2003.11.14

【AHA2003速報】 多枝病変CADへの血行再建術、肥満例ではCABGがPCIに勝る−−ARTS研究より

 高血圧や心不全などの心疾患患者では、肥満している人ほど予後が良い−−。これは「肥満パラドックス」と呼ばれる現象で、日本からも急性心筋梗塞(AMI)患者の院内死亡率にこの逆説的な現象が認められることが報告されている(関連トピックス参照)が、冠動脈バイパス(CABG)を受けた多枝病変患者の長期予後にも、肥満パラドックスが生じていることが明らかになった。一般に太っている人ほど開胸手術は難しいが、研究グループは「太っているということを、CABGを避け経皮的冠動脈インターベンション(PCI)を行う理由にしてはならない」と注意を促している。研究結果は、11月11日の一般口演「Clinical Outcomes for Surgical Myocardial Revascularization」で、イスラエルRambam医療センターのLuis Gruberg氏らが発表した。

 Gruberg氏らは、多枝病変を持つ手術可能な冠動脈疾患(CAD)患者1205人を対象に、CABGとステント留置PCIとを無作為化比較した臨床試験「ARTS」(the Arterial Revascularization Therapies Study)の3年成績を、対象患者の体格指数(BMI)を指標に検討し直した。患者の体格は、米国心肺血液研究所(NHLBI)−世界保健機関(WHO)の分類に従い、「正常」(BMIが18.5〜24.9)、「過体重」(25〜30)、「肥満」(30以上)の3段階で評価した。

 CABG群(605人)、PCI群(600人)のいずれも、「正常」「過体重」「肥満」がほぼ3割、5割、2割という比率で割り付けられており、BMIの増加に伴い、平均年齢が低下(62歳が59歳へ)、女性比率が増え(26%が30%へ)、高血圧合併率が高くなった(37%が54%へ)。不安定狭心症(3割強)、糖尿病(2割弱)や喫煙率(2割強)、2枝病変(約7割)などその他の患者背景に群間の差はなかった。

 3年後の複合イベント(MACE:総死亡+脳血管障害+心筋梗塞=MI+血行再建術の再施行)発生率を比較すると、CABG群では無MACE生存率が「正常」者で76%、「過体重」で84%、「肥満」で89%となり、太っている人ほど有意にMACE発症が少ないことが判明。一方のPCI群では、順に70%、63%、68%で、肥満か否かによるMACE発生率の差は表れなかった。CABG群とPCI群間の比較では、正常体重者の予後に差はなかったが、過体重や肥満の場合はCABG群の方が有意に予後が良かった。MACEの構成要素別では、「血行再建術の再施行」にのみ、CABG群で体格との有意な逆相関が現れた。

 Gruberg氏はこの結果を、「多枝病変があるCAD患者の場合、全体的にCABGの方が予後が良く、特に過体重や肥満だとCABGを受けた人の方が明らかに血行再建術の再施行率が低くなる」と総括。BMIはPCI施行患者の予後には影響を及ぼさないが、CABG施行患者ではBMIが大きいほど予後が良いことを考えると、肥満者を開胸手術することに消極的になってはいけないと訴えた。(内山郁子)

■ 関連トピックス ■
◆ 2003.13.13 AHA2003速報】急性心筋梗塞の入院時死亡リスクは太っているほど低い!? JACCS研究で逆説的結果が判明

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