2003.11.19

一流スポーツ選手の「運動後の息切れ」、魚油サプリメントで改善−−米研究

 運動後には誰でも息が切れるものだが、なかには気道がぐっと狭くなり、まるで喘息のような症状を示す人がいる。この症状は「運動誘発性気管支収縮」(EIB)と呼ばれるもので、スポーツ選手、特に一流選手になるほど合併率が高いことが知られている。このEIBを、魚油サプリメントで予防できる可能性があることが、米国で行われたプラセボ対照試験から明らかになった。研究結果は、American Journal of Respiratory and Critical Care Medicine(AJRCCM)誌11月15日号に掲載された。

 この研究を行ったのは、米国Indiana大学運動学部門のTimothy D. Mickleborough氏ら。同氏らは、EIBにはロイコトリエンやプロスタグランジンなどの炎症性メディエーターが関与しているが、これらはn-6系(ω-6系)不飽和脂肪酸のアラキドン酸(エイコサテトラエン酸)が代謝されて発生することに着目。魚油などのn-3系(ω-3系)不飽和脂肪酸を摂取すれば、競合的にアラキドン酸代謝を抑制できる可能性があると考えた。

 そこでMickleborough氏らは、トライアスロンやクロスカントリーなどの分野で活躍している一流のスポーツ選手20人に協力してもらい、魚油サプリメントのEIB予防効果を、「プラセボ対照無作為化二重盲検試験」という方法で調べることにした。協力選手の半数にはEIBがあり、平均年齢は23歳で、男女比はEIBがある10人、EIBがない10人のどちらも半数ずつだった。

 試験ではまず、いつも通りの食事を続ける中で、運動前後の気道の収縮度を努力呼気1秒量(FEV1)で評価。次に、EIBがある10人、ない10人をそれぞれくじ引きで2グループに分け、一方はまず魚油サプリメントを3週間毎日飲んだ後で運動前後の気道収縮度を計測、次に外観がそっくりなプラセボ(オリーブオイル入りサプリメント)を3週間飲んで、やはり運動前後の気道収縮度を計測した。もう一方のグループは、先にプラセボ、後から魚油サプリメントを飲んで、同じように呼吸検査を受けた。

 つまり、飲んだ順番が違うだけで、全員が魚油サプリメントとプラセボを服用した。ただし、実薬と偽薬のどちらを飲んだかは、本人も、検査を行った医師にも伏せて、検査結果が心理的な影響を受けないようにした。魚油サプリメントには、1日分としてエイコサペンタエン酸(EPA)が3.2g、ドコサヘキサエン酸(DHA)が2.2g含まれている。

 その結果、EIBがある10人では、何も飲まない場合は運動15分後のFEV1が運動前より17%低下するのに、魚油サプリメントを3週間飲んだ後ではFEV1の低下がわずか3%と、何も飲まなかった場合より有意に少ないことが判明。プラセボを飲んだ場合は、運動15分後のFEV1は運動前より15%低下しており、何も飲まない場合と変わらなかった。対照的に、EIBがない10人では、何も飲まない場合も運動前後でFEV1は変わらず、魚油サプリメントやプラセボを飲んだ場合も、やはり全く変わらなかった。

 さらに、魚油サプリメントを飲んだ場合は運動後の血中ロイコトリエン濃度などが低くなっていることもわかり、研究グループは「EIBを起こしやすい一流スポーツ選手の場合、魚油サプリメントでEIBの発症を予防できる可能性がある」と結論付けている。この試験はあくまで一流のスポーツ選手を被験者としたものだが、運動後に息があまりに苦しくなる人は、魚油サプリメントを試す価値があるかもしれない。

 この論文のタイトルは、「Fish Oil Supplementation Reduces Severity of Exercise-induced Bronchoconstriction in Elite Athletes」。アブストラクトは、こちらまで。(内山郁子)

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