2003.11.14

【AHA2003速報】 スタチンの術前服用者はCABG後の周術期死亡が少ない

 冠動脈バイパス(CABG)手術を受けた1700人を対象に行われた後ろ向き(レトロスペクティブ)な検討で、術前にスタチン系薬を服用していた人では、周術期(術後30日間)の死亡率が有意に低いことがわかった。意外なことに、スタチン非服用者の4割は高脂血症を合併していたこともわかり、研究グループは「少なくとも高脂血症の合併例に対し、術前にスタチンを用いた十分な脂質低下療法を行うことで、CABG後の周術期死亡率を低下できる可能性がある」と論じている。研究結果は、11月11日の一般口演「Clinical Outcomes for Surgical Myocardial Revascularization」で、米国Texas心臓研究所のWei Pan氏らが報告した。

 分析対象は、米国Texas心臓研究所で2000〜2001年の2年間に、人工心肺(CPB)を用いるCABGを初めて受けた1663人。対象からは、CABGと同時に弁置換術などほかの心臓手術を受けた患者は除いている。Pan氏らは、対象を術前からスタチン系薬を服用していた患者(943人)と服用していなかった患者(720人)に分けて、短期予後との関連を調べた。

 すると、CABG後の30日死亡率が、術前スタチン群では1.80%、術前無スタチン群では3.75%となり、術前からスタチン系薬を服用していた患者で有意に死亡率が低いことが判明(p=0.01)。一方、期間中の心筋梗塞、心房細動、脳卒中などの発症率は、服用者と非服用者で差が現れず、スタチン系薬の服用は死亡率にのみ影響していることがわかった。ただし、術前スタチン群は若年(62歳対64歳)で高血圧合併率が高く(83%対75%)、慢性心不全(15%対21%)や肺疾患(19%対24%)の合併率が低かった。服用薬にも違いがあり、スタチン系薬の服用者では有意にβ遮断薬やアスピリンの服用率が高かった(順に62%対38%、59%対41%)。

 そこでPan氏らは、多変量解析で「30日死亡」に関与する因子を洗い直した。その結果、「緊急手術」「腎機能低下」「慢性心不全」(すべて負の相関)と並び、「術前からのスタチン系薬服用」が、有意な正の予後因子として浮かび上がった(相対リスク:0.53、95%信頼区間:0.28〜0.99、p=0.05)。

 以上からPan氏らは「初めてCABGを受ける患者の場合、術前からスタチンを服用していると、30日死亡率を半減できる可能性がある」と結論付けたが、発表後の質疑応答では、「p値が0.05というのは有意差検定としてはぎりぎりの線(マージナル)であり、前向き介入試験を行って確認すべきだ」との意見が出された。また、多変量解析では有意な予後因子として浮上しなかったとはいえ、アスピリンやβ遮断薬の服用率に大きな差があった点にも注目が集まり、「これらの薬剤に対しても服用者と非服用者に分け、(総死亡だけでなく心筋梗塞や心房細動、脳卒中、腎不全なども含めた)幅広い予後に関する解析を行えば、示唆深い結果が得られる可能性がある」との指摘もなされた。(内山郁子)

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