2003.11.25

IDSAが市中肺炎ガイドラインを改訂−−SARS対策に言及、次期GLはATSと合同策定

 米国感染症学会(IDSA)はこのほど、市中肺炎の診療ガイドラインを改訂、同学会の学術誌であるClinical Infectious Disease(CID)誌12月1日号に掲載した。1998年に発表、2000年に改訂したガイドラインの三訂版。所見や年齢、合併症などから患者の治療の場(外来か入院か)を決め、迅速に抗菌薬の経験的投与(エンピリック・セラピー)を開始するという流れは旧ガイドラインと同じだが、患者が「最近抗菌薬を使用したか否か」で推奨薬を変更。重症急性呼吸器症候群(SARS)など新しい疾患に対する対策も盛り込んだ。

 もう一つ目を引くのが、今回の三訂版に「次回の改訂ガイドラインは米国胸部学会(ATS)と共同で策定する」と明記されていること。市中肺炎診療に関しては、IDSAのほかATSも独自ガイドラインを策定しており(1993年発表、2001年改訂)、米国疾病対策センター(CDC)もガイドラインを発表するなど、いわばガイドラインの乱立状態にある。発表当初はATSが経験療法、IDSAが起炎微生物の同定にこだわる姿勢が明確に見えたが、改訂を重ねるに連れ、両者の姿勢は近接。今回のIDSA三訂ガイドラインにもATS改訂ガイドラインとの相違点は残っているものの、数年内に一本化されることが確実となった。

 三訂ガイドラインで提示された、治療の場所別の「細菌性肺炎が疑われる場合の初期治療」のうち主なものは次の通り。

外来治療
◎合併症(注1)なし
 ・抗菌薬治療歴なし:マクロライド系薬(注2)またはドキシサイクリン
 ・抗菌薬治療歴あり:レスピラトリー・フルオロキノロン(注3)または次世代マクロライド(注4)+高用量アモキシシリンまたは次世代マクロライド+アモキシシリン・クラブロン酸合剤
◎合併症あり
 ・抗菌薬治療歴なし:次世代マクロライドまたはレスピラトリー・フルオロキノロン
 ・抗菌薬治療歴あり:レスピラトリー・フルオロキノロンまたは次世代マクロライド+βラクタム系薬(注5)
入院治療
◎一般病棟
 ・抗菌薬治療歴なし:レスピラトリー・フルオロキノロンまたは次世代マクロライド+βラクタム系薬(注6)
 ・抗菌薬治療歴あり:次世代マクロライド+βラクタム系薬またはレスピラトリー・フルオロキノロン

 注1)合併症:慢性閉塞性肺疾患(COPD)、糖尿病、腎不全、うっ血性心不全、悪性疾患
 注2)マクロライド系薬:エリスロマイシン、アジスロマイシンまたはクラリスロマイシン
 注3)レスピラトリー・フルオロキノロン:肺炎球菌などグラム陽性菌への抗菌力を高めた、呼吸器疾患向けのフルオロキノロン(ニューキノロン)の総称。モキシフロキサシン、ガチフロキサシン、レボフロキサシンまたはゲミフロキサシン
 注4)次世代マクロライド:アジスロマイシンまたはクラリスロマイシン
 注5)外来治療で用いるβラクタム系薬:高用量アモキシシリン、高用量アモキシシリン・クラブロン酸合剤、セフポドキシム、セフプロジルまたはセフロキシム
 注6)入院治療で用いるβラクタム系薬:セフォタキシム、セフトリアキソン、アンピシリン・スルバクタム合剤またはエルタペネム


 ATSガイドラインや、日本呼吸器学会の市中肺炎診療ガイドライン(「成人市中肺炎診療の基本的考え方」)との大きな相違点は、IDSAでは旧ガイドラインから一環してフルオロキノロンを第一選択薬の一つとして挙げていること。三訂ガイドラインではこの点に関し、北米でもフルオロキノロン低感受性肺炎球菌が増えつつあるものの、頻度は2%未満と、マクロライド低感受性肺炎球菌(約25%)よりも低いと強調。ただし、安易な使用を慎まないと、今後5〜10年でフルオロキノロンの抗菌薬としての有用性が失われる恐れがあると警告している。

 このほか、SARSなど新しい疾患や、経鼻インフルエンザワクチン、抗インフルエンザウイルス薬、肺炎球菌の尿中抗原迅速診断キット(関連トピックス参照)などの新規治療薬・診断薬についてもガイドラインでは言及。SARSに関しては、可能性を常に念頭に置いて臨床診断を下し、検体を保存、感染拡大の防御策を取ると同時に酸素投与や輸液などの支持療法を行うよう推奨した。ただし、リバビリンなどを用いた治療には、まだ十分なエビデンスがないと注意を促している。

 IDSAの三訂版ガイドラインのタイトルは、「Update of Practice Guidelines for the Management of Community-Acquired Pneumonia in Immunocompetent Adults」。現在、全文をこちらで閲読できる。ATSの2001年版ガイドラインは、こちらで全文を閲読できる(リンク先の運営次第で変更になることがあります。ご了承下さい)。日本呼吸器学会のガイドラインは、同学会の会員に限り、こちらから全文をダウンロードできる。(内山郁子)

■ 関連トピックス ■
◆ 2002.4.15 日本感染症学会速報】肺炎の起炎菌が15分でわかる、夢の尿検査キットの実力

■ 参考トピックス ■
◆ 2003.3.17 日本呼吸器学会速報】ガイドライン「気道感染症診療の基本的考え方」、5月に発表へ

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