救急医学会速報】 汎用性のあるモバイル12誘導心電図伝送システム、吹田市で近く実証実験開始 

 第3世代携帯電話機と標準的なインターネット伝送技術を利用して、発症現場や搬送中の救急車から、12誘導心電図をリアルタイムで伝送するシステムの開発が進められている。近く、大阪府吹田市で実証実験を開始するという。11月19日の一般口演「救急医療体制1」で、国立循環器病センター心臓内科の角地祐幸氏が発表した。

 角地氏らの研究グループが開発を進めているのは、高価な専用機器や新たなネットワーク構築を必要とせず、既存のインターネット技術と現行の携帯電話を用いる心電図伝送である。地域の携帯電話サービスや今後の技術進歩に応じて拡張・更新が可能な汎用性の高い目指した。現在、試作機の開発を進めており、近く大阪府吹田市の協力を得て、フィールド実証実験を実施する予定という。

 医療面の利点として角地氏は、時間短縮効果を挙げる。急性心筋梗塞などのハイリスク患者を早期に診断することで、適切な病院への搬送を判断することが可能になる。1次的なトリアージが実現することで、搬送先の病院では適切な受け入れ準備ができ、この点でも時間短縮が実現する。また、医師による診断がつくことで、より適切な病院到着前処置が可能になる。救急救命士に対して詳細な指示を行い、いわば「バーチャルドクターカー」として機能させることができる。心電図や指示の記録も容易で、事後検証や再教育にも応用することも検討している。

 システム全体では「TCP/IP」と呼ばれるインターネットで標準的に用いられている伝送規格(プロトコル)を採用した。「これにより、既に認可を受けた多くの医療機器をそのまま接続でき、インターネット・ブラウザーで閲覧できる」(角地氏)という。伝送用の無線機器としては、今回、384kビット毎秒と高速な第3世代携帯電話機を用いたが、TCP/IPを採用したことで、今後普及が見込まれる広域ワイヤレスLANや第4世代携帯電話にも容易に対応できるという。心電計からの信号形式は、日本循環器病学会と心電図学会が国際標準化を目指している「MFER」という伝送方式を採用した。

 角地氏らが作成した試作機は文庫本ほどのサイズの超小型で、12誘導心電計の出力をMFERに変換して入力するほか、患者モニターやビデオカメラの情報を入力し、それをカード式の第3世代携帯電話機から無線伝送する。サンプリング周波数500Hzの12誘導心電図10秒間分を圧縮することで、現在の携帯電話でも20秒程度で伝送できる。搭載するインターネット対応カメラを搭載することで、受信側から方向やズームなどの操作が可能という。

 今後、セキュリティや伝送速度、標準化、拡張性を考慮した実証実験を行い、評価や最適化を進めていく予定だ。(中沢真也)

Information PR

ログインしていません

Close UpコンテンツPR

ログインしていません

もっと見る

人気記事ランキング

  1. JCHO東京高輪病院で感染症内科医7人一斉退職 2017年4月から、ほぼ全科で土曜休診に FBシェア数:651
  2. アルツハイマー治療薬開発が進まない理由 理化学研究所神経蛋白制御研究チームシニア・チームリーダーの西道隆臣氏に聞く FBシェア数:191
  3. 70歳代男性。便潜血反応陽性 日経メディクイズ●内視鏡 FBシェア数:1
  4. 「救急医にはアイデンティティーがない」の呪い 薬師寺泰匡の「だから救急はおもしろいんよ」 FBシェア数:175
  5. 75歳女性。構音障害、左共同偏視 日経メディクイズ●心電図 FBシェア数:0
  6. 57歳男性。両下腿から足背の浮腫と紫斑 日経メディクイズ●皮膚 FBシェア数:0
  7. 高齢糖尿病のコントロール指標はHbA1cだけでは… 学会トピック〇第59回日本老年医学会/第30回日本老年学会 FBシェア数:289
  8. 広がる中学生のピロリ検診・除菌 ニュース追跡◎エビデンス乏しく副作用の懸念も FBシェア数:549
  9. なんでこんな検査を定期健診に入れている? 記者の眼 FBシェア数:227
  10. 酸素療法で飛んで行ったメガネ 倉原優の「こちら呼吸器病棟」 FBシェア数:103