2003.11.25

【救急医学会速報】 全国68機の消防・防災ヘリによる救急搬送活用を急げ 

 千葉県では、119番通報から治療開始までの時間が29.1分と救急車のほぼ半分に短縮するなど、各地で救命に成果が上がっている。しかし、現在、ドクターヘリを運行しているのは全国7カ所だけ。全国的な普及は困難な情勢だ。そのため、現在68機配備され、ほぼ全国を網羅している消防・防災ヘリを救急用として活用する方策を検討するのが現実的だという。11月19日の一般口演11「航空医療」のセッションで、日本医科大学附属千葉北総合病院救命救急センターの益子邦洋部長が報告した。

 益子氏らの研究グループは、2001年10月から2003年3月の間に千葉県ドクターヘリで治療した584症例のうち、外傷の317例について、治療開始までの時間などを検討した。その結果、119番通報からドクターヘリ出勤要請までは平均16分、現場到着までは同27分、現場出発が同39分、病院到着は同47分だった。ドクターヘリ出勤中の処置では、静脈の確保(輸液)が279例で88%と最も多く、次いで酸素投与267例、薬剤投与24例の順で、輸液と酸素投与が最も多かったという。

 症例のうち、現場での収縮期血圧が90mmHg以下とショック症状を呈していた22症例について、119番通報から初期治療開始までの時間を比較すると、ドクターヘリによる実経過時間は平均29.1分だったのに対し、救急車搬送した場合の治療開始までの予測経過時間は平均56.8分で、ドクターヘリでは約28分間と有意に短かかった。これらの症例には全例搬送中に1000ml以上の輸液が行われており、現場での平均収縮期血圧が72mmHgだったのが、救命救急センター到着時には平均94mmHgまで上昇させることができたという。

 ドクターヘリが救命活動で成果を上げているにもかかわらず、配備されているのは7県に過ぎず、配備の拡大は困難な情勢にある。そこで益子氏は、全国を網羅した航空救急医療体制を構築するためには、全国に68機が配備されている消防・防災ヘリをはじめ、現存する各種のヘリを救急搬送用として活用すべきだと提案する。消防・防災ヘリは既に救急搬送にも用いられており、搬送件数は年々増加しているが、2002年の出勤件数は合計で2068件に過ぎないという。

 益子氏は、消防・防災ヘリを救急搬送に活用する場合、出勤時に病院へ立ち寄って医師をピックアップするなどの医師同乗方式が全国で検討されている。併せて、メディカルコントロール体制のもとで、救急救命士が医師の直接的指示によって心停止前に輸液を実施することも緊急の課題になると指摘した。

 ドクターヘリは膨大な運用コストがかかるため、配備が進まない。運行費用には医療保険が適用されない、高速道路の大規模事故に対応しようとしても道路管理者が頑なに着陸を拒否するケースがある、などの問題点が指摘されている。益子氏の報告は、こうした状況を改善する現実的な提案として検討するべき課題と言えるだろう。(中沢真也)

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