2003.11.18

「腰痛には硬いベッド」は迷信? くじ引き試験で柔らかいベッドに軍配

 慢性の腰痛があるスペイン人300人を対象に行われた試験で、今まで使っていたベッドを硬いベッドに取り替えた人よりも、中くらいの柔らかさのベッドに取り替えた人の方が、腰痛が軽くなったことがわかった。一般に腰痛がある人には硬いベッドの方が良いと言われているが、効果をきちんと比較した研究は初めて。研究結果は、Lancet誌11月15日号に掲載された。

 この研究を行ったのは、スペインKovacs財団のF. M. Kovacs氏ら。Kovacs氏らは、腰痛には一般に硬いベッドの方が良いと信じられているが、柔らかいベッドとの比較を、偏見が混じらない形で行った研究がないことに着目。腰痛患者313人をくじ引きで2グループに分け(無作為化)、医師にも患者にもどちらのベッドを使ったかがわからない形で(二重盲検)、ベッドを替えることが腰痛の症状にどう影響するかを調べた。

 患者には自宅で普段使っているベッドの大きさを測ってもらい、同じ大きさのマットレスを配布。試験前と試験3カ月後に、夜寝ている時、朝起きる時や日中の腰痛の痛みの強さを報告してもらった。欧州ではベッドマットの硬さに、非常に硬い〜非常に柔らかいの10段階の基準があるが、試験には硬い(硬さスケール:2〜3)マットレスと中程度(硬さスケール:5〜6)のマットレスの2種類を使った。患者が元々使っていたマットレスの硬さは「中程度」が4割強、「硬い」が3割強で、「柔らかい」が約1割。「非常に硬い」あるいは「非常に柔らかい」マットレスで寝ていた人はほとんどいなかった。

 その結果、どちらのグループの人でもマットレスの交換後は腰痛の症状が軽くなったが、中くらいの柔らかさのマットレスに取り替えた人では、硬いマットレスに取り替えた人より、睡眠中の腰痛が楽になった人の比率が2倍以上になることが判明。朝起きたときの痛みや、日中の腰痛も、中くらいの柔らかさのマットレスを使った人で改善度が大きい傾向があった。逆に、腰痛が悪化した人の比率は、硬いマットレスに取り替えた人で多い傾向がみられた。

 面白いのは、「自分は硬い方のマットレスに当たった」と思っていた人の比率に差があったこと(中程度マットレス群:43.5%、硬いマットレス群:77.2%)。一般に「硬いマットレスの方が腰痛に良い」と信じられていることを考えると、この“思い込み”は硬いマットレス群に対してプラスに働くはず。それにも関わらず、実際には中くらいの柔らかさのマットレスで症状の改善率が高かったことを考えると、巷に流布している「硬いベッド信奉」はどうやら迷信だったと言えそうだ。

 この論文のタイトルは、「Effect of firmness of mattress on chronic non-specific low-back pain: randomised, double-blind, controlled, multicentre trial」。アブストラクトは、こちらまで。(内山郁子)

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