2003.11.24

AF対象の経口抗トロンビン薬臨床試験「SPORTIF 3」、待望の原著論文がLancet誌に掲載

 今年3月の米国心臓学会(ACC)で発表され、大きな注目を集めた「SPORTIF 3」(Stroke Prevention using an Oral direct Thrombin Inhibitor in atrial Fibrillation 3)試験の原著論文が、Lancet誌11月22日号に掲載された。非弁膜症性で脳梗塞発症リスクが高い心房細動(AF)患者を対象に、経口抗トロンビン薬のキシメラガトランと標準治療のワルファリンカリウム(商品名:ワーファリンなど)とを比較した無作為化オープン試験。11月の米国心臓協会(AHA)年次集会で報告された「SPORTIF 5」(関連トピックス参照)と対になる試験で、両試験ともキシメラガトランのワルファリンカリウム代替薬としての有用性を示唆しており、期待を高める結果となった。

 「SPORTIF 3」の試験対象は、欧州やアジアなど北米以外の地域に居住し、脳卒中の危険因子(75歳以上の高齢、脳卒中または血栓症の既往、心不全、高血圧、糖尿病など)を一つ以上持つ、非弁膜性のAF患者3410人。日本(コーディネーター:国立循環器病センター名誉総長・山口武典氏)を含むアジア5カ国・地域から、全体の12%を占める397人が登録されている点も特徴の一つだ。無作為に2群に分け、ワルファリンカリウムまたはキシメラガトラン(36mg1日2回)をオープン形式で投与、イベントは地域・中央の評価委員会が盲検形式で評価する、いわゆるPROBE法(Prospective Randomized Open Blinded-Endopoint)の試験を行った。

 対象患者の平均年齢は70歳、7割が男性で、人種は白人が88%、アジア人が12%。組み入れ時には4分の3がワルファリンカリウムなどのビタミンK拮抗薬を服用していた。全体の3割強は75歳以上で4分の1に脳卒中または一過性脳虚血発作(TIA)の既往があり、4分の3が高血圧、3割強が左室機能不全、2割弱が糖尿病を合併していた。こうした患者背景に群間の差はなかった。ワルファリンカリウム群のプロトロンビン時間の国際標準比(INR)は目標値が2.0〜3.0で、66%の患者はこの範囲内で管理された。なお、性別や人種など、患者背景による効果や安全性の違いについては、今回の原著論文では検討されていない。

 平均17.4カ月追跡したところ、一次評価項目の「脳卒中または全身性の血栓症」はキシメラガトラン群(1704人)のうち40人、ワルファリンカリウム群(1703人)のうち56人が発症。1年発症率は順に1.6%、2.3%となり、有意差はないもののキシメラガトラン群で低くなった(p=0.10)。1年間の死亡率(順に3.2%、3.2%)や致死的な脳卒中発症率(0.4%、0.4%)、大出血発生率(1.3%、1.8%)などに有意差はなかった。大出血と小出血を併せた出血発生率はキシメラガトラン群で有意に低かった(25.8%対29.8%、p=0.0065)。

 副作用はキシメラガトラン群の87%、ワルファリンカリウム群の85%で発生。呼吸器感染症や鼻出血、背部痛、めまいなどが中心で、発生率は両群でほぼ均等だった。ただし、肝酵素のアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT、旧名GPT)値が基準値上限の3倍以上にまで上昇した人の比率は、キシメラガトラン群(6%)でワルファリンカリウム群(1%)より有意に高かった(p<0.0001)。

 今回の結果と「SPORTIF 5」は、ワルファリンカリウムが適応になるような脳梗塞発症リスクが高いAF患者に対し、キシメラガトランが代替薬として有望であることを示すもの。食事や併用薬の影響を受けやすく、投与量の調節が難しいワルファリンカリウムと比べ、投与量調節が不要で経口投与できるキシメラガトランの有用性は、臨床現場でより一層高く評価されそうだ。

 ただし、特に投与開始早期に、肝機能異常に対する注意が必要な点は軽視すべきではない。本論文に対する論説では、スタチン系薬を例に引き、こうした肝機能異常がスタチン系薬と同様に「大した問題ではない(minor problem)」かどうかがわかるまでは注意深い検討を続けるべきと指摘している。

 また、AF患者の脳卒中予防に関しては、血小板の活性化を十分に抑えることで、トロンビンを阻害する抗凝固療法並みの効果を狙うとの戦略もある。論説では、AF患者6500人を対象に、抗血小板薬のアスピリンと硫酸クロピドグレル(海外での商品名:Pravix)との2剤併用療法と、ワルファリンカリウムとを比較する臨床試験「ACTIVE」(Atrial fibrillation Clopidogrel Trial with Irbesartan for the prevention of Vascular Events trial)が進行中であることを紹介、臨床現場でAF患者の脳卒中予防戦略が変わるのはこの試験の結果が出た後になると論じている。

 この論文のタイトルは、「Stroke prevention with the oral direct thrombin inhibitor ximelagatran compared with warfarin in patients with non-valvular atrial fibrillation (SPORTIF 3): randomised controlled trial」。アブストラクトは、こちらまで。「ACTIVE」試験に関しては、サノフィ・サンテラボのプレス・リリース(PDF形式)まで。(内山郁子)

■ 関連トピックス ■
◆ 2003.11.12 AF患者への抗トロンビン薬治療に新たなエビデンスが追加、“市民AED”の有用性も示唆−−11日のLBCTより

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